ポッキーゲーム
「ダンデくん、ん」
「な、なんですか」
「わはるれしょ?(分かるでしょ?)」
今私は、今日の日付の形にあやかり今日が記念日だというお菓子を一本口に咥えて、休憩中であるダンデくんに迫っているところだ。
「……、………」
「……………」
どうやら意図は伝わっている様で私が咥えている反対側でダンデくんは、アワアワとどうしようか悩んでいる。顔を真っ赤にしてかわいい。
ダンデくんが意を決して椅子から立ち上がり、目を瞑って反対側を咥えようとしたところで少し距離をとり一人でサクサクと食べ進める。
「……っ、あれ、」
「ふふふ、時間切れでーす」
「な、」
信じられないといった顔をこちらに向け、少しムッとした様子でドスンと椅子に座る。もう少し揶揄ってやろう。
「ダンデくん、そんなにキスしたかったの?」
「なっ!ち、違いますよ!オレは、」
「でも、咥えようとしたよね?」
「うっ、それは、」
ついに耳まで真っ赤にしてうっすらと目に涙まで浮かべ始めてしまった。デリケートな年齢だし、ちょっと揶揄いすぎちゃったかな。
「ごめん、ごめん。ほら、残りはあげるから。好きな子に挑戦して来なさい」
「……もぐ、」
一本咥えさせ、残りが入った袋をデスクに置く。休憩中失礼しました〜、とドアノブに手をかけ部屋を出ようとした時。肩を後ろからグイと引かれ振り向かされる。
──ちゅ。
「っ!?」
「っ、………。……貴女のせいだ。休憩時間、延ばしといてくださいね」
「は、はぁ……」
バタンと今まさに私が出ようとしていたドアが目の前で閉まる。……私の顔も先程までのダンデくんと同じくらい真っ赤になっているだろう。これは暫くここで落ち着くまで待機しなければならない。幸い休憩時間はまだまだある。
ああ、でもダンデくんの休憩時間が延びることとそれに合わせて午後の予定がずれ込む事を伝えに行かなければ。
……奇しくも、私もダンデくんもファーストキスは甘いチョコレート味になったのだった。
改稿:2021/08/18