山田利吉×土井半助 Unofficial Fan fiction


◯半助の初めて の段


「ただいま帰りました〜!」

「土井先生!」

「利吉くん!」

この日、利吉と半助は久しぶりの再会をした。利吉が長期間の修行に出ていたからだ。二人が出会ってから、こんなに長く会わないのは初めてで、お互いの顔を見るや否やどちらからともなく熱い抱擁を交わした。

「利吉くん、元服おめでとう!!」

「ありがとうございます!」

修行の間に元服を迎えた利吉は、半助が最後に会ったときとはまるで違う風貌で、背は高くなり、体付きもがっしりと筋肉がついて雄々しくなっていた。声も、舌足らず気味だった幼い声から一変し、張りがある男前な美声になり…

「かっこいいお兄さんになっちゃって…」

半助は涙した。それは嬉しさ半分、寂しさ半分。
利吉の成長はもちろん喜ばしいことだが…
もうあの頃の利吉には二度と会えない。

無論、半助の中では今でも可愛い"利吉くん"
なのだが…

「でも、まだまだ土井先生には遠く及びませんよ」

「ううん、利吉くんならきっと、あっと言う間に私を追い越して、きっと立派な忍びになるよ」

半助は、そう己で言っておきながら寂しさに押し潰されそうな心地がした。一人前のプロ忍びになるということは、この先様々な忍務をたった一人で熟すということ。苦難や困難は山程あり、命を賭けなければいけない場面だって到底山程あるだろう。

それは痛いほどよくわかっている。

だけど…

「利吉くん、これ」

「これは…」

半助が懐から取り出したのは新品の苦無。

「元服のお祝いに何か渡したくて、色々選んだんだけど…」

利吉はそれを、瞳を輝かせながら受け取った。

「何か利吉くんの助けになるようなものを渡したいなと思って、気が付いたら苦無を選んでいたんだ」

それは、半助が己の寂しさを埋めるためでもあった。
いつも利吉の側にいたいという己の願望を叶えるために…せめて、毎日使うものに己の想いが籠ったものを…

"私の想いがいつでも利吉くんを守るように"

「でも、良く手に馴染んだものの方が使い勝手が良いだろうから、これを無理に使わなくても良いからね。もし今使ってる苦無がどうしてもダメになってしまったときの代わりにでも使ってくれたら…」

