「オレをこんな使い方するの、キミくらいだぜ」

「オレをこんな使い方するの、キミくらいだぜ」
「え?何か言った?」
「いや?」
「あっ!次こっちね!」
「はいはい」

 ブツブツと丸聞こえの文句には聞こえないふりをしてダンデくんの腕を引っ張り次の店へと向かう。
 時刻は夕方。朝から商店街や商業施設を渡り歩き、一度荷物を置きに帰宅したにも関わらず荷物持ちをお願いしたダンデくんの両腕は大小様々なショッピングバッグでいっぱいになっている。

 仕事の関係でしばらくの間シュートシティに居を構える事になったのはつい数週間前。突然決まったものだから慌てて不動産屋を駆け回り、少しだけダンデくんの力(と書いて権力と読む)も借りてなんとか気に入った部屋を見つけることができた。
 そして今日、今後の生活に必要なものを纏めて買いに来ているのだ。

 一人暮らしとはいえかなりの量になる事は想定できていたので空いていれば嬉しいなの軽い気持ちでダンデくんに荷物持ちを打診するとあっさりと『いいぜ』とだけ返事が来たのはつい昨夜のこと。案外オーナー業は時間が取れるのかもしれない。

「えーっと、あとは……あ、これ買ったっけ」
「さっきの店で買ってたぞ。キミ、メモくらい作ったらどうだ」
「いや〜、イケるかなって」
「はあ」

 生まれてからウン十年と聞き続けてきたため息に、流石に今は疲れも混じっている。そりゃそうだ、いくらダンデくんが体を鍛えるのが趣味とはいえ今日一日中食器だったり洗剤だったりと重い物を持たされているのだ。
 でも納得の上で着いてきてくれたんだし、とかも思ったり。

「今日はこのくらいにしておこうかな」
「全部揃ったのか?」
「まだだけど……、ダンデくんも疲れたでしょ?」
「まあ疲れてないといえば嘘になるが」

 「身体が鈍っているな」と渋い顔をして自己分析をするダンデくん。オーナーになってから事務仕事が増え、稀にだが私にまでパソコンソフトの使い方について質問される様になった。
 今までとは違う仕事環境になると、ダンデくんでも中々思うように時間が取れないんだと思考し、ちょっとだけこの先の生活がブルーになる。頑張らないとなあ。

「だがこの先は暫く休みが取れないかもしれない」
「そうなの?よく今日来れたね。……もしかして無理してくれた?」
「キミは余計な事は考えなくていい」
「……」

 は〜?と出そうになった苛立ちの声を飲み込む。ここで楯突いても無駄な事は分かりきっているのだから。やっぱりオーナーになっても忙しいんじゃないか。
 本ッ当に自己犠牲の精神がずば抜けていらっしゃる事で。別にちょ〜っと生まれが近くて育ちが一緒だっただけの同郷の私の為にそこまでしなくていいのに。

「ほら、次の店はどこだ?」
「もういいってば」
「だが荷物持ちが居ないと中々大変だろう」
「別に。ダンデくん以外に頼めば良い話でしょ?」
「は?」

 首を傾げるフリをしてそっぽを向く。今日だって最適なのが筋肉があるからダンデくんかなって思っただけで、断られた時の事も考えてはいたのだ。

「オレ以外を買い物に付き合わせるつもりか?一体誰を?正直、優柔不断で店を梯子し倒すキミの買い物に付き合えるやつなんて早々居ないぜ。もう少し自分がどれだけ迷惑を掛けているのかを」
「も〜!うるさいな!ホップくんだよ!あとマサルくん!二人とも私の言うことは聞いてくれるから!」
「……キミ、それは……。……とにかく、普段の自分を見つめ直せばいい」
「は〜〜??」

 ああ、ほら。あまりにもダンデくんが煽ってくるから我慢できなくなってしまった。
 いい大人が言い争って何をしているのかとは思うのだが、昔から馴染みきったこれを止めることが出来ない。

「大体迷惑かけてるって何!?私ちゃんと聞いたじゃん!かなり重労働になるよって!」
「昨日の、それも夜にな」
「それはっそうだけど……!でも『いいぜ』って二つ返事して来たのはそっちでしょ!?」
「あそこでオレが断ったらキミ、今頃一人で今日買ったものの半分も買えずに泣いてるぜ」
「だから断られたら!」
「ホップもマサルも、キミが思うほど暇じゃない」
「…………それはそうかもだけど」

 目の前のダンデくんを打ち倒した少年はそのままチャンピオンに、そのライバルでダンデくんの弟は博士見習いに。まあ確かに、今までの様に突然時間は取れないのかもしれない。
 言い返せなくなった私にまたため息を吐くダンデくんは踵を返して何処かへ行こうとする。のを慌てて腕を掴み静止する。

「ど、どこ行くの!?」
「何処って、だから次の店に」
「もう今日はいいんだってば!」
「まだそんな事言ってるのか?早めに生活基盤は整えた方が良いだろう」
「……それも、そうなんだけど」

 ここまで口喧嘩の様な事をしておいて、今更口にするのも恥ずかしい、というか絶対顔を顰められるのが分かっている事を説明するのが、心底嫌だ。
 だが、言わなければならない。

「……一旦帰って買ったもの整理しないと、あと何がいるか分かんない」
「…………、キミは、本当に」

 馬鹿なのかという声が言外に聞こえる。きっと周りに人気が無ければ盛大に舌打ちでもされていただろう。
 家に帰ったら流石にメモを作ろうと思いながら今更すぎるとも思うし、実際ダンデくんはそう怒ってくるだろうと予想できるし、既に気分は萎え萎えだ。

 さっさと部屋を完成させて、近いうちにダンデくんの機嫌を取るためスコーンでも焼いてあげなきゃな。ホップくんやマサルくんにも声をかけて、勿論ソニアにも。
 明るい未来を想像しながら、帰ったらお説教される事実から目を逸らし、帰路に着く。

 家を出て一人で暮らすっていうのは大変な事だなあ。





2022/07/28


(このダンデさんは結構夢主に当たり強めなんですけど愛故なので…アニポケ見てたら気安い関係の夢主が書きたくなりました)
(あとホップくんとマサルくんが夢主の言う事を聞くってのはお察しの通りちょっと夢主の我が強いので年功序列方式です)




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