はじめてーの
「なあ、キスってした事あるか?」
「えっ」
牧場でウールーたちを眺めるというなんとも穏やかな時間に突然ホップくんが爆弾を落として来た。
「き、キスって…」
「唇と唇をくっ付けるやつ。あるのか?」
「な、無いよ…」
だよなあ、と地面にホップくんが寝転ぶ。
今日は何に影響されたのだろうか。いつも巻き込まれる私の身になって欲しい。さっきから心臓が痛いくらい脈打っている。
必死に落ち着かせようと呼吸を整えていると不意に後ろから腕を引っ張られ振り向かされる。目の前にはいつの間にか起き上がっていたホップくんの顔が睫毛が触れるくらい近い距離にあって。
──ちゅ
「っ!?」
「ぁ、」
わ、悪いとホップくんが顔を赤くし離れる。…腕は掴まれたまま。私はうんともすんとも答えられず、顔を俯かせる事しかできない。心臓が痛い。今のって。
私の腕を掴む手に一瞬力が入り離れて行ったかと思うと今度は両肩に彼の手が置かれる。
「な、もうちょっとだけ、」
「っ、ぇ」
近づいて来るホップくんの顔。
──ちゅう
あ、あれ?長くない?さっきみたいに軽く触れるだけかと思っていたのに暫くちうちうと吸われる感覚が続く。
ギュッと瞑ってしまっていた目をそっと開ける、とパチリとホップくんと目が合う。もしかして、ずっと見られてた…?
ちゅっと可愛らしい音を立てて離れていくホップくん、の唇。
「……」
「……」
お互い顔を赤くして俯く。ど、どうしてこんな事に。ほんの十分前までは至って普通の、
「なあ」
「ひゃ、い」
コツっとホップくんがオデコを私のオデコにくっ付けながら話しかけてくる。
「ふふ、なんだよその声。…なあ、またしてもいいか」
キス、と言いながら指でそっと唇に触れられる。展開の早さに着いていけない私は顔を真っ赤にしながら頷く事しか出来なかった。
聞こえてくる心臓の音は私のものか、それとも。