「いえ、今日から大切に使わせていただきます」

利吉は半助の言葉を遮って返事をした。

「これを私のお守りにします」

見れば、利吉の目にもうすらと涙が滲んでいる。

「利吉くん…」

「いつも土井先生が一緒にいてくれる気がして、とても心強いです」

渡した苦無をぎゅっと胸に抱きしめる利吉を、半助はぎゅっと胸に抱きしめた。

「うん、いるよ。離れていても、私はいつでも利吉くんの味方だよ。そのことをどうか忘れないでいてね」

「はい」

「それから前にも教えたけど、忍者の本質は逃げて生き延び、やるべき忍務を全うすることだ。命が危うくなったら迷わずに引くこと。引くも勇気だよ。利吉くん」

「はい。どんな忍務のあとにも必ず、貴方の元へと帰ると約束します」

「うん。待っているからね。必ず私の元へ帰ってきなさい」

「はい。土井先生」

「…利吉くんそこはさ」

「はい?」

「土井先生じゃなくて…その、昔みたいにさ…」

「ふふっ、お兄ちゃん」

「うん!それそれ!利吉くんっ」

「ぐえっ、ちょっと苦しいです」

もう一度、仕切り直しの抱擁を交わしたところで、奥方の声が辺りに柔らかく響いた。

「お湯が沸きましたよ」

「「はーい」」

「お兄ちゃん!一緒に湯浴みしましょう!」

「うん!しよう!」

二人仲良く手を繋いで風呂場へ向かうと、さっさと服を脱ぎ捨てる。

「私も、実はお兄ちゃんに渡したいものがあるんです」

「え!私に?!」

「はい。先日師と一緒の忍務で、初めて私も給金を貰いまして。その給金でお兄ちゃんにと買ったんです」

ぐすっと隣から鼻をすする音がして、利吉がもしやと見れば半助は大粒の涙を流していた。

「もう!お兄ちゃんまた泣いてるんですか?!」

「だって、ぐすっ、私なんかに、そんな大事な、利吉くんの初めてのお給金をっ、ぐすっ」

「お兄ちゃんにはたくさんお世話になっているから、なにかお礼がしたいと思っていたので、是非私の初給金で何か差し上げたかったんです」

「そんな…私の方が利吉くんにたくさんお世話してもらってるのに」

半助の目は既に腫れぼったくなっている。涙が伝う頬に利吉がそっと触れれば、半助は全裸のままガバリと利吉に抱きついた。

「うわあ!」

「ぐすっ、ひくっ」

「もう泣かないで下さい!お兄ちゃん!」

「これが泣かずにいられるかぁ」

「もう…お兄ちゃんたらっ」

利吉もそっと半助の背中に手を回して、未だに己よりも大きなそこを撫ぜる。

「話しを続けても良いですか?」

「いいよ、ずびっ」

「それでね」

「うん、ぐすっ」

「私も何にしようかすごく迷ったんですけど、とある忍務でシャボンというものを使ったマッサージを経験しまして」

「シャボン?聞かない名前だね」

「はい。新しく南蛮から来たもので、米のとぎ汁やフノリのように髪や体を洗うためのものなのですが、すごく汚れが落ちて気持ち良かったので、お兄ちゃんにも是非使ってみてほしいなと思いまして」

「うう、その気持ちがとっても嬉しいよ。利吉くん」

「気持ちだけじゃなく、ものも受け取って下さい。これです」

利吉が差し出したものは石のような物体。現在進行形でグスグスと目を腫らし続ける半助も、未知なる珍しさにそそられて、それに手を伸ばした。

「触ってみてもいいかい?」

「もちろん!お兄ちゃんへと買ってきたんですから!」

持ってみるとズシリと重く本当に石のようだ。

「何で出来ているんだろう」

「植物の油と海藻灰を固めたものだそうです」

「ほぇ〜。南蛮のものは相変わらず面白いね。これでどうやって体を洗うんだい?」

「まあ見てて下さい!」

まずは湯船で体を温めましょうと促されて、いつも通りに体をさっと流して湯船の中へ入ると、半助は利吉へと手を差し伸べた。

「ほら、利吉くんもおいで」

「いや、私はまだ入りません」

その手を取りつつもきっぱり断ると、利吉は取った手をくるりと回して、半助の体を後ろ向きにした。半助はされるがままに後ろを向くと、今度は促されるままに肩までほかほかの湯に浸る。

「髪を流しますね」

痛くないようにと丁寧に髷を解かれて、熱くないようにと丁寧にお湯を流される。利吉の長くしなやかな指が、繊細な手付きで髪の間を通る心地よさに、半助は幾度となく頬を緩めた。

「ここからシャボンの出番です」

利吉がシャボンにお湯をかけて、手でゴシゴシ擦ると次第にブクブクと真っ白な泡が立っていく。

「うわあ!なんだか奇術みたいだね!」

半助も初めて見るその光景に、先ほどの利吉と同じに瞳をキラキラと輝かせた。

「あぶくに触ってみてもいいかい?」

「いいですよ」

はい、と今拵えた分の泡を全て半助にあげると、利吉は得意げにごしごしと次の泡を拵える。

「うわ〜!ふわふわだね!」

「見てて下さいね!」

拵えた泡に、ふっと利吉が息をかけると、ふわりふわりとシャボン玉が宙に浮かんだ。

「うわぁぁ〜!!すごい!!」

半助もすぐに真似をして、ふっと手に持つ泡に息を吹きかける。すると、利吉のシャボン玉を追うように、半助のシャボン玉もふわりふわりと宙を登っていく。

「綺麗だね〜!」

余程に気に入ったようで、半助は何度も何度もシャボン玉を宙に浮かべては、それを捕まえたり、突いたりして、すっかりシャボン玉遊びに夢中だ。

「おもしろいな〜!!」

まるで子どものような、愛らしい笑顔に利吉はほっこりと和んだ。人一倍勉強熱心で、探究心旺盛で、忍術は天下一品。強くてかっこいい利吉の自慢の"お兄ちゃん"。それでいて優しくて、可愛い。昔から己が何かをすれば、己以上に喜んだり、悲しんだり、心配したり、いつも全力で己のことを受け止めてくれる。

