おにぎり噺


生存確認用。おにぎりの噺はしません



おにぎり根多帳

2019/07/09 12:58

どくざた続編イメージ
春鬼=あなた=**
突然終わります。

「春鬼ー、明日一緒に飯いこーぜーってあれ、居ない」

大好きな春鬼に会えると浮かれたしぶ鬼がスキップしながらドクタケ城の会議室に入ってくる。それを見たいぶ鬼とふぶ鬼が口許に人差し指を立てた。

「しぶ鬼、しーっ」
「今仕事の打ち合わせ中だから、静かにしてよ」
「えー、私も春鬼くんとデートしたーい」

ドクタケ忍術教室を卒業した彼らはドクタケ城に就職していた。城の内部事情を熟知していた彼らはものの数年でめきめきと実力を上げ、彼らはそれぞれ役職を担う部隊の重役になっていた。魔界之小路に受けた教えを生かし彼らの戦略は無駄な争いをしない。その動きは力だけであったドクタケ軍に微かな変化を産み出し始めていた。

中でもしぶ鬼と春鬼は、互いがものを言わずとも通じ合うほど互いを知っており、その策略もドクタケ幹部が舌を巻くほどである。

しかし、肝心の彼らはどこかお気楽で気が抜けている。今も作戦会議と称してただのおやつパーティーをしていた。

「山ぶ鬼、お前が春鬼とデートって・・・あいつは女の子だぞ?」
「愛に性別は関係ないのよ!そーゆーしぶ鬼こそ、春鬼くんを女の子扱いできなくて悩んでたでしょ」
「ううっ!そ、それは・・・」

山ぶ鬼の指摘にしぶ鬼は図星で黙ってしまう。そんな様子に、いぶ鬼もふぶ鬼も顔をあげた。皆はしぶ鬼と春鬼がただの相棒でないことを知っている。

「そーなの?しぶ鬼、子供っぽいよな〜。春鬼もなんでしぶ鬼なんだろ」
「春鬼、こんな彼氏でかわいそー」

仕事をそっちのけで言いたい放題言う仲間をしぶ鬼が顔を真っ赤にしてサングラス越しに睨んだ。

「だって!ずっと男だと思ってたんだから、今さら女の子扱いするのも、なんか恥ずかしいだろ」
「そんなこと言って、女の子との接し方わかんないんでしょ」
「だから、別に春鬼を女の子扱いしなくっても─」

しぶ鬼がいいかけて、すっとしぶ鬼の後ろの障子が開く。その会話はやって来た春鬼に筒抜けだった。

「まったく、皆、プロの忍びなのに会話が丸聞こえだぞ」
「春鬼・・・!聞こえてたの?」

隠す様子もまったくない会話だったので、春鬼はしっかり会話を聞いてしまっていた。しかし春鬼は特に何か感じた様子もなくいつも通りだった。

「あぁ。聞こえてた」
「いや、その、別に春鬼が女の子らしくないとかそーゆー意味じゃなくて」
「しぶ鬼、墓穴掘ってる」

言えば言うほどフォローになってないしぶ鬼の言葉に皆は黙る。しかし、やはり春鬼は気にしてないみたいだった。

「変な気を使うんじゃない。私は元々こんな性格だから、無理もないよ。それより、今度の戦についてだが敵軍の目的がわかった。忍術学園に協力を得れば、無駄な争いはしなくてもいいかもしれない」
「へっ?あ、あぁ・・・うん」

来るやいなや、仕事の話になってしまいしぶ鬼は拍子抜けする。こうして出世して春鬼を迎えにいったまではよかったが、いざ隣に春鬼がいるとどうしていいかわからない。春鬼は昔と全く変わっておらず、しぶ鬼は恋人として彼女への接し方を変えねばと日頃から思案していた。

真夜中の作戦会議を終えて、各自会議室を出ていく彼ら。最後に春鬼が出てきて、待っていたしぶ鬼が首をかしげて聞く。

「今日はこれから仕事あるの?」
「いや。ない。作戦が動くのは多分明後日だ。それまでは非番だな」
「じゃあさ・・・明日一緒につきあってくれない?」

ぎこちなくしぶ鬼は春鬼を誘ってみる。彼女はしぶ鬼の誘いにキョトンとしていたが少し考えて頷いた。

「構わない。作戦の下見だな?」
「ちがうー!ほんっと仕事中毒だな春鬼は。飯でも一緒にいかないかってことだよ」
「あぁ、なんだ。そんなの改まって誘うことじゃないだろ?私がしぶ鬼の誘いを断るわけないじゃないか」

