おもちゃ売り場でダンデくんを見かける話

 歩いていた足を止める。あそこに居るのは……、間違いない。ダンデくんだ。

 シュートシティに最近できた大きなショッピングモール、その中の子供向けおもちゃ売り場のショーウィンドウ。まさかこんなところで彼を見かけるなんて。もしかして……、私との将来を考えて……?そんな、気が早いよダンデくん!私たちまだ十四歳だよ?そりゃいつかは必要になるけどさっ!
 そう一人でむふむふしながら物陰からダンデくんを覗く。なんで話しかけないのかって、そりゃだってダンデくんにとっては私へのサプライズなんだから。ここは私は知らないフリをしておかないと……。

「ナナシさん?」
「ぴゃっ」
「何してるんだ?」
「こっ、こんにちは〜!」

 にっかり光り輝く眩しい笑顔でこんにちはと返される。ああ、浄化される……と思わず祈りのポーズを取ろうとする手をなんとか押し留め、後ろで組む。もじもじしてるみたいでちょっとぶりっ子ぽくなっちゃったかな。

「私は、……その。ダンデくんは、何してるの?」

 ダンデくんを見ていましたなんて言えるわけも無く、話をすり替える。私との将来の子供たちの為に早くからおもちゃを選んでくれているって事くらい分かっているんだけどね!ここはこう聞くのが正解だってひいおばあちゃんが言ってたもん。知らないけど。

 ダンデくんはどう返してくれるのかなとワクワクしていると、いい事を思い付いたとまた一段と顔を輝かせ、なんと私の肩に手を回してきた。そっそんな!まだ私たち、手を繋いだこともないのに!

 そのままズンズンと連れて行かれた先は、最近流行っている戦隊モノのおもちゃが並べられたコーナーで。
 そういえばこの前、弟が新しく出たのを買って欲しいとママに泣きながら縋り付いていた。残念ながら半年間のおやつとゲーム禁止の条件は飲めなかったようで、初めて見るほどの悔しそうな顔をしていたっけな。

 でも私たちに子供が出来た頃には別の戦隊モノになっているだろうし、今買ってしまうと古臭いと嫌がられてダンデくんが嫌われる可能性が高い。でもでも、せっかくダンデくんが選んでくれたんだし文句を言うなんてことは……。

「どれがいいと思う?」
「え!?そ、そうだなぁ……」

 この中で、数年後にダサいと思われなさそうなものを選ばなければ。ダンデくんと子供の間にヒビが入ってしまう。
 私が必死にうんうん悩んでいると、ダンデくんが手に取って選び出す。悩みすぎて痺れを切らしてしまったのかも知れない。ごめんね、ダンデくん。

「聞いてるか?」
「うぇ、え?何が?」
「だから、これが今流行ってるやつであってるんだよな?」
「うん!そうだよ」

 たしかこの前弟が欲しがっていたのは……。

「あ、それっ。その右のやつが一番新しいやつだよ」
「そうなのか!」

 じゃあこれにしようと颯爽とお会計へ向かうダンデくん。そんなアッサリ決めちゃって……。金銭感覚の違いというやつなのかも知れない。これは早めに解決しておかないと今後大きな問題になってくるわね。
 青色の包装紙と緑のリボンで綺麗に包まれたおもちゃを抱えてダンデくんが戻ってくる。

「助かった!キミのおかげだ!」
「う、ううん!私は何も……」
「確かキミは弟が居るだろ?オレの弟も同じくらいだから」
「……ん??」

 ニコニコと輝き続ける笑顔で話すダンデくん。ダンデくんの弟?と私の弟がどう関係あるのか。あれ?そもそも。

「ダンデくん、弟居るの……?」
「ん?ああ!言ってなかったか?」
「聞いてない……」
「そうだったか!実は来週誕生日でその為のプレゼントを探しに来たんだ」

 だが数年家を離れてる間に好みが分からなくなって、としょんぼりするダンデくん。子供の流行の入れ替わりは確かに激しい。一ヶ月遊んだら良い方だ。
 あれ?もしかして私との子供の為ではなくって弟くんのための?全部私の勘違い、……だと?

「たまたまキミが来てくれて本当によかった!」
「ううん……お役に立ててよかった、よ……」

 うん、よかったよかった。これでダンデくんは弟くんに嫌われずに済むんだもんね。私たちの子供からも……。泣いてなんかないもんね。
 先程までのテンションはバウタウンの海に捨ててきた。どうせ忙しいダンデくんはもう帰るのだろう。今日のところは私から別れを切り出すかと手を上げかけた時。

「ナナシさんはこの後時間あるのか?」
「うん?別に何もないよ。ダンデくんはもう、」
「なら!」

 突然大きな声を出されてびっくりしてしまう。ぽかんとダンデくんを見ると、おもちゃを抱えたのとは反対の手で伸び始めた襟足をわしゃわしゃ触っている。目線は合わない。私は何かやらかしてしまっただろうか。

「その、お茶でも!して行かないか!」
「?誰と?」
「お、オレと!」
「誰が?」
「キミがっ!」

 嫌なら断ってくれと少しだけ唇を尖らして呟く。段々と赤くなっていく顔は私のせい?それとも?
 その赤さが伝染するように私の顔も熱くなって行く。まさか、私なんかを誘ってくれるなんて。流石ダンデくんはちゃんとお礼ができる、優しくて素晴らしい人だ!

「うん!ぜひご一緒させて!」
「っ!ああ!確かこの上の階に……」

 そう言って楽しそうに先導してくれるダンデくんに着いていく。出来たばっかりの場所でも把握しているなんて、伊達にチャンピオン様をしていない!


 結局私たちは目的地に辿り着くことはなく。地上階の自販機でドリンクを買い、側にあったベンチでティータイムをする事になる。





2021/10/16




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