「見て見て!利吉くん!今度は大きなのができたよ!」

そんなお兄ちゃんの楽しげな様子に、利吉もまた幾度となく頬が緩んでしょうがない。

「本当だ!さすがお兄ちゃんですね!」

そんなお兄ちゃんが愛おしくて堪らない。

利吉はニコリと北叟笑むと、両手いっぱいに拵えた泡を半助の頭にのせた。

「それじゃあ髪を洗いますね」

人に髪を洗われるのはいつぶりだろうか
もう思い出せないなぁ…

利吉の髪はよく洗ってやっていたけど、利吉に洗ってもらうのは初めてだ。今度は寂しさよりも嬉しさが勝って、半助は幸せな心地に身を委ねた。

利吉の指が頭皮に触れる

「んっ」

半助は意図せず漏れでた声に、咄嗟に口を押さえた。

「痛かったですか?」

「いや、全然。普段人に触られないところだからちょっとびっくりして…」

「お嫌ですか?」

「大丈夫だよ。驚かせてごめんね」

「いえ、もし不快でしたら遠慮なく言って下さいね。すぐにやめますから」

「ありがとうね」

半助は驚いた。忍びになってこの方、房中術やその他色を使う術の度重ねた訓練の賜物か、快楽にとんと疎い体になってしまった。否、半助は、己の体が快楽に疎くなったのだと思い込んでいた。その証拠に、忍務で目合いをしても感じた試しは一度もない。時々せつりをすることはあるが、単なる排泄行為に過ぎずに、若かりしの己のように気持ち良く思うこともなくなった。

なのに…

「っ…」

指の腹でスリスリと頭皮を撫でるたびに、耐える間もなく声が漏れる。こんなことはそれこそ久しぶりで、己自身も驚きだ。だけど、なんとか我慢しなくては

利吉くんがびっくりしてしまう…

なんとか声を抑え込んでいると、いつしか体が慣れてきて、純粋な心地よさが戻ってきた。

シャコシャコと軽快な音を奏でながら、頭皮のあちらこちらを優しく刺激する。その刺激はまるで体の疲れを溶かしてくれるみたいで

「ああ〜気持ち良いなぁ〜」

シャボン玉のように、ふわりふわりと半助を夢の国へと誘う。

眠ってしまいそう…

利吉が与えてくれる安らぎに、うっとりと耽っていると

「それでは泡を流しますね」

極楽の終わりを告げる声と共に、ばしゃりとお湯が頭の泡をさっぱりと流してしまった。もっとずっと洗っていて欲しいが、そろそろ利吉も風呂に浸からせてあげなければ。体が冷えてしまっては可哀想だと、半助は重くなった瞼を押し上げた。

「ありがとう。とても気持ち良かったよ」

「良かったです。さて、次は体を洗いましょう」

「いや、体は自分でやるから。利吉くんもお風呂に入って。冷えちゃったでしょ?」

「いえ、私のことはお気になさらず。さあ、こちらへどうぞ」

いつになく利吉がるんるんと張り切っている。これは付き合ってあげた方が良いか。それならと、半助は再び大人しく利吉に従った。

湯船から上がり、用意された椅子に腰掛ける。

「お背中お流ししますね」

泡立てたシャボンをたっぷり纏わせた手拭いが背中を滑る。真ん中はゴシゴシと少し強めに、脇腹は優しく控えめに、緩急つけた手捌きが
なんとまあ

「はぁ〜気持ち良い〜」

大雑把な私とは違って、利吉くんは昔から几帳面だったもんなぁ…

何をするにも丁寧で、真面目で、器用に熟す。それに気遣い上手。そんなに気を張っていて疲れはしないかと心配することもあるけれど、利吉の実直さを半助はとても尊敬している。

