:家庭教師ヒットマンREBORN!
:夢主→沢田綱吉→京子


「ツーくーん。そろそろ離してくんないかなぁ」
「……」


(……無視か)

只今私は何故か綱吉にぎゅーっと、それはもう身動きが取れない位に抱きしめられている。
時を遡る事5分前、突然ばたんと大きな音と共に扉が開き、綱吉が家に来た時から続いている。それからというもの一言も話しちゃくれない。なんなんだいったい。

「ねぇ?」

本当離してほしいんだけどな。
誤解がないように言っておくと、私と綱吉はただの幼馴染みであってそれ以上の関係はない。だから理由も分からずこんな事されちゃ溜まらない。馬鹿だから、期待しちゃうでしょ。いやいや決して美味しいシチュエーションだなんて思ってないよ!
平静を装う声と真逆に心臓の音が有り得ないくらい早まってて、綱吉に聞こえてたらどうしよう。

「……依泉」
「!……綱吉?」
「…………」

やっと言葉を発したと思えばまた黙り込む。
ねぇちょっと、綱吉。本当どうしたって言うの?あんたが抱きしめるべきは私じゃないでしょ。京子ちゃんが好きなんじゃないの?

「……何で、」

私の質問に驚いたように綱吉の温もりが離れる。ねぇ、それは何への反応?
じっと見つめる瞳には私が映っていて、落ち着きを取り戻しかけていた私の心臓は再びゆっくりとその速度を上げていく。握られた手のひらがやけに生温い。

「違う……違うよ。オレはずっと、依泉の事が好きだったのに!」
「……え?」

今なんて。綱吉が私を好き?京子ちゃんじゃなくて?ずっと私の勘違い?

「本当に……?」
「うん」

ああ、幼馴染みの勘は恐ろしいもんだ。分かってしまった、綱吉が嘘を言ってる事を。何がどうなって今の状況に辿り着いたかは知らないけど、綱吉は私の事を恋愛対象になんて見ていない。
大体ヘタレな綱吉がそんな簡単に告白なんてできる訳ないんだ。好きな女の子を抱き締めるなんて、そんな勇気ないクセに。今日はエイプリルフールでもなんでもないよ?

「うん。私も好きだよ」
「依泉、」
「……って言えば、綱吉は満足なの?」

じっと見据える綱吉はそれこそ驚いたように瞳を揺らがせた。嘘、下手だなぁ。

「ねぇ、私ずっと応援するからさ。諦めないで頑張りなよ」
「……うん」

ありがとう、依泉。呟いて少しだけ決心を固めたらしい綱吉を部屋の外まで見送る。
とうの昔に分かってた。片思いって事くらいは。立派に傷口を開いてくれちゃって、次逢えばどうしてくれようか。笑った筈なのに私の目元には涙が今にも溢れそうで、あぁやっぱり私も強がるのが下手くそだなんて今更ながら思う。まだ、もうちょっとだけ泣くのは待って……、

「ごめん」

俯き加減で必死に堪えていた涙腺はものの見事に決壊してしまった。
ありがとうとごめんの順序が逆でしょ?綱吉。ぽん、ぽん、と割れ物を扱うように優しく頭を撫でる手は私の気持ちに気付いてるのかな。


必要可欠のエピローグ

執筆2008.08.23.sat
加筆2009.06.15.mon

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