6月14日
暫く野球はできないから、色々考えた。
暫くはあいつにお疲れ様と言われてタオルを渡される事もないと考えたら、無性に気分が悪くなった。
6月17日
席が近いおかげであいつとは話せるけど、俺から野球がなくなったら何が残るんだろう。
6月20日
野球がしたい。あいつと一緒にいたい。
もういやだ。腕一本折れただけで俺には何も無くなる。情けない。こんな俺に存在価値なんてあるのか?
6月23日
登校してあいつにだけ言って自殺しようと思ったのに、屋上から落ちて血塗れになったのはあいつだった。俺は庇われたらしい。
6月24日
意識不明だったあいつが、夜中に息を引き取った。俺のせいだ。涙が止まらない。謝っても謝っても償いきれない。
なのにお前の親には咎められるどころか、野球を続けるよう頼まれた。なぁ、俺はどうすれば良いんだ?
6月25日
今日でこの日記を書くのは最後にする。
あいつに惚れて書き始めたこれを、あいつのいなくなったあと続ける自信がない。意味だってない。
だから、今日のお前の葬式で渡す事にするな。
届くかどうか分かんねぇけどこれは精一杯の俺の気持ちだ。
字も下手で文章もめちゃくちゃだけどさ、少しでも伝わるように。
彼はそこまで書いてから不器用に字を綴っていた左手を止めた。緩い動作で机上のノートから白い天井へ視線を移す。
「持ってって、天国で暇にでもなったら読んでくれよ」
静かに呟いた言葉は誰の耳に届く事もなく、無音の室内に溶けて消える。
もう一度机に目を向けた彼はノートの一番最後を開き、何も書かれてないそこにシャープペンの芯を付けた。
『こんな俺でごめん。3ヵ月間、あんたはずっと俺の支えだったんだぜ?ありがとうな。それから』
じぃんと瞼の奥に感じた熱に、再び彼の手は止まった。言葉の続きを中々書けず最後の言葉を音にして何度も繰り返していると、遂に涙が零れ出す。
滅多な事で泣いたりしない俺がこの2日間散々泣いていたと言うのに、涙はまだ枯れていないのか。
無理矢理にそれを拭き取った彼は、続きの言葉を声に出しながら書き上げた。
『お前の事、大好きだったぜ』
過ちを犯した彼も、彼を助け短い人生を終えた彼女も、3ヵ月前は皆いました。
皆幸せでした。皆笑ってました。彼らも笑ってました。彼は彼女を見ていました。最高の出会いでした。
彼は今後の人生を良い仲間達と慌ただしく過ごす事となります。死の恐怖にだって何度も巡り合います。
それでも彼女と過ごしたこの3ヵ月間も、彼女自身の事も、決して忘れる事はありません。一生背負ってゆくのです。
けれど重荷にはならない事を、彼自身気付いていました。
「俺、さ……やっぱり野球続ける事にするよ」
今となっては彼女の気持ちを知る術はありませんが、それでも彼女は幸せだったのでしょう。それでも彼は救われたのでしょう。
「お前の分までこの命、大切にするから」
何故なら彼女の死に顔はとても穏やかなものだったのです。
彼女はとても、素敵な人でした。
拝啓、愛しき君へ
沢山の花と沢山の思い出に囲まれた君に、この安物のノートに籠めた想いを渡します。
end.
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暗いです。死ネタです。なのに、山本がストーカーチックな謎。日記って……!←書いた張本人
元題名は「Dear...」でした。どっちにしろありがち?
ちなみに日付は2008年を参考に曜日間隔等決めてみました。要らんとこ無駄に細かいとか言わないで。
入学式は私の高校の入学式(去年)を参考に、最後の方は原作の山本自殺事件の日数に近付けようとしたんですが……び、微妙orz
話の大筋や山本の心理がかなり前に考えた、プチ連載的なネタとちょい被るな……とか思ってみたり。
執筆2008.04.01.tue
加筆2009.03.26.thu
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