:D,Gray-man
:アレン・ウォーカー
8年前のクリスマス、それは僕のアレン・ウォーカーとしての人生が始まりを告げた日だった。拾われた僕は姓にウォーカーという名を分け与えられた。
5年前のクリスマス、育ての親であるマナが亡くなり、僕は彼をAKUMAにしてしまった。その時幼いながらにエクソシストとなる事を決心した。
そしてまた訪れた聖夜。少し前に僕の中にあると発覚した14番目の意志。もしもマナが本当に、僕ではなく僕を通した14番目を見ていたに過ぎないのだとしたら、そうだとしたら。僕は。
「多すぎるんだよなぁ」
僕は一つ、たっぷりと大袈裟な程の溜め息を吐いてみた。
ここは僕の私室だった部屋だ。過去形なのは勿論今ここに寝泊まりしている訳でないという事だが、それは以前はた迷惑なここの室長の発明により部屋が半壊してしまった為である。ベッドなんかはもう使い物になりそうにないが、そこで幸いか僕の気に入っていた絵だけが奇跡的な程に傷ひとつなく綺麗なままでいた。
「何が?」
「うわ!」
感傷的になってしまっていたのか、物音は勿論気配すら無かったはずにも関わらずいつのまにか隣には依泉がいた。漆のような髪色が印象的な、アジア系の血を引く少女は僕の想い人でもある。
その反応はちょっとひどいなあとショックを受けた訳でも、ましてや怒った様子もなく言う依泉にほんの少し慌てる。
「ねぇ、何が多いの?」
クリスマスに限っての悲しい思い出がですよ。なんて事は人に言える訳もなく、吃るくらいは許して欲しい。のらりくらりとかわせる技量が僕に備わっていれば良いのだけど。
自然と目は例の絵の方に向いていたのか、ふと見た依泉も同じように壁の方を見上げていた。
「ねぇ、私最近思うんだ」
「何を?」
痺れを切らしたのかもしれない。先ほどの問いを忘れたかのように再び話し出すのを聞いて、どこか助かったとでも言うような気持ちが沸き上がる。
「アレンはすっかり教団の人間だね」
まだ一年もいないくらいなのにねと微笑した依泉が愛おしい。衝動的に出た涙を隠すせいにして少しばかりの時間彼女を抱き締めてもバチは当たらないだろうか。
ひとりじゃないよ。
彼女が意図して言ったのかは定かではないが、少なくとも僕にはそう言われたように取れたのだ。今となっては苦しい思い出達も全ては過去にあるのだから、これからは良い思い出が増えてくれたって良いんじゃないか。
瑞兆
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アレン誕生日おめでとう!
2009.12.25.fri
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