出会いの季節は終わった
桜も散り問題児かと思われた1年生らが、烏野の翼を取り戻してくれると期待されつつある中、本日も部活動に勤しんでいた。
地獄かと思うほど長く続いたレシーブ練から解放された彼らは、次の練習までの僅かな時間を各々自由に過ごしていたはずだった。
ガラッと勢い良く体育館の扉を開ける彼女の姿を見るまでは。
けして大きくない身長に不釣り合いのサイズのジャージを羽織りやって来た彼女は、烏野高校バレー部のマネージャーだった。
名前は七瀬遥、高校2年生だ。
膝丈の短パンが隠れるくらいの遥のジャージに、1年生はぎょっとした顔で驚いていた。
そんな1年生を他所に、彼女は目的を達するために走りだした。
「スーーーガーーーさーーーん!!!会いたかったです!!!」
そう叫びながら、丁度膝に手をついていたスガさんの背中目掛けて飛びついた。
すると大体予想がついていたようで、危なげもなく受け止めてくれた。
ふわふわした容姿からには想像できないがっしりした体幹、汗かいてるはずなのにいい匂いしかしない!!なんなの!!好き!!
「おー、ハル久しぶり!今日から復活すんの?」
私の膝下に手を通しておんぶをしたまま、後ろを向いて話しかけてくる。
最初の頃は飛びつくと危ないべー、と怒られてたけど言われなくなった。
それどころか日に日に手際が良くなってる気がする。
大地さんに抱きつくと、未だに驚かれて怒られる。
「はい!また一緒に頑張りましょうね!」
「おー!って、そういえば新しく入ってきた1年生の紹介まだだったか」
ふと思い出したかのように、コートを見ながら喋るスガさん。
その視線の先には私が見たことのない子たちが4人いた。
「ありゃ、1年生入ったんですね!!挨拶しないと、スガさんお願いします!」
そう伝えるとはいはい、なんて苦笑しつつも
私を抱えたまま彼らの元へ連れて行ってくれる。
間近で見ると全然違う。
というのも、1年生の中には身長が高めの子がいて遠目から見た印象と差があった。
「えーっと、マネージャーやってます七瀬遥です、ちょっと諸事情で部活に来れてなかったけどこれから参加するんでよろしくねー!」
私を目の前にしてぽかーんとしてたような彼らは、ようやく納得がいったようだ。
「うわああああ!!清水さん以外にマネージャーいたんだー!!すっげー!!」
目をキラキラ輝かせてぴょんぴょん飛びながら喋るのは、オレンジ頭の身長なちょっと低めの子だった。
「んーー??スガさん、誰ですかこのちっちゃい子」
「こらこら、ちっちゃいのはハルもだろー」
そんな呆れ顔しないでください、多少は気にしてるんですよ身長。
「えー、これでも一応平均ですもん身長」
口を尖らせながらそう言う。
「ごめんごめん、で1年の紹介するから!じゃあ、影山から自己紹介してやって」
あ、スガさんが紹介してくれるわけじゃないんですね!!
「ッス、中学は北川第一でした。影山飛雄、セッターです」
あれ、影山って聞いたことあると思ったら…
「奇遇だね〜私も北川第一だったよ!影山のお話は男バレから色々聞いてた」
コート上の王様そう揶揄されていた彼は、中学のころより雰囲気が優しくなった気がする。
中学の子たちが見たら驚きそう。
「え!そう、なんですか?」
まさか中学の先輩が居るとは思ってなかったみたいで、びっくりしてる。
「うんうん、これからは関わることが多くなるだろうから同じ北一出身として頑張ってこうね」
どうせ及川さんにひどい扱いを受けてたんだろうと思うと、自然と影山の手を握ってそう言ってた。
それにしても後輩は可愛いけど、中学からの後輩だともっと可愛く思える。
「ああああああああああ!!!!思い出した!!!」
私の顔をやけにじっと見てくると思ったら、いきなり大声を出した彼。
「うっるさいわ!!なに?どうしたの?」
さっきまでは私に押されるように会話をしてたのに、打って変わって目がキラキラしてる。
さっきのオレンジ頭の子みたいに。
「あの、北一の美しすぎる主将って言われてましたよね?!」
「ん?ああ、めっちゃ懐かしいねそれ。そういえばそんなことも言われてたけど、大袈裟だよね〜」
「俺、七瀬さんのレシーブもゲームメイクも尊敬してて…!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
立て続きに言葉を発そうとするのを、慌てて止める。
けど、すっかり興奮していて止まらなかった。
「てっきり青城に行ったと思ってました、そのわりに噂とか聞かなくなったんでおかしいとは思ってたんですけど。どうして烏野のいるんですか、バレーやめたんですか?」
どうしよう、これ。
私の話を聞いてくれないし、答える暇も与えてくれないし。
「こーら、影山。ハルが困ってんだろー」
「!!す、すみません」
あ、良かった。ようやく落ち着いてくれた。
あのままだったら、あることないこと口を滑らすとこだった。
「影山七瀬さんと知り合いなのかー!?」
そう言いながらぴょこぴょこやって来たのは、オレンジ(頭)くん。
「中学の後輩なんだ!あと、ハルでいいよ」
去年の3年生がつけてくれたハルというあだ名をなかなか気に入っていて、バレー部でしか呼ばれてないっていうのも良いと思っている。
「は、はい!ハル、さん。俺は日向翔陽、雪ケ丘中でした!ポジションはMB小さいけど飛べます!!」
元気だなー
さっきからぴょこぴょこ飛び跳ねてるから、飛べるっていうのは嘘じゃないのかな。
「ノヤっさんとかと同じくらいの身長だからリベロかと思ったよ〜ごめんね、MBとして烏野で頑張ってね」
身長のこととかリベロのこと言ったらむっとした表情をしていたけど、最後の方はにこにこ笑顔になってた。
この子わかりやすいわー
「あの、月島デス。七瀬さんの最後の試合見に行きました。正直、美しすぎる主将って何だよって鼻で笑ってましたけど、その通りだと思いました。……尊敬してマス。」
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