:家庭教師ヒットマンREBORN!
:沢田綱吉(+10)
闇、路地裏、大量の血、倒れている男、煙を纏う銃……
それらの異質な光景に囲まれて佇む女は、笑っていた。
「さようなら、ボンゴレ10代目」
敵討ちは成功だった。私は遂に……ついにこの男を殺したんだ。半年前、私の両親を手にかけたファミリーのボス、沢田綱吉を――
「あははははっ」
闇に響くのは甲高い女の笑い声。その声は歓喜に満ち、次の言葉を発するまでに時間がかかる。
いちファミリーのボスともあろう者がこんな小娘に殺られるなんてね。抑えきれない笑いが漏れ出る。これでようやく解放される。大嫌いなこの闇の世界ともおさらば……
「…………っえ」
嬉しさでいっぱいだった。筈なのに、そんな私の頬には不意に温かいものが伝う。これは……そう、紛れもなく私の流した涙だ。嬉しさからのなんかじゃない。どうして?あんなに殺したいと、ずっと思っていた。だから私は罪を犯してまで敵討ちを実行したというのに……!
今、胸にあるのは空虚感だけ。
虚しい。
悲しい。
胸が痛い。
ズキズキなんて比じゃない……
「痛い、」
片手で胸を押さえ付けながら、もう一方の手では必死になって止まらない涙を拭う。誰も見てないのは分かり切っていたのだけど。
「沢田綱吉……っ皆こいつのせいだ!」
私は最低なマフィアなんかとは違う。普通だから。最後に言われた言葉のせいで、きっと情が移ってしまったんだ。
苦し紛れに吐き出した理由は案外、それらしいと思ってしまう。本当は違うって事くらい分かってはいたのに、声に出してそうでも言わないと本当の理由に負けそうで、怖くなった。だって、気付いてしまった。
「こいつは……仇なんだから」
そう。仇だ。直接手を下していなくとも、沢田綱吉の支配下に置かれているであろう人間が、私の幸せをぶち壊しにした。
でも……もしかしてこの人はそれを望んでいなかった?だってあんな事を言う意味が分からない。命乞い?同情?
「……関係ないわ」
どっちにしろ、言葉で何と言おうと両親が帰ってくることはもうないのだから!
“ごめんね。”
「……っ」
なくしてから気付いたって遅いのよ。後悔はもう手遅れ。私のまわりには今じゃ誰もいない。両親も……そして貴方も。
この空虚感を埋めるものはもう、なくしてしまった。そしてそれをしたのは紛れもなく……
「私……だ」
この気持ちはなんて名前だろう?
亡き彼への同情?
手を汚した事への恐怖?
人を殺めた事への後悔?
嗚呼……全部違うみたいだ。だって知っている。この気持ちは……
「Ti amo……綱吉」
その言葉と同時に、私は冷たくなった彼の頬へと唇を落としたのだ。真っ赤な血の海の中で。
復讐の後は目一杯の後悔を
同情なんて気持ちは微塵もなかった。これは“彼自身”を殺してしまった事への後悔。彼らがいない事への恐怖。
いつしか気付かぬ内に、こんなに彼を想っていたなんて。
end.
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*Ti amo…イタリア語で愛してる
執筆2007.10.28.sun
加筆2009.02.01.sun
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