ダンデくんも大概だから安心してね

「ホップくんもそんなお年頃か〜、ふふ」
「違うんだぞ!」

 真っ赤な顔で否定してくるホップくんにニヤニヤとした顔を向ける。
 リビングで一人、雑誌の巻頭グラビアを細目にそ〜っと覗いていた所にタイミング良く(ホップくんにとってはタイミング悪く)、ダンデくんと遭遇してしまったのだ。
 ホップくんも十代半ば。ダンデくんのせいで少し遅れたジムチャレンジも済ませたし、今は博士になるべく奔走している日々。あんなに小さかったのに大きくなっちゃって。

「ふふ、それくらいにしてやってくれ」
「は〜い」
「はあ……」

 流石に可哀想になったのかダンデくんに止められてしまった。このブラコンめ!でも赤くなったり青くなったりするホップくんは確かにちょっと可哀想かも。
 ダンデくんは弟の成長に微笑ましそうな笑みを浮かべて、そうまるで他人事の様な感じ。自分はどうだったのかって話よ。
 このままホップくんだけが恥ずかしい思いをするのは可哀想だ。

「でもダンデくんこそマセガキだったよね」
「は?」
「えっ、アニキが!?」

 ホップくんが物凄く驚いた様子で勢いよくダンデくんを振り向く。世間的なイメージ含めて彼以上にクリーンと評される人物は居ないもんね、分かる。
 テーブルの上に置いてあったこの家のタブレットにロトムを移し、アルバムを開く。いくつか並ぶフォルダの中のダンデくんによってロックを掛けられたものには、ダンデくんがマセガキだった証拠がしっかり残されている。言わば黒歴史とやらだ。

「ロトム、このフォルダを」
「止めるんだロトム」
「ロ〜……」

 持ち主である私の言うことと、契約主であるダンデくんの言うことの食い違いに困った様子のロトム。普段は好きにしろなんて言うくせにこういう時だけ割り込んできちゃって。

「ロトム!開けてくれ!」
「そうよロトム!ダンデくんはほっといて!」
「オマエ達な……」
「まかせロ〜!」

 ダンデくんが諦めたと判断したのかロトムがロックを外す。中から出て来たのは幼児の頃から丁度今のホップくんくらいの頃のダンデくんの写真。中には私が写っているのも何枚か、いや結構ある。
 普通の家族写真は勿論普通のフォルダに入っている。ここに入っているのは、ダンデくんがホップくんに見せたくないと判断したものたちだ。

「見てよホップくん。ダンデくんてこんな小さい時から私のおっぱい揉んできたの」
「え!ほ、ホントだぞ……」
「……」

 まず目についてピックアップしたのは六歳くらいのダンデくんが床に仰向けになり、更にその上に私が仰向けに乗って寝転んでいる写真。ダンデくんによって後ろに引っ張られた体勢で、私は楽しそうに笑っている。
 だがダンデくんの両手は後ろから私のおっぱいをしっかりと鷲掴んでいるのだ。ダンデくんも満面の笑み。そりゃそうだ、私のおっぱい揉んでるんだから。真っ平らな年相応のまな板ですが。

「ほら!こっちなんか太もも触って来てんの!」
「うわっ」
「…………」

 今度はソファに並んで座った八歳くらいの私たち。幸せそうにドーナツを頬張る私。と、私の向こうにある紙ナプキンを取ろうと身を乗り出し左手を伸ばすダンデくん。
 その右手はナチュラルに私の太ももの結構際どい位置に置かれている。私はワンピースを着ているので勿論生足だ。

「アニキ……」
「ダンデくん……」
「そんな歳から目覚めている訳無いだろう。ホップ、普通に考えたら分かるはずだぜ」
「た、確かに……」

 憐れんだ視線をホップくんと一緒にダンデくんに向けると呆れた様に言い返される。
 まあ元々私も悪ふざけで言ってるだけだしね。でもホップくんはちょっと信じ掛けちゃったみたい。いつまでもその純粋ボーイで居てくれ。
 なんか他に良い感じの写真無いかな〜……、おっ。

