:銀魂
:沖田総悟


そりゃあね、今までだって少しは気にかけていたんだよ。
でも人間というのは大変怠惰な生物であって……ほら、家電品なんかが次々出回って、いい例が食器洗い機とか。あれは人を怠けさせる為にあるんでしょう?

何が言いたいかって、私だって怠けたい時もあるって事よ。決心と面倒臭さのベクトルが人間の本来持つ欲に負けて傾く事だってある。その時間をもっと他の事に回した方が有意義な時間を過ごせるんじゃないか?なんて思うのは人の心理でしょ?でもさすがにもう見放せないような感じになっちゃった訳で。何がって?それは勿論、
わわわ私の体重が遂に××kgにィイ!



「冗談はよしなせェ」

桜の木が今か今かと芽吹く瞬間を見計らう。冬ももう終わりを告げ、万緑をそこかしこに見かける空気の温かさが心地好い。季節は春。そんな自然の風流をゆったり楽しんでいる余裕など、今の私にはないのだけど。

「依泉が怠けてんのはいつもの事でさァ」

幼馴染みの総悟が私を見て小馬鹿にしたように笑う。コノ野郎人の心読んどいてあまつさえケチつけやがった。

「こっ……これでも私なりに考えてるんですぅー!」

言い訳臭い私の言葉はもっぱら口喧嘩には向いていない。だってほら、食欲の春って……言わないな。あぁでもお正月とかもあったし、冬は一番太る時期なんだって…言ってて悲しい。とにかく後悔したって何も変わらない。ポジティブシンキングに行ってやろうじゃないかと決心を新たにしたのは実のところ3時間と前のこと。
何やかんやと思いつく限りの運動を実行していると、そこに通りかかったのがドS王子。総悟の言葉に天使を見たのはその一瞬で、直ぐに奴は悪魔だったと思い出す事となるのだけど。

「しゃーねーから俺がそれ、手伝ってやらァ」

ハイこの瞬間総悟君は陰の入った顔でそれはそれはキレイな(皮肉)笑顔を作り上げましたとさ。私は地獄の牢獄行き決定。

それから腹筋や背筋を始め長く長く沢山の運動をさせられた私の身体はとうとうガタを示し始めた。インドア派の私にはキツ過ぎるのだ。ああもうダメ、もうヤダと弱音や愚痴を吐いても総悟は全く心をこめていないガンバレの繰り返し。
ていうかなんでそう言った総悟が隣で横になってスナック菓子頬張ってんのかなぁあっ!

「俺はこの通りホラ、依泉と違って細いからねェ」

ニヤリ。完璧なる愚弄を意味するその顔が激しく腹立たしい。

「鬼畜!ドS!女顔!」
「へぇーほぉーそんな事言って良いんですかい?」

何よ、と少し身構えてしまうのは私が臆病なんじゃない、総悟が悪いのだ。長く付き合いを共にしたといっても、総悟の考えを読もうなんて無謀に等しい。つまり、どうでるかなんて私には皆目見当もつかない。しかしそういう時に限って私の警戒は空回りをする。
別に、とそっぽを向いた奴は何事もなかったかのように次はランニングに行けと促した。

「庭50週な」
「まだやるの!?無理!死ぬ!」
「勝手に死になせェ」
「ムキー!」

なんたるサディスティック!やっぱりこいつに手伝ってもらうなんてそれこそ無謀だったんだわ!3時間前の私馬鹿!
トシは例外だけど近藤さんを始めとする皆はどうしてこの光景を微笑ましく見ている事ができるんだか。

「良いから、ダイエット成功の暁には甘味処連れてってやらァ」
「っえ!?」

ホラ、最近有名なとこ。と身振り手振り説明をする総悟は熱でもあるんだろうか。奢らされた事は幾度もあるが、彼に奢ってもらった事などただの一度も覚えはないのに。

「そんなの……あの店高いんだよ?」

奢るなんてしたら総悟のお財布事情はどうなる事やら。……なんか自分が素直じゃないキャラになってきた気がして残念感が否めない。だって嬉しい事は嬉しいのだから。
ぱんっと空っぽになったお菓子の袋を適当に丸めた総悟は、心外だったのか馬鹿にすんなと眉を吊り上げた。

「金が無くてもなんとかなるっての。芋侍ナメんな」
「ほ、ほんと?」

「男に二言はありやせん」そう言って笑った総悟はやけに格好良くて、やっぱり熱でもありそうだ。そんな事を考える私も可笑しいのかもしれない。

「……やっぱり奢ってもらうのは、良い」
「あァ?」

まるで好意を踏みにじる嫌な奴を見るような目を向けられる。総悟の機嫌は誰が見ても明らかに下がっている。人が折角、と言いかけの言葉は私の台詞に遮られた。
だってさ、やっぱり悪いでしょ。お金なら私だって一応あるんだ、だから代わりと言っちゃなんだけど。

「恋人限定パフェ食べるのに協力して!」
「……は、」

ぴたり、総悟の動きが固まる。何度か声をかけるとハッとしたように動きを取り戻した総悟は…何故か笑っていた。

「良いのかィ?恋人役を俺にやらせちまって」

つってももう約束受け入れちまいましたがね。と笑う総悟の言ってる意味が今一分からない。矛盾してる気がするのは、多分気のせいじゃないと思う。けどまぁ、良いか。約束は約束だ。

「早く行ってきなせぇ」
「うん。約束だからね!」

自己完結で納得した私は総悟に一言残し猛スピードで部屋を出ていった。
ゆっくりと扉が閉まっていくのを見つめながら総悟が微かな笑みを浮かべていたなど気付く筈もなく、私の頭の中はカップル限定パフェを食べに行く妄想が膨らんでいくのだった。


ていたらく

というかそもそも、あの細っこい身体でどこの肉を落とそうと言うのか。
口に出さずとも疑問に思っていた事は、その本人沖田総悟と今現在この活字を目で追う貴方様のみぞ知る事である。


end.
‐‐‐‐‐‐
相手自由夢を修正したら沖田夢になった不思議。
イメージとしては上京(?)する前の時代の話。

執筆2008.03.06.thu
加筆2009.05.27.wed

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