気がついたら、海の底にいました。深い青の底。宇宙と似ているような浮遊感。
琥珀色の水仙に包まれる。気泡は夢のように弾けて、飛んでいきました。
あの花の言葉は確か、「自己愛における報われない恋」。
私は恋をしていたのでしょうか。
いつか迎えに来てくれると信じていた王子様なんてものは存在していなくて、私の前に降り立ったのは、それはそれは大きな鯨でした。
鯨は、私に寄り添うこともせず、ただそこに存在していました。
何かを思い出そうとするたび、頭が痛む。足は鉛のように重く、浮遊感の中でも堕ちているように感じました。
ずっとこのまま浮遊感の中、水面を見続けるのでしょうか?
鯨に問いかけるも、何も答えてくれませんでした。
目を閉じて、そして開けると、私は砂浜に打ち上げられていました。今までのことは夢だったのだろうと信じて、足についていた枷を外し、歩き始めました。
少し歩いては休憩をし、また歩いていくと、そこには王子様がいました。ブロンドの髪に青い目、まるで絵本から飛び出してきたような美しい王子様。
王子様に私は問いかけました。
「ねぇ、あそこに大きな鯨と海神が歌っているの。」
王子様は首をかしげました。私は王子様の手を取り、一緒に鯨の元へ歩き出します。
そして静かに、ゆっくりと沈み、落ちていきました。
落ちていった先にはなにがある?
fin.
top index