「でもね、ホップくん。これは絶対に」
「いい加減にしろ、ナナシ。ロトム」
「ケテテ!」
「あ〜……!」

 ダンデくんにタブレットを取り上げられ、ロトムも外に出されてしまう。最後に一枚見せたかったのに。実際この時の記憶はあって、私もちょっとドキッとしちゃった時の写真。

 チャンピオンになってすぐ、ハロンに帰って来たテンション高いダンデくんに、何故か抱っこをされた写真。
 にぱっと笑っているダンデくんと、少し照れた顔でピースをする私。ダンデくんの右手は背中側から私のおっぱいに触れ、更にそのおっぱいはダンデくんの顔に当たっている。左手はこれまたお尻側から直接太ももの裏に回っていて、スカートの私は勿論生足。

 この時の話をダンデくんから聞きたい気持ちもちょっと、いや大分あったかも。

「ほら、そろそろ母さんが帰ってくるぞ。ホップ、雑誌片付けてこなくて良いのか?」
「あっ!サンキューアニキ……っ!」

 ダンデくんの言葉にホップくんが慌てて雑誌を抱え二階へ駆け上がる。ドタドタと勢いが良い。
 うーん、やっぱりこんなタイミングで遊びに来ちゃって悪いことしたな。ごめんね、ホップくん。今後話題に出さない様にしてあげないと。約束は出来ないけど。

 そう心の中で詫びる私の傍らでタブレットを触るダンデくん。さっきのフォルダを見ている様だ。

「ね、実際のところどうだったの?」
「何がだ?」
「もう!意識してやってるのはあったのって!」

 あー、と言いながらその指はフォルダ内を下に行ったり上に行ったりを繰り返す。教えてくれるつもりは無いようだ。まあ殆どが偶然の産物だろう。少しくらいあって欲しいけど。
 つまんなくなったので横から操作し、フォルダ一覧に戻る。あ、チョロネコちゃんのフォルダ。殆どが気持ちよさそうに寝ている写真だけどどれも可愛いな。

「あ、見てこれ!ウールーの余った毛で作ったボール!」
「ああ、懐かしいな」
「こっちは拾ったココガラの羽根で作ったポケじゃらし!」

 懐かしい〜!といつの間にか私の手に渡っていたタブレットを好き勝手動かす。このフォルダはチョロネコちゃんとホップくんの写真が多めだ。そういえばホップくんの生まれるちょっと前にこの家に住み着いたんだっけ。
 ダンデくんとホップくんは似てるけど、やっぱりこうして見ると全然違うな。ホップくんはどんな大人になるんだろう。とても楽しみだ。

「……何処まで意識していたか、だが。まあ、あのフォルダに入っているって事はそういう事だ」
「えっ!?じゃあ全部って事?」
「…………」
「……あんな小さい頃から?」
「キミが教えてくれと言ったんだろ」
「そうだけど……」

 そりゃ少しくらいは、とは思ったけどまさか六歳、いやそれより前から意識されていたとなると。ちょっと怖い。けど嬉しさもある。
 気不味そうなダンデくんと目が合い、ゆっくりと視線を逸らされる。可愛い。……まあいいか!そんな過去があって今があるんだから。

「……ふふ」
「なんだ」
「ふふふ、なーんにも!ダンデくん私の事大好きじゃん!」
「…………まあな」
「んふふふふ!」

 気持ち悪い笑い方をするなと失礼なことを言われる。でも私はそんな事構わず腕に抱き着いちゃう。照れちゃって可愛いな!

「あら、アナタ達来てたのね」
「あ!おかえりなさい!お邪魔してます!」
「おかえり、母さん」

 私を振り解いてそそくさとおかあさんの荷物を持つのを手伝いに行くダンデくん。あーあ、行っちゃった。
 ケーキ焼いてあげるとキッチンから聞こえてきたおかあさんの声にやったー!と返しながら、チョロネコちゃんとポケじゃらしで遊ぶ。
 二階から降りて来たホップくんもそれに混ざって来たので、ポケじゃらしとポケボール、どちらがチョロネコちゃんの気を引けるか対決が始まった。

 ……うーん、なんだか幸せって感じだ!




2021/09/14




back
トップページへ