大人になるというのは、きっと誰かの死と向き合うということ。
見知った芸能人が死んだ。
そんなニュースをもう今月だけで何回見たのだろう。昔なら「自殺」でも死因を隠されていたのに、今じゃちゃんと伝えてくれる。
芸能人が死ぬたびに思う、人から必要とされてた人が死んで何故私は死なないの?
それはきっと数十年生きてても答えは見つからないのだろう。
冷め切った朝食をよそに、チャンネルを回してみても、訃報の特番ばかり。
机に突っ伏して考える。死んだ芸能人、そんなに応援してなかったな。やっぱりキラキラした世界でも嫌なことたくさんあるんだろうなあ。
でも死んだら無くなっちゃうんだよね。
でも私は死にたくて死にたくてたまらない。
ゆっくり堕ちて、暗闇で眠りたい。
朝なんか来なくていい。
……それでも朝は来るから不愉快だ。
血塗れのベットを横目にタバコに火をつける。
この血が自分の内臓を掻きむしって出たものならいいのに。
携帯を取ると、母親からメッセージが来ていた。
「同じ学校だったあの子、今朝亡くなったって」
メッセージには葬式の日程や場所が書かれていた。母親からは来てとの催促が来る。
断れない、断る理由もない、でも行く理由もない。あの子と私、特に関係ないのだから。
でも仕方がないので支度をする。不思議と涙は出ない。そういえばあの子は学校ではキラキラしていた。なんの努力もしてない。けど周りから好かれてた。羨ましいと何度も思った。少しだけ妬んだりもした。
葬式会場に行くまでに同級生からたくさんメッセージが来る。面倒くさいので全部無視をした。
着いたからも同級生に話しかけられるがそれを無視して棺桶に向かった。
あの子は綺麗な寝顔で寝ていた。
今私は死と向き合っている。
今まさに昨日まで生きていたであろう人を眺めてる。
不思議とまだ涙が出ない、自分はそんなにもヒトに対して無関心だったかと腹が立つ。
周りが泣いてるのに自分だけ泣けない。
時間が止まってるような感覚がした。私のあの子今同じ時の流れにいるような感覚さえしている。このまま死ねれば、私も連れてってくれと。
気がついたら葬式は終わってた。母親が迎えに来てくれたので実家に帰った。
卒業アルバムを眺めると、あの子がたしかにそこにいた。
「あの子、自殺だったんだって。色々大変だったみたいよ」
母親の言葉が痛いぐらい胸に染みる。
アルバムを強く握り締めたらシワができてしまった。ゆっくりこすりながらあの子をもう一度見る。
あの子のこと嫌いだったのかもしれない。
嫌いと気がついたその時初めて涙が出た。
死にたくなった私に腹を立てた。
理由はわからない。
生きる意味も死ぬ意味も今の私にはないのだ。
死と向き合っても、明日にはまた誰かの死が訪れるのだ。
有限ではない夢のような無限の死を、私はまだ受け入れることができないままでいる。
受け入れたくない器を、この手で割るのは…誰のため?
fin.
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