「……って事らしいんだけど」
「ふぅん、お兄ちゃんが告白の約束ね」
昨日の朝に網がお兄さんに言われ、オレに相談した事を、今オレは京子ちゃんに話している。
正直な所激しく気が進まなかったがこれも京子ちゃんが網を気に入り心配しているからこそなんだし、何より黙っておくと後でバレた時オレがどうなるか分からない。
「報告ありがとうツナ君」
「あ、うん」
昼休みの屋上の隅で網親衛隊な京子ちゃんとそれの一員にされかけているオレとの報告会。一通り説明を終えた後の京子ちゃんからのお礼に一瞬戸惑う。素の京子ちゃんに言われると不思議な事に照れ臭さなんかよりも意外という言葉が先立ってしまっていたのだ。
「それにしてももし結婚したら、網ちゃんとは義姉妹になるんだね。それはそれで良いかも」
がしゃん!盛大に弁当をひっくり返した音に京子ちゃんからの呆れるような視線が痛い。もうほとんど食べ終えていた事が唯一幸いだった。
「えっ、な、結婚……!?」
「と思ったけどやっぱり網ちゃんはお兄ちゃんにはあげられない。そうだよねツナ君?」
「あ、あはは。そっか、網……」
オレと京子ちゃんだとかそんな事は一切考えてない!……とは胸を張っては言えない。多分オレは今色んな意味で顔が赤くなっている。
「お兄ちゃんに網ちゃんはあげられない。でも網ちゃんもお兄ちゃんも幸せになってほしいし、お兄ちゃんには勝ってほしい」
私ってワガママかな?凛としていた表情から皆に見せるアイドルの潮らしい顔になった京子ちゃんにまたしても心臓が跳ねる。お兄さんはその約束を試合が終わればと言っていたらしいけど、きっと試合に負ければ言わないし、言えない。そう思っての言葉なんだろう。網とお兄さんをどちらかと言うと応援している点は違うけど、オレもそう思う。
「私らしくないね。悪いけど今のは忘れて」
少しの後表情を戻して立ち去った京子ちゃんに暫し呆けていたが、そこでフと思う。
オレって京子ちゃんの事好きだったよな?今でも好きなのかな?好きだとして、それは表向きの京子ちゃん?それとも、素の京子ちゃんもちゃんと受け入れられてるのかな。
「あー……もう、訳分かんない」
元から考えるのに向いてないんだよなぁと半ば自棄になってオレもその場を後にする事にした。もうすぐ午後の授業が始まるけど、色々頭の中がごちゃごちゃしてて全く集中できる気がしない。……集中してる事なんて滅多にないんだけど。
2010.05.19.wed
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