ダンデくんって友達少ないじゃん?

*幼馴染で既に付き合ってる設定







「ダンデくんって友達少ないじゃん?」
「なんだ、藪から棒に……」

 リザードンのアゴを撫でるダンデくんが怪訝そうな顔で見てくる。そんな顔しててもカッコいいんだから、本当嫌になるな。

「否定はしないんだね」
「まあ、多い方だとは言えないからな」
「うんうん」

 私が思い当たる数人の名前を上げ、他にはいるかと聞く。返ってきたのは無言で、つまり、そういう事。

「なんか意外だよね、チャンピオン様なのに」
「……別に、広く浅くよりは狭く深くの方がいいだろう。それなりの肩書きを持っているなら余計にな」
「流石チャンピオン様だ」
「それ」

 視線を感じ顔を上げる。少しだけ機嫌が悪そうな顔。表舞台では決して見せない顔。

「それ?」
「……その『チャンピオン様』って、やめてくれないか」
「なんで?」
「分かるだろ」

 チャンピオン様はチャンピオン様でしょ、と動きかけた口を止める。あ、これ。
 機嫌が悪い顔じゃなくて、寂しい顔だ。

「ふふ、ごめんなさーい」
「……謝れとは言ってないぜ」
「そこまで謝罪の気持ちは入ってないから気にしないでいいよ」
「キミなあ」

 ケラケラ笑う私にため息を吐きながら、それでもうっすら口角が上がっているのを確認する。

「ダンデくんのこと、理解してくれる友達がもっと増えるといいね」

 あ、口角が下がった。

「さっきから、キミは何が言いたいんだ?」
「んー?」

 人間、友達と呼べるものが多ければ多いほど人生は豊かになる。本当かは知らないけど、スクール時代はよく聞かされたものだ。

 ダンデくんはガラルの中でも一番の田舎町で生まれ、関わる人間が少なかった。それは私もなんだけど、でも私はスクールに通い、一応青春というものを経験している。未だに連絡を取り合う友達も、多いとは言えないけれどちゃんと居るのだ。
 ダンデくんはそれを経験せず、ポケモンと出会い、いきなりチャンピオンになって。私より遥かに多い人間と関わっているけれど、休日に誰かと遊んだと聞かされたのは、十年経っても両手で足りるほどの回数で。

 もしダンデくんがポケモンに、ヒトカゲに出会わず、ずっとハロンに居て、私と同じようにスクールに通っていたら。
 きっとそのダンデくんは、今よりもっと友達が多いんだろうなって。

 ──側に置く人間も、変わっていたのかなって。

「んーー」
「煮え切らない返事だな」
「……ダンデくんがね」
「ああ」
「ダンデくんの友達が少なくてよかったなって」
「はあ?」
「ふふ、ごめんなさい!」

 ダンデくんの友達が少ないことを喜んでごめんなさい。
 ダンデくんが側に置く人間の選択肢が無かったことを喜んでごめんなさい。

 ダンデくんを独占しちゃって、ごめんなさい!


****


「私、ダンデくんの友達になりたかったのかも」
「じゃあなるか?」
「えっ」
「キミとオレは今からただの友達に」
「ヤダヤダ!友達になりたくない!」
「だったら変な事を考えるのはやめた方がいいぜ」
「……はーい」
「ちなみに、だが」
「うん?」
「オレは男女の友情は成立しないと考えるタイプだ」
「へー……、えっ!?」
「だからまあ、キミと友達になったところで、だな」
「え、ソニアは!?」
「は?」
「もしかしてソニアのことも!?」
「キミはバカなのか?ソニアは幼馴染だろう」
「でも私も元は幼馴染……」
「……キミは、最初から」
「!!!」
「……」
「最初から!何!?」
「……。もういいだろう!この話は終わりだ!」
「えー!?私バカだから言ってくれないと分かんない!!」
「……」
「……」
「……」
「……、ふふ。好きだよ、ダンデくん」
「……そうか」



(空気を読めるポケモン、リザードン)(ずっと見守ってた)
(久々に100話を見た記念(記念とは))

2023/03/26




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