利吉くんは本当に優秀な忍びになるだろうな…
私には手の届かないところまで行ってしまいそう…

利吉の手腕を堪能していると、三たび寂しさが押し寄せる。

「前も失礼しますね」

じわりと熱くなる目頭を拭っていると、ツツっと胸の飾りをザラザラとした手拭いが掠めた。

「ひぃ」

咄嗟に口を押さえたが、利吉は何事もなかったように黙々と半助の体を洗う。お腹、太腿、膝、脹脛、足の甲と順々に、ここそこに心地よい力加減で手拭いが滑る。それはまるで

全身を隈なく丁寧に愛撫するかの如く…

シャボンのぬるぬるした感触も相まって、一枚一枚花びらが捲れていくみたいに快楽の花が開かれていく

「あ、んっ」

足の指の股をカリカリと手拭い越しに掻かれれば

「んあ」

一際大きな声が飛び出した。

「っご、ごめんね、大きな声出して」

「ふふっ、くすぐったかったですか?」

…うん、そう言うことにしておこう。

「そう!すごくくすぐったくって」

「我慢せずに笑っても構いませんからね」

「あはは…ありがとう…」

「一回立っていただけますか?」

今度は何をされるんだ?!と警戒しつつ、恐る恐る言われた通りに立つと

「ひぇ」

お尻をもみもみと洗われた

「利吉くっ、そ、そこは汚いから…っ」

「昔、一緒に湯浴みをしたときに、お兄ちゃんも私のお尻を洗ってくれたじゃないですか」

「利吉くんのお尻は私と違って可愛いし」

「何を言ってるんです?意味がわかりません」

己でも、もう何を言っているのかわからない。少し落ち着こうと、息をふぅと吐き出して椅子に腰掛けると

「お兄ちゃんのお尻も愛らしいですよ」

左の耳に唐突に吐息混じりの言葉を吹き込まれた。

「ひゃ」

耳が熱い。きっと真っ赤になっていることだろう。耳どころか全身にドクドクと物凄い勢いで血が巡る。

「こっ、こら!大人を揶揄わない!」

「私だってもう大人です」

そうだった。利吉はもう元服したのだ。椅子に腰掛けているせいか、利吉の背が半助よりも高い。昔は椅子に腰掛けていても利吉の頭を撫でられたのに。

忍術学園の教師となって数年。半助は子どもの成長の早さをしかと実感する日々を送る。利吉もまた然り。きっとどこかで色の術を覚えたのだろう。いや、利吉に初めて"性"を教えたのは己か。色を教えたつもりはなかったが、左耳に囁くやり方をあの時利吉に施したのは確かに己だ。利吉の飲み込みは異様に早い。その事を半助は良く知っている。そしてその応用力の高さも。

「はぁ」

思わず溜息を零すと

「だから、ここもね」

と熱い吐息が脳を貫いて、半助はビクンと体を
のけぞらせた。

利吉の手が、半助の萌すものを握る。

「ああっ」

「貴方のここはいつも大きいですが、今日は一段と大きいですね。ふふっ、感じてくれていたんですか?嬉しいな」

思いもしなかった突然の出来事に、理解がなんも追いつかない。半助が目を白黒させているうちに、更なる快楽がじわじわと急激な勢いで半助の心ごと蝕んでいく。

「いやっ、ちょ、なにして…くぅ」

警告音が鳴る脳内とは裏腹に、幾つも筋が浮き出た固いそれは、あまりにもご無沙汰すぎる快楽を悦ぶ。利吉の指が擦れるだけで甘い刺激がビリビリと全身を痺れさせた。

「りきちくん、やめ、はなして…あんっ」

利吉の手を今すぐに掴んで止めたいのに、ちゅくちゅくと響く音が脳内に靄をかける。

なんで…

涙がぶわっと滲んで視界さえもを奪った。なんでこんなことになってしまったのかと考えるも、すでに短絡した思考ではままならない。そもそも己の体は快楽とは無縁だったはずなのに

