:D,Gray-man
:ラビ


ジョン、ディーラ、フィン、ノック、ユニー、マーク、ラッシュ、ロー、リスト、ジェット、ケンイチ、エル。


「今言ったの、全部俺の今までのナマエさ」

ラビもその中の一つで、“黒の教団でのブックマンJr.”の偽名に過ぎないんだと、冷めた瞳を向けられたのは終戦の翌日の事だった。




「……あー」

その夕方から早3日。私が寝込んでからも早3日。
つまり私はもう丸2日以上をベッドの上で過ごしているという事になる。

考え過ぎると熱が出てしまうこの体質はとても不便だ。もう多少身体が鈍ってしまっても問題ないとは言え、そう易々と長い習慣は抜けてくれない。身体をこんなにも動かさないのは久々な気がする。
そろそろ流石に熱も下がったろうし、身体だって動かしたい。
いつまでもリナリーのお世話になってる訳にもいかない。それに皆にも逢いたいし、何より知恵熱の原因のラビにも一言言ってやらないとどうにも気が収まらない。

ノロリと身体を起こしてカーディガンを羽織る。同時に何気なく窓の外に目を移す。

「……っラビ!」

静かに歩いて教団の建物からちょうど出てきた2人の影は、ブックマンとラビのものだった。今動かなくては、あれはお別れなのだと第六感的な何かが働きかける。
ねぇ、黙って行くなんて酷いじゃん。


相当声を出してしまっていたのか玄関口にブックマンの姿は無く、ラビが一人だけぽつんと佇んでいた。

「もう熱下がったんさ?」
「そんな事より、」
「てか顔赤いさ……熱あるし」

ピタリとラビの冷たい手が額に当たる。お見舞いに来るどころかさっさといなくなろうとしてたとは思えない口振りだ。
良いから、聞いてよ。決めたから。

「私さ、考えたんだよ。ラビがラビじゃなくなってもブックマンになっても、私はラビって呼び続ける事にする」
「だからラビは俺の偽名なんだって。そういうの、困るんさ」

随分と冷たい対応だなぁと浮かれてた自分を自嘲してしまいそう。
やっぱり終戦と共にもう、私達は歴史の一部でしかなくなっちゃったんだろうか。

「……だから、オレの名前教えてやる」
「…………え?」
「ずっと昔に捨てたJr.の本名。でも、オレ以外の人間がいる時は呼ぶなよ?」

特にジジィに聞かれると俺殺されるかもしれねーかんな。と半分冗談ぽく言ったラビにコクコクと首を縦に振る。微笑したラビが耳元で小さく、ちゃんと覚えとけよと念を押す。
ああどうしよう。ラビは薄情ではなかったんだ。歓喜でまた熱が上がったみたい。


「オレの名前は―……」


I'll be seeing you.

‐‐‐‐‐‐
終戦やら名前やら、以前書いたものと内容だだ被りに(笑)
題名は浮かばなかったので単純に。「それではまた、さようなら」

2009.10.21.wed

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