:家庭教師ヒットマンREBORN!
:獄寺隼人(+10)
「わたしね、おおきくなったらおてんきおねえさんになるの!」
「がんばってね、ぼくおうえんしてるから」
「ありがとう!はやと」
それはこどもの頃にしては随分と現実的で、理由なんてもう覚えてないけれどこの時からの夢と幼馴染みの応援のおかげで、今の私はあるんだと思ってる。
そう、私は夢を叶えたのだ。
念願叶って天気予報士になる事ができ、現在では最も当たる天気予報士として世間から一目置かれていたりする。未だ実感は沸かないが、その過大評価は誇らしい事この上ない。
けれど残念ながら応援してくれた幼馴染みはまだその事を知らないだろう。何故なら彼は小さい頃に家出をして、それからもたまに連絡を取り合ったり、噂を耳にしていたけれど、学生の頃遂に遠い島国へと旅立ってしまったからだ。
もし彼がその事を忘れているとしても、できる事なら報告したい。だって君のおかげで現在の私はあるんだから。
そんな私の考えは近く叶う事となる。
「あ、嵐の予感」
昼休み。食堂では注文や談笑、上司への愚痴が飛び交っていて、そんな中いつもの通りゆったりと昼食をとっていた私はふ、と頭に過った一つの予感を口にする。すると隣にいた一際仲の良い同僚から少し驚いた風に聞き返された。
「えー?今日はこんな天気良いのに?」
「いや、天気の事じゃなくて……」
首を傾げた彼女に、逆にこっちが困ってしまった。
なんていうか、うまく言えないけど……嵐、がくるような気がしてならない。けど天気じゃない……じゃあ何?
ドカァアアンッ!
「きゃあ!」
「な、何!?」
突然響いた爆音に反射的に思考を中断し窓の方を見やる。勿論窓なんてものは音からしても木端微塵に吹き飛んでしまっていたのだが、そこからはもくもくと黒い煙が巻き上がって……
「か、火事ぃ!?」
「果てろ!」
社内が混乱状態で皆が逃げ惑う中、もう一度した爆音と共に派手な音が聞こえ、食堂の大きな窓は殆んどその姿をなくしていた。ひとり呆然と立ち尽くした私はどうする事もできず、突然風通しの物凄く良くなった食堂で窓をじっと見つめていた。するとそこから入ってきたのは黒ずくめの体格の良い男で、けれど私の危険信号はとっくに麻痺していて……
えぇえ!?此処7Fなんだけど!
そんな風に考えている馬鹿は私だけで、いつの間にか周りはとっくに人の気配が消えてしまっていた。ひとり呆然と立ち尽くす私に気付いたようで、男はこちらに刺すような睨みを向けた。
ようやく逃げるという考えに私の頭が至った時にはもう手遅れ。男に臆した私は完全に固まりついてしまい、その隙にと言わんばかりに瞬間移動を活用した男は私の背後にいて、首筋に銃を突き付けていた。何これ。まるで人質にでもされるような……
「待ちやがれ!」
既に色々驚きの連続で、けれどそれでもさすがに目を疑った。窓から現れた2人目の訪問者は……
「は、やと?」
「……依泉!?」
あぁ、私は夢でも見ているのか。夢を語り合い支えになってくれて、今でもその思い出が励みになっている彼が……どうやら今、目の前にいるらしい。
小さい頃から連絡は取り合ってたけれど、顔なんて見る機会はなかった。彼がジャッポーネに旅立ってからは、その連絡すら途絶えたけれど。雰囲気も眉間の皺も、少し別人とも思えたけれど昔から変わらない、エメラルドの瞳と銀髪。すぐに分かった。目の前のその青年が幼馴染みの獄寺隼人だという事を。
「え……な……隼、人?」
なんでここに隼人がいるの?能天気に混乱する私と私に銃を突き付けたままの男を交互に見て、分の悪さからか彼は小さく舌打ちを漏らし、眉間の皺を深くした。
「その女を放しやがれ」
男をギンと睨み付け隼人が言った。けれど私の背後からは不気味に笑い声が響く。この状況で不利なのはお前だ、と。
「……っ」
ゾクリと背筋を寒気が伝わる。再会に驚いてる場合じゃない。私が邪魔なんだ。私のせいで…そうしてどんどん顔を青くさせていったところで、「ニャー!」と突然猫の荒々しい鳴き声が耳に届いた。それと同時に男は悲鳴をあげ、一瞬私を押さえ付ける腕の力を弱めた。
「逃げんぞ!」
「っわ!」
いつの間にかすぐ近くにきていた隼人は私の腕を強く引いて走り出した。ふと視界の端に見たのは毛の逆立った猫が男に威嚇している姿。チーターみたいな模様の、子猫。
隼人と、男から離れた子猫と一緒に食堂を出て階段を駆け降り、玄関ホールを抜けてそのビルから全速力で脱出した。振り返ればついさっきまでいた私の仕事場は、主に食堂付近からもくもくと黒い煙が未だ立ち込めている。
流石にその頃には息も絶え絶えだったけれど、手を引かれ走っているので止まるなんてできないし、して良い状況じゃない。
正直一般人の私にはキツいのだけど、そんな事も気にせず隼人の手を少しだけ握りかえし、私は遅れかけていた脚にもう一度力を込めたのだった。
よくあるベタな映画のような
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彼女はイタリアに住むごく普通の一般人です。
ただご近所さんだとか、家が少し裕福で獄寺邸と接点があり、獄寺と幼馴染みなんだと。
執筆2008.09.18.thu
加筆2009.05.17.sun
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