ダンデくんは声が大きい人だ。元チャンピオンとして、今ではタワーオーナーとして表舞台に立つ事が多いのもあるのだろうが、彼の幼馴染によると小さい頃からずっと声が大きいらしい。
 ぶっちゃけてしまうと私もダンデくんと話している時、偶に耳が痛くなる事がある。物理的に。

 そんなダンデくんと私はなんだかんだの出会いがあり、今では彼の都合が良い時に食事に行く仲だ。友達以上恋人未満。まさにそんな関係だと思う。
 そこには私の一方通行の想いが混ざっているけど。

 所謂結婚適齢期を目前に控えた私の周りは続々と恋人と同棲を始めただの、婚約をしただのと言った報告を聞くことが多くなった。勿論私もそういう相手は欲しいし、そろそろ親の目が痛くなって来た。

 なので私は今日、ダンデくんとのこの曖昧な関係に終止符を打つ事にしたのだ。
 つまり、私の想いを伝える『告白』という人生のうち何度有るか無いかといったイベント。それをたった今、終えた。これで『これからも友達のままで、さよならバイバイ私の恋心』とする予定だったのだ。

「えっ、なんて?」
「だ、だから!……オレも、キミのことが好きだ」

 照れているのか少しだけ顔を赤くして視線を斜め下に逸らすダンデくん。ここで冒頭の私の話を思い出して欲しい。
 彼はとにかく声が大きい人だ。こうして二人で食事をしている時でさえ、周りの人達が大体の話の内容を把握してしまえるくらいに。

 それなのに今のダンデくんは、思わず聞き返してしまうくらい小さな声でボソボソと話す。もしかしたら気を遣って、思ってもいない事を言ってくれたのかもしれない。

「……あの、普通に断ってくれて大丈夫だよ」
「なぜだ!?……オレだってずっと好きなんだ、キミのこと。その、……恋愛感情として」
「うーーん……」

 私の事をお世辞でも好きだと言ってくれるのは嬉しいけど、余りにも普段の彼と違うその様子に苦笑いを浮かべてしまう。

「じゃあ何でそんなに小声で話すの?さっきまでいつも通りだったのに」
「それは……」

 ただでさえ珍しいその光景に、吃りながら頭を掻くという動作もプラスされる。本当に今日はどうしたのだろうか。やっぱりこんな事、言わなければよかったのかもしれない。

「その……。キミへの想いを聞いて欲しいのはキミだけだから」
「え」
「……なあ、今日からオレたちは恋人って事で良いんだよな?」
「え?」

 違うのか、と眉を下げ悲しそうに聞いてくる。それに対して私と来たら「え」しか発音する事が出来ない。だって……え?

「えっ。ほ、本当に、私の事好きでいらっしゃるんでございますか……?」
「はは!なんだその話し方。……ああ、キミの、……ナナシの事が好きだ」
「あわわわ」

 まさかダンデくんも私の事を好きで居てくれているだなんて考えてもみなかった。漸くその事を理解し始めた私の頭はショート寸前、いや真っ黒い煙を上げてしまっているかもしれない。

「この後何処かで飲み直さないか?そうだな……、オレの家とか」

 そんな突然、まだ早いよといった言葉が頭に浮かんでは消える。何も発さずポカンとしている私を見てダンデくんがくすりと笑う。心なしかいつもより色っぽさがぐーんと上がっているような。

「キミにオレの想いは全く届いていなかった様だからな。しっかり伝えさせてくれ」

 二人きりでな、といつの間にかテーブルの上で繋がれていた手の甲を親指でツッと撫でながら静かに微笑むダンデくん。アレ、ダンデくんってこんな人だったっけ……?

 それからと言うもの。
 次の週には知らない間にセッティングされていた両家顔合わせが行われ、気が付けばガラル中の人間に『ダンデには結婚を前提とした恋人が居る』と知られる様になっていた。

 驚きのスピード感。着いて行けていないのはガラルでただ一人、私だけだった。




改稿:2021/09/04




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