どうして…

「ん、っや…だぁ…うぁ…」

抵抗を試みるが、もう息をするだけで精一杯だ。利吉のシャボンを絡めた手が、先端の丸みを押そうとしてはぬるぬると滑って上手く押せない。そんなまどろっこしさすらも堪らずに、割れ目からこぽこぽと熱いものが溢れる。

「…っくぅ、ん…っう」

果てが近い。ぞわぞわと肌が粟立つ感覚にぎゅっと目を瞑る。んっと腹に力を入れて、今まさに迫りくる絶頂に備えたとき、ぬるぬるした熱い何かがへのこを包み込んだ。

シャボン?

このぬるぬるした感触はシャボンとは違う。ハッと思い目を開ければ、利吉の頭が己の股間に埋まっていた。

「りきちくっ…なにしてっ…うあっ!」

先端の丸みをなめしゃぶり、まどろっこしい刺激しか与えられなかったそこを舌先で抉る。

「いや、でちゃっ、でちゃうからっ」

今すぐにやめさせないと

「きたないからっ…おねがいっ!!」

僅かに残る力で叫び、利吉の体を掴むも、半助はもう限界だった

「でちゃ、でる…うんぅっ!!」

もう我慢はできなかった。

「はぁ、はぁ、り、りきちくっ、はぁ」

息を整えるより先に利吉の無事を確認する。利吉はゴクリと嚥下して、ゲホゲホと咳き込みながらも半助のことを細めた瞳で見ていた。

「気持ち良かったですか?」
 
 パチン

風呂場に軽い音が響いた。

利吉は左頬を押さえて固まっている。

半助が利吉に手を上げたのは、これが初めてだった。固まる利吉の瞳に映るのは、目からひっきりなしに涙を零しながら震える半助の姿。怒りで震えているのか、悔しさで震えているのか、利吉にはわからなかった。だけど、心から愛する人を喜び以外の理由で泣かせてしまった。そのことだけは、利吉は明白にわかった。

「あの、ごめんなさい…」

小さく呟くように謝れば、半助は顔を隠したまま利吉を抱きしめた。

利吉に初めて"性"を教えたのは己だ。

あの時何か間違ったことを教えてしまっただろうか。否、そうではないだろう。プロになれば、こう言う忍務も当然ある。それは半助も通ってきた道だ。

半助は声も出せずに泣いた。泣いても泣いても枯れない涙が、顔を埋めた利吉の肩筋に落ちて、その乾いた肌に染みていく。

「ごめんなさい…」

利吉の声が、ぴたりと触れた体越しに響く。

「利吉くんのことが大切なんだ」

君は私の大切な大切な "宝物" なんだ。

だから…

何があっても守り抜きたい存在
何があってもずっと守っていたかった存在
そんなのは利己的な考えにすぎないだろう。

だけど…

大人になんてなってほしくなかった。どこにもいかないでほしい。ずっとこのまま、自分の手の届く範囲にいてほしい。危ないことも汚いこともしないで、利吉にはずっと綺麗なままでいてほしい。

でも、自然と利吉に侵されることが心地よく感じる己もいることを、半助は今日初めて知った。利吉が可愛い弟としてだけじゃなく

私、利吉くんのことが…

だけどこれ以上は言えない。
言ってはいけない。
利吉は恩人の息子であり、私の宝物"家族"だ。

だから知りたくなかった。自分の感情を知らないままでいたかった。知っても虚しいだけだ。悲しくなるだけなんだ。

だから知りたくなかった

ふと、半助は自分の腹に熱を感じた。己の腹にぺたんと張り付く熱く滾るそれが、何かは見なくてもわかった。利吉の熱い吐息が半助の首筋にかかる。半助はその事にまた、涙した。


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