網って時々、本当にオレの双子の兄妹なのか疑いたくなる事がある。

放課後、今日はボクシング部が休みな網と偶然予定が重なり、久々に兄妹二人で帰宅しようとした日の事だ。普通に階段の一段目を降りようかとした時、網は何の突拍子もなく言ったのだった。

「綱吉は良いよね。なんか、極端で」

は?思わず間抜けな声が出る。この頃の網は何を言い出すのか分かったもんじゃない。
大体今だって、なんか極端ってなんだよ!

「私なんか顔に勉強に運動神経に、全部が全部平凡過ぎてつまんないったら!」
「つまんないって言われても……ダメダメよりよっぽど良いだろ!」

凹凸の無さを知らないから綱吉はそんな事が言えるんだ、と非難の様な目を向けられたが、オレからすればドン底を知らないから網はそんな幸せな悩みを持てるんだって。
私これからはもう、ご飯とか絶対並盛で食べる事にする!と割と大盛りを食べる網の決意表明。何なんだ一体。こうも訳の分からない事を訳の分からないタイミングで言われても、我が妹ながらどうして良いのやら。

「緑たなびく並盛のーっ大なく小なく並がいいー!」

今度は突然校歌を歌い……もとい叫びだした網に、もう誰も待ったはかけられない。

「もうこんな並中校歌なんて……っ大好き!」
「えぇえ……」
「君、並盛が好きなの?」

網の言葉にもうツッコミを入れる事すら疲れた頃、意外や意外。こんな会話に参入者が現れた。ちなみに現在地は校舎出口だ。

「っヒバリさん!?」

コツ、とローファーと地面のぶつかる上質な音が静かに響く。口元を微かに吊り上げたヒバリさんは見事にオレの存在を視界から消してしまったらしく、一瞥すらせずに真っ直ぐと網の前まで来た。

「気が合うね」





「可愛い人、格好良い人、頭の良い人。周りにはたくさんいるのに、私は特になにか抜きん出てる訳でもない。良くも悪くも私には何もないんですよ!」

場所は変わって応接室。質の良さそうなソファーで机を隔てて向かい合い話し込む2人を、どこか遠くに思いながらその隅に身を置くオレは一体何をしているんだろう。そんな事はもう何度も頭に過った事だけど、最終的には不良の巣窟に妹を一人置いていけないといった話だろうか。

オロオロと会話を聞き流すオレには気にもとめず、ヒバリさんは網の言葉を静かに聞いている。暴力が向かないに越したことはないけど、こんな事ってあるのだろうか。
それに双子の妹がこんな状況で愚痴を溢すのはとても意外だった。やっぱり似てないよなぁなんて思うのは今更な話だけど。
結局この後も下校時刻ギリギリまで、愚痴に校歌に果ては並盛までをも語りだす事になるけれど、もう既に網は誰の手にも負えない気がする。

「大体方向音痴だって、どう考えてもプラスにはならないんですから!」


大丈夫だよ、網。心配しなくてもヒバリさんと仲良くなった時点で十分非凡な存在だから。少なくとも並中新聞の記事にできるくらいにはね!
そう思ったもののやっぱり命は惜しいので、嫌な思い出のある場所で長らく黙りを決め込んだオレはある意味結構頑張ったんじゃないかな。


2009.10.23.fri

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