:家庭教師ヒットマンREBORN!
:六道骸
窓の外は白く冷たい粉雪が音もなく降り続く。暗く狭い室内で冷たいコンクリートの壁に背中を預ける私の瞳には今、何が見えているだろうか。
物心着く前から私はエストラーネオファミリーの一員だった。幼い頃はそれに疑問も嫌悪も一欠片も感じた事はなかった。けれど月日が過ぎていく内に、廃れ退廃していったファミリーの大人は人里離れた場所の研究所に篭るようになり、狂ったように実験を続けた。私達子供をモルモットにしたファミリー復興の第一歩、最強の肉体を作る為の人体実験を毎晩のように繰り返していた。
絶えることのない小さな悲鳴。怯えながら見守るしかない子供達。
そんな中、遂にその日はきてしまった。実験の材料に、私が選ばれてしまった日。
結果から言うと、私の実験は失敗だった。いや、ある意味成功とも言える結果だけれど、大人達の求めた戦闘能力の倍加なんてものは微塵も授けられはしなかった。
視覚的に変わったもの。それが移植により手に入れた瞳の色だった。元は青だった片方は、私が実験台から降りた時には赤とのオッドアイに変わっていた。血のように赤いそれに、何者をも塗り潰さんとする黒で、そこには数字が印されている。同じ瞳を持つ彼のようにそれを変えたりはできない、私の目には「五」の字がはっきりと描かれていた。
強制された地獄の実験で授かった憎い色。けれど、私達の救世主である彼と同じ愛しい色。
そして私を、永遠の呪縛へ縛り付ける呪いの証。
そういう事だ。
私が実験により手に入れたのは、不老不死と云う生き物の限界を超えた力だったのだ。それを言い表す様に六道輪廻の五道、人間道にこの瞳は支配されている。
兵器開発の実験の最中、それは誰しも予想のし得ない結果。ある程度成長を終えた私の身体は止まり、それから二度と成長も老化も訪れはしなかった。何も変わらない。死ねない。
この美しく積もる雪の下、凍え死ぬ事などもう叶いはしない。
まるで昔の悪い魔女みたいだと、仲間だった筈の子供達からどれ程恐れられただろう。どれ程この身を嘆き、呪った事だろうか。
けれど、それは変わった。
「やはり取るに足りない世界だ」
あの日の出来事を切っ掛けに。
「全部壊してしまおう」
彼に…骸君に逢えたから。
「一緒に来ますか?」
私と同じ実験を成功させた彼は、無力な私達を救ってくれた。
エゴイストの大人達に制裁を下し、動ける数少ない子供を連れて研究所から飛び出した。そこでもまた煙たがられる私に唯一笑いかけてくれた骸君。こんな私を好きだと言ってくれた骸君。私達に希望と笑顔を取り戻す事のできた、唯一無二の人。
けれど人の道理は哀しく脆いもので、彼の命は数十年で絶えてしまった。死ねない私は泣き悲しむ事しか出来なかったけれど、決して彼は私を置いてはいかなかった。その魂は別の誰かへ生まれて変わり、私の元へきてくれる。
その人に骸君の影を重ね、私はいつかの日の様に恋に落ち、その死の瞬間まで共にいる。彼の為なら私はいつまでも待ち続けられる。理由ができる。
そうして永く永く形を変えて彼は私の元に蘇る。
私は彼に恋をして、彼は私に恋をする。
そうして何百何千と繰り返す。自らが選んだその輪廻。
彼の生と死。そして、私と彼の関係。
もう己が何年生きているかなんて事も思い出せなくなった頃、またこの世に産み落とされた彼に恋をする私は、ある時ふと思う。
これは本当に恋なのか?
私が愛しているのは、今此処にいる彼か?
それとも…
恋亡くし、愛求む。
そして何万年と経った今、ようやく私は気付くのだ。
私が愛したのは骸君ただ一人で、生涯愛して止まないのは、六道骸の魂であると。
旧題『LOVE LOVE LOVE,DEATH.』
執筆2008.02.08.fri
加筆2009.03.10.tue
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