ダンデくんに嫉妬して欲しい!

 『ダンデくんに嫉妬してほしい』。その一心でこの数ヶ月、アイドルであったり俳優であったりカフェの店員であったり、はたまた二次元のキャラクターだったり。それはもう様々な男を渡り歩いた。
 結果、推しが増えた事により進行形で私の財布が寂しくなっただけでダンデくんからの嫉妬はイチミリも受けられなかった。どうして。

「どうしてなの?」
「それをオレに聞くのか?」
「だって誰に相談しても皆ダンデくんの考えてる事は分かんないって言うからさ」

 もう直接本人に聞いてやろうと思って、とソファの隣でどこだかの地方のチャンピオン戦を見ていたダンデくんをじとっと睨みつつ答える。
 暇があればバトルの研究してさ、隣に居る私なんかどうでも良くてタブレットとそれに入るロトムさえ居ればダンデくんは満足なんだもんね。ふーんだ。

 こうなったら私も推しの動画を見てやる。この数ヶ月で私の推しはどんと増えたのだから。誰かさんのお陰でね。
 スマホで動画アプリを開きどれを見ようかと選んでいるとスッとスマホが抜き取られる。

「何よ」
「皆って誰だ?」
「え?」
「オレの事、誰に相談したんだ」
「えっと、ホップくんとー、ソニアちゃんとー、あとキバナさんとかルリナさんとか!なんだかんだ一番聞いてくれたのはキバナさんかも」
「へえ、そうか」

 聞いてきたくせに反応はそれだけなのかとダンデくんを見ると、あれ、ちょっとだけ眉間にシワが。あれ、あれれ。これは、もしかしてもしかするのだろうか。

「え、何?もしかしてダンデくん」
「なんだ」
「嫉妬、……してくれたの?」

 ダメだ、ニヤニヤするのを抑えられない。この時をずっと待っていたのだ。顔が緩みまくってしまう。ダンデくんが無言のまま私の顔を鷲掴んで来たけれどそれでもぐふぐふとした気持ち悪い笑いが止まらない。
 何、ダンデくん私のこと大好きなんじゃ〜ん!

「気持ち悪い声を上げないでくれるか」
「え〜?だってダンデくんが〜」
「……逆に、嫉妬してないとでも思ったのか?」
「え?」

 視界を覆っていたダンデくんの掌が下がり、私のほっぺを摘んでくる。中々痛いけれど、少しだけ瞳孔が小さくなり爛々とした目で見てくるダンデくんは、もしかして今までも?

 驚いて何も言えない私にダンデくんはふうとため息をつき、ほっぺは摘んだそのままもう片方の手で私のスマホをスルスルと操作する。
 暫くしてほらと手に戻されたスマホは特に変わりは、……ん?

「えっあれ?チャンネル登録外されてる……あれ、写真も消えてるんだけど!?全部無い!!」

 流石にこれは見逃せないとジロリとダンデくんを睨みあげる。それに「オレは何も知らないぜ」と嘯きタブレットに視線を戻すダンデくん。
 じゃあ誰がやったのよと腕を叩いたり引っ張ったりを繰り返す。が、微動だにしない。この為に鍛えてるとでも言うの?

「ねえ!ダンデくんとの写真も消えちゃったんだよ!?」
「これからまた撮って行けばいいだろう」
「そういう問題じゃない〜〜!!」

 私はこの日、ダンデくんは表に出さずに嫉妬を募らせるタイプでそれが爆発すると自分が関連していようと容赦無い事を知った。
 二度と嫉妬してもらおうだなんて思わない。そして、私の多岐に渡る推し活生活は終了した。




(写真は有能なロトムがクラウドに上げてます)


2022/06/02




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