さらりと言った春鬼の言葉にしぶ鬼は照れてしまう。あー、うー、と歯切れの悪い相づちを打っていた。

「ま、まぁ、僕ら相棒だからね!」

しぶ鬼がなにかを取り繕うようにそういったが、春鬼はしぶ鬼が何に悩んでいるかはお見通しだった。

「・・・しぶ鬼、無理しなくていい。私はしぶ鬼が接しやすいようにしてくれても、なんの不満もない。あの会話のことは気にしないでいいから」
「僕のことならなんでもわかるんだな?」
「だって、私たち相棒だろ?」

しぶ鬼がいったことを春鬼も言い返す。しかしその時しぶ鬼は黙っていた。彼は自分でいった相棒という言葉に微かな違和感を感じていた。確かに春鬼と自分はもはやただの同僚ではない。お互い大事な存在だ。しかし、相棒という言葉には何かが足りなかった。

「これって本当に相棒なのかな」
「・・・なにをいってるんだ?」

うつむいたしぶ鬼はぽつりと呟き、春鬼がその顔を覗き込んだ。

「あのとき、僕の相棒になって欲しいって言ったけど・・・本当は」

あの時とは五年前に別れた日にしぶ鬼に言われたことだ。しぶ鬼はあの時男に恋してしまったと思い、どう伝えたらいいか分からず『相棒になってくれ』と言った。女性と知った後はこうして共に過ごして、やはり春鬼は春鬼のままで、昔と変わらない。勇気のない自分はそれに甘えているのだと思った。本当はもっと素直な気持ちで彼女のそばにいたいのだ。

「ほんとは〜?」

気持ちを言いかけて、しぶ鬼はいつの間にか隣の部屋で見ていた山ぶ鬼の言葉に我に返り周りを見る。春鬼に集中しすぎて辺りに人がいるのに気がつかなかった。辺りはすでに夜なのでよく見えないが明らかに三人が隣の部屋からこちらを見ていた。

「覗き見すんなよ!」

慌てていぶ鬼、ふぶ鬼、山ぶ鬼をにらむしぶ鬼。やれやれと言うようにいぶ鬼は肩をすくめた。

「だって、勝手に二人の世界に入ろうとするんだもんな」
「ここはドクタケ城なんだから、
あんまりイチャイチャしちゃダメだよ〜?」
「しないよ!もー、はやく行けって!」

しぶ鬼は手で三人を払うような仕草をする。いぶ鬼とふぶ鬼ははいはいと言いながらその場を離れていった。山ぶ鬼は立ち止まり、しぶ鬼を手招く。なにかあるのかとしぶ鬼が近づくと、山ぶ鬼はしぶ鬼に耳打ちした。

「ちゃんとデートに誘いなさいよ」
「!」

一言いってじゃ〜ね、と手を振って山ぶ鬼は去っていく。しぶ鬼は山ぶ鬼に言われたことに顔を火照らせた。今まで女性と逢い引きなどしたことのなかったしぶ鬼。隣にいる春鬼を見て、しぶ鬼は言った。 

「あの、さ・・・」
「なに?」
「明日のご飯、"僕と**"って関係で行こう?えーっと・・・つ、つまり、デートってことなんだけど」

春鬼はその言葉を聞いて反応に困ってしまった。もちろん大事なしぶ鬼と過ごすのが嫌というわけではない。ただしぶ鬼と同じく恋人らしく振る舞う方法がよくわからなかったのだ。

「あ、うん・・・」
「じゃ、明日は一緒に家を出ようぜ」

しぶ鬼と春鬼は同じ家にすんでいる。いつも一緒にいるというのに仕事以外で出掛けたことはなく、二人で男女という関係で、なんていうのはこれがはじめてだった。しぶ鬼はようやく男として彼女を誘ったことに内心ガッツポーズを決めていた。

「よし、じゃ、帰ろう」
「うん・・・」

一方春鬼は、「しぶ鬼と**」という言葉に微かに戸惑いを感じていた。そして、何故か妙な申し訳なさを感じたのだ。

(私はこんなかわいげのない性格だから、しぶ鬼は気を使っているのかな)

もっと女性らしく振る舞うことができれば、彼ももっと楽しいだろうに、と春鬼は密かに思っていたのだった。

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