『レイトショー』
マフィアだけど平凡な二人の話。ほのぼのと微甘。
:家庭教師ヒットマンREBORN!
:沢田綱吉(+10)

【完結済】
1:レイトショー
2:You win!
3:I win!




駆け出しの監督率いるチームの今時でないベタベタの恋愛モノ。一般人は明日からの休日に来れば良いしましてや今は夜中である。そんな幾つかの些細な理由によって映画館はガラガラに空いていた。

かく言う私は定期的な休日どころか一定の終業時間もここ数年もらっていないので、比較的早めに仕事を終わらせる事ができた本日の睡眠時間を削ってやってきたのだった。どうしてわざわざそんな事をしたかと言うと、学生時代仲の良かった友人が女優として初主演したというニュースを聞いたからに他ならない。
エンドロールが流れる頃には10人ほどいた観客もほとんどが帰ってしまったのではないだろうか。
あぁ、あの子が女優か。成長したなぁ。昔よりもっと綺麗になったなぁ。これは今後注目されそうだなぁ。

「だよね、オレもびっくりした」

ガチャン!身体全体を捩り懐に隠していた銃の先を後ろに構えた。

「……あぁ、なんだ綱吉」

薄暗い中で見えたのは闇がかったハニーブラウンの髪。にこにこと食えない笑顔で両手を顔の横まで挙げているのは上司の沢田綱吉だった。
周りを見渡せばどうやら残っているのは私達だけらしい。構えた銃を下ろして小さく息を吐く。

オレだったから良かったものの今のが一般人だったら大変だったよと銃を持つ私にお説教をするが、相手がただの一般人なら話しかけられるより前に誰かが近付いた事に気付けると、綱吉だって分かってるでしょうに。
それよりも私としてはもっと重要な事がある。ボスである綱吉がどうしてここにいるのかという事だ。確か今日は寝る間も惜しむ勢いで片付けてもらわなくてはいけない書類がそれはもう山ほどあったと思うんだけど。

「依泉だけズルイよなぁ。オレだって彼女とは仲良かったんだから、映画くらい観に行きたいよ」

ぶーと口を尖らせ拗ねる綱吉が私の席に体重を乗せて項垂れる。いやいやアンタ立場分かってるんですか。こんな簡単に寝首かかれるような暗闇にボンゴレ10代目が護衛も無しで行こうなんて、自殺行為にも程がある。

「皆してまだダメツナ扱いかよ」

更に機嫌を損ねたらしい綱吉は私が思うに、仕事を隼人辺りに押し付けたと見える。まぁ実際にボスが目を通さなければいけないものなんて一部だろうけど。

確かに綱吉は強くなった。ドーピングなボンゴレの秘弾を使わずともそれなりに戦えるし、性格も比較的前向きに楽観的に強気になった。昔にやった超直感の開花プログラムも今となってはとても役に立っている。
確かに強くなったけれど、それでも死ぬ気弾無しじゃ裏社会ではほとんど通用しないんだから。

「だから、依泉がいるでしょ」

さも楽しそうに綱吉が笑った。やはり綱吉は“イイ性格”になったもんだと私は大きな溜め息を吐いて、さっぱり諦める事にした。

「ねえ今から二人で呑みにいこうよ」
「今から一人で書類地獄に決まってるでしょう」


レイトショー

2009.11.08.sun

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