:D,Gray-man
:ラビ


朝日の眩しさに目が覚めて、中々開かない瞼を擦る。ふあ、と欠伸交じりにベッドから出て寝間着から普段着に着替える。適当に髪を整えたら後はバンダナで固定。時計を確認して部屋を出る。長い階段を降りれば段々と漂ってくる上手そうな食事の匂いを身体に取り込みながら、その方向へ一直線。食堂に着いたら適当に挨拶を交わして料理長から朝食を受け取る。キョロキョロと辺りを見回せば愛しい彼女が笑顔で手を振っている。俺はにへらと笑ってそのテーブルへ向かう。
そんな何もかもいつも通りの朝、のはずだった。

「浮気したでしょ!」
「は?」

そこには普段の天使のような笑顔の依泉ではなく、かといって鬼のように恐ろしい訳でもないが眉を吊り上げてぷくっと当社比2倍ほどに頬を膨らませた、いかにも怒りを露にした顔が俺を迎えていた。

「友から聞いたんだからね。昨日ラビがリナリーちゃん口説いてたって!」

ああ、ナルホド。瞬時状況を理解した俺は依泉にバレない程度の溜め息を吐いた。
依泉の親友である友。彼女は依泉をからかうのが楽しいらしく、最近は俺を使った悪戯にハマっている様子。今回もどうせそんなとこだろう。

「証拠は?友ちゃんと見たんさ?」
「……分かんないけど」

やっぱりな。事実ならアイツは絶対証拠を残すような奴だし、大体昨日は俺リナリーに会わなかったし。
思考回路は順調に働くが、そんな事を知る訳もない依泉は勿論現在進行形で疑っている。ついでにここは朝飯時の食堂なので大勢の野次馬の視線も痛い。しかしそんな事俺達には全く関係なかったりする。

「俺が依泉以外本気で相手する訳ないさね!」

段々と赤くなってきた目尻に気付き一粒溜まった涙を拭いてやる。そうすれば逆に表情が歪んで、しかしそれはただ安心の意味だったらしい。俺を呼んで胸に飛び込んできた依泉をぎゅうっと抱き締め返した。ああなんて愛しい。
そこらから「朝っぱらから熱いねェ」だのと笑い声や口笛が飛んでくる。
依泉は後先考えず行動するから、いつも後から失態に気付く。だから今もきっと顔を赤くして、公衆の面前で抱きついた事を後悔して動けないはずなんさ。それを逆手に俺は腕にもう少し力を入れて、良いだろう、と男共に見せびらかした。
そんな日常。


単細胞少女と暢気少年が贈る、バカップルな話。

「って訳で浮気じゃなかったよ友!」
「そんなんだから気付かないんだよ……。てかそれってさ、本気じゃない程度に浮気してるともとれるよね」
「はっ!……やややっぱりラビ浮気!?私もっかい言ってくる!」
「(面白い)」

幸せはエンドレス。


2009.11.25.wed

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