別れ話
※暗い話注意
なんとなく、終わりが近づいているのに気付いていた。だから自分から終止符を打った。
「そっ……か、うん。分かった」
彼女が意外にも少し驚いた顔をした、その事を嬉しく思うがたった今告げた事に了承されたのだ。オレたちに未来は無いんだ。
「…なんで、こうなっちゃったんだろうね」
夜空を詰め込んだ様な漆黒の大きな瞳をへにょりと瞼で隠しながら耳に髪を掛ける。彼女が泣きそうな時の癖だ。
「なんでなんだろうな。嫌い、会いたくないって訳じゃないんだ。ただ、此の儘だとお互い駄目になると思う」
「…うん、私も思ってた。言い出させちゃってごめんね」
俯き手持ち無沙汰にコーヒーを、いつかに二人で選んだティースプーンで掻き混ぜている。あの頃は一生を彼女と過ごすと思っていたし、なんなら今だって出来る事ならそうしたい。
「いや、いいんだ。お互いこんな気持ちのままじゃ時間を無駄にするだけだしな。…幸せになってくれよな」
コーヒーを掻き混ぜていた手を止め側に置いていた荷物を手に取りソファを立つ。そのまま一言も発さずに廊下へ続くドアへ向かうのをこちらも無言で見送る。ああ、此の儘終わってしまうのか。思っていたより気落ちしている自分を蔑み笑っているとあのね、と彼女が振り返る。
「…好きだって気持ちだけで繋ぎ止められると思ってた。途中でそれは違うってわかってたけどさ、でも私たちはそれでいいって、思っちゃったんだ」
どの感情から来るかはオレにはもう知る術もない涙を堪えながら、震える手を背に隠し何処となく疲れきった声で言い放つ。
「幸せになんか、なってやらないんだから」
バタンとドアが閉まり彼女の姿が見えなくなる。彼女の幸せを願うことすら否定されたオレはどうすれば良かったのだろうか。
あの時、あの場所で出会わなければきっとお前は幸せな時間を過ごしていたのかもな。