:家庭教師ヒットマンREBORN!
:沢田綱吉


ちょっ……ちょっとちょっとちょっとぉお!?どうして綱吉の部屋に女の子がいるのっ!


私の住む家から隣に2軒挟んだ先。3軒目の家に昔馴染みの男の子が住んでいる。
名前を沢田綱吉と云って温厚な性格の持ち主であり、似ている訳ではないが私とは何かと気が合う。

そんな幼馴染みとは小学校高学年頃から、つるむ口実が遊びからお茶会へと変わる。実際はお茶会とは名ばかり。クラスメイトの誰がうるさいとか、あの先生は嫌いだとか、もっぱら愚痴の言い合いだったりする。中学に上がってからはクラスが離れてしまいお互い忙しさに集まる回数は減ったものの、それでも月に一度はそのお茶会を開いていた。
そして本日も例に習って綱吉の家へと向かう。いつものようにラ・ナミモリーヌというお気に入りの店のケーキを手土産にして。ちなみに綱吉が私の家を訪れる場合はスナック菓子を持参してくる事が多い。
近頃は家に安息の場所がないと言って綱吉が私の家に来るので、今日は久々の訪問だったりする。

綱吉驚くかなあなんて考えながら、青空の下短い道程でふふっと笑う様は不審者のそれだったかもしれない。

「お邪魔しまーす!」

いつ見ても若々しいおばさんに歓迎され、少し前から増えてきた沢田家居候のちびっこ達とも挨拶を交わす。彼らが綱吉自宅嫌いの原因を作った主犯(一部)だと言うが、その真相は明かされてはいない。
綱吉は2階の自室にいるらしく、おばさんに了承を得て階段を上がっていく。上機嫌な私の足取りは、この時一番軽かったのではないか。

「やっほう綱吉ーっ」

図に乗ったような挨拶をしながら部屋の戸を開ける。ノックがないとかはいつもの事なので気にしない。が、

「依泉!?」
「……は?」

思わず肩にかけていた鞄がずり落ちてしまった。かろうじてケーキを落とさなかったのは不幸中の幸いと言ったところか。
その部屋には綱吉と、可愛らしい黒髪ポニーテールの女の子がいた。2人ともが私を驚きの目で見つめて…え、何この状況。

「か……っカノジョ……?」
「はっ?」

思った事をそのまま口に出してしまった。女の勘……いや、どう見たってこの子綱吉にべったりじゃない!
不良やスポーツ少年やと何やら噂の絶えないクラスメイトとつるんでいるらしいとは聞いたが、まさか私の知らない間に彼女までできていたなんて。お茶会だって今まで通り普通に続けていたから、そんな兆しなんか微塵もなかったのに。片想いの身としてはかなりの打撃だったりする。そんなのってない…!

「はひ!彼女だなんて……照れちゃいますぅ」
「何言ってんだよ。誤解招くような事言うなよ!」

がーん、がーんとひとりショックを受けていると、ひっつく素振りをしたその女の子を綱吉はささっと静止した。

「違うって依泉、ハルが勝手に……」



「なんだ……違ったんだ」

微妙に噛み合わない二人の説明を聞いてみると、とりあえず彼女ではなかったらしい。

「だから家に依泉を呼びたくなかったんだ……皆騒がしいから……!」

はぁ、と一息吐いた綱吉を見て女の子……ハルちゃんはくすんと泣き真似をして、綱吉が連れないのだと主張した。

「ハルはブロークンハートです!」
「あーもううるさいよ!」

ハルちゃん相手だとどこかキツめに聞こえる物言いが少しだけ気にかかるが、どうやら綱吉には本当にその気がないらしい。良かった……とこっそり安堵の息を漏らしているとハルちゃんの視線がある方向に向いている事に気がついた。声をかければ彼女は私の持ってきた白い箱を見つめながら質問をする。

「それラ・ナミモリーヌのケーキですか?」
「ハルちゃん知ってるの?」
「ハルのお気に入りなんです!」

どうやら余程甘味が好きらしく、ラ・ナミモリーヌのケーキについて熱く語り始めたハルちゃんの目はキラキラと輝いていた。話に出された商品名を全て把握していた私も余程のマニアかもしれない。

「ところで依泉ちゃんはどうしてツナさん家に?」
「んー……、内緒」

可愛らしく首を傾げるハルちゃんの素朴な質問に、少し考えて意地悪な返事を返した。するとシークレットですか!?と英語を交えたハルちゃんは少しだけ身を乗り出した。

「気になります!」
「へへ、秘密だよ。ねっ綱吉?」
「え……うん?」

ハルちゃん……ついでに戸惑う綱吉も巻き込んじゃって悪いけど、私と綱吉のお茶会はまだ、ふたりの内緒という事で!幼馴染みの特権……なんてね。

「それよりハルちゃん!」

仲良くついでに良ければとケーキを振る舞うと、ハルちゃんは再び瞳を輝かせてチョコレートケーキを頬張り始める。それはそれは美味しそうに。しかしそれを良しとしなかったのが部屋の主である綱吉だった。

「ていうかさ、チョコケーキってオレに買ってきてくれたんじゃなかったの?」
「「あ」」

そういえば、と二人で間抜けな反応がハモってしまう。眉を潜めムッとする綱吉が少しだけ子供っぽく思えて、次集まる機会にはどちらの家と関係無くケーキを用意しておこう。と私は心に決めたのだった。


1・2・3ステップ!

‐‐‐‐‐
題名“ワン・ツー・スリー〜”と読んで下されば幸い。3軒隣の、的な意味合いで。

2009.04.29.wed

1 / 39 | |

|


OOPARTS