ケンカップルがジャンケンする話
「なんで!もう一回!!」
「はいはい」
ソファに寝転んでスマホを触っていたナナシが突然起き上がり、三回勝負だとジャンケンを仕掛けて来て既にはや十回。彼女には悪いがすべてオレが勝ち越している。
「また負けたっ!なんで!」
「ふふ、キミの事ならなんでもわかるんだ」
「今そういうのいらない」
「……」
「納得いかない!次こそ勝つ!私はパーを出します!」
「じゃあオレはグーを出そう」
──ジャンケン、ポン!
「は?何正直にグー出してるのよ!」
「ふふっ、オレは嘘はつかないぜ?」
「も〜〜〜!!」
もういいもん、とソファにドスッと寝転ぶナナシ。だいぶご機嫌斜めだ。
「怒らないでくれ。それにしてもなんで突然ジャンケンだったんだ?」
「……ネット記事でアンタが『何事においても勝負に負けることがない』って称賛されてたから。運が絡むのなら勝てると思ったの!」
勝てませんでしたけどねとユキハミのクッションに顔を埋めイライラと足を動かす。仕方ない、手の内を明かしてやるか。
「ジャンケンは運じゃないぞ」
「は?」
「直前の手の動きで何を出すかわかるんだ」
「は〜〜〜〜〜?何ソレつまり後出しじゃん!卑怯者っ!」
「うわっ、クッションを投げるな!それに卑怯者じゃない、実力だ!」
「うるさい!うるさい!二度とアンタとジャンケンなんかしないわよ!」
「それは残念だ」
グルグルと獣のようにこちらを睨みつけられる。ここまで怒っているのを見たのは久しぶりだ。
「あれ、でも今まで私何回かジャンケンで勝ってるよね?」
「ああ、まあそれは、」
「まさか」
「わざと、だな」
「帰る!」
ドスドス足音を立て廊下へ向かうナナシ。まったく。
「キミの家はもうここになった筈だが?」
「………」
バタンと大きい音で寝室の扉が閉まる。この家の寝室は一つしかないんだから夜までには機嫌を治してくれよな、かわいいチョロネコちゃん。