キバナさまの所為でお嫁に行けません(泣)
*一万打リクエスト「ラッキースケベ」
リクエストありがとうございました!
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私は数ヶ月前からかねてより人生の目標としていたナックルジムの事務職として働いている。本当はジムトレーナーになりたかったんだけど残念ながら私にはバトルの才能が無く。シングルバトルでもてんやわんやなのにダブルバトルなんてもっての外だ。
人生の目標と大きく出たのはズバリ、私がキバナさまのファンだからだ。キバナさまに近づきたい。その下心満載の一心で私はバトルを早々に諦め、名だたる名門スクールへ通い、数々の試験と面接を潜り抜け、今この事務室に居るのだ。
最終面接の時に初めて対面したキバナさまにもドギマギせずに用意していた応えをつらつらと話せた私は本当によくやったと思う。
先輩のご指導の元、少しずつだが業務を覚えられる様になってきて、時々キバナさまも顔を出してくれて。こんなに幸福度の高い職場は他にあるだろうか、いや無い。
お優しいキバナさまはジムトレーナーだけでは無く事務職員たちにも平等に差し入れをくださる。先日のチョコレートも美味しかった。
ただ、そんな幸せな職場でも最近困った事がある。
意図せずにキバナさまと接触してしまうのだ。
いや、部署が違うとはいえ同じ職場で働いてるならそりゃ会話くらいの接触はするだろうと思われたかもしれない。違うんです。ここでの接触と言うのは文字通りの接触。つまり、身体と身体が触れ合う事を指しているのです。
例えば先週のこと。
リョウタさんにお渡しする書類があった為、事務室からジムトレーナー達が普段過ごしている待機室まで歩いていた時のことだ。
この時は一人だった事もあり、迷わない様に地図を見ながら歩いていた。その為足元をよく見れていなかったのだ。
普通に歩いていて、足を踏み出した。しかしその足を踏み出した先の地面が粘着液に塗れていて、それはもう盛大に滑ったのだ。まあそれくらいなら一人で恥ずかしい思いをしただけなのだが、この粘着液の発生源に問題があった。
キバナさまのヌメルゴンだったのだ。
珍しくキバナさまと喧嘩したヌメルゴンは勝手に特訓室を出てしまった。それに遅れて気付いたキバナさまが追って特訓室を出た。そこに私が見事なスライディングで滑り込んだのだ。
いくらしっかりと身体を鍛えられているキバナさまでも突然のスライディングには敵わなかったようで、一緒に粘着液塗れの床に倒れることとなった。その体勢がまた問題なのだ。
キバナさまの大きい手が運悪く私のささやかな胸の膨らみの上に置かれ、さらにはキバナ様の膝が私の足の間に来る体勢になり身動きが取れなくなってしまった。慌てたキバナさまが「悪りぃ!」と謝りながら退こうとしてくださった。だが、あのキバナさまでも粘着液には敵わず滑られてしまい、そのまま私のおでこに、その、き、キスをされてしまったのだ。
あまりの出来事にいっぱいいっぱになった私は思わず叫んでしまい、その声に飛んで来てくださったリョウタさんに助けられた次第だ。
つい一昨日にもこんな事があった。
今はジムチャレンジは開催されていない期間なので急ぎの業務は無い。その為定時よりも早く切り上げる事も多い。一昨日もそれに倣って三十分程早く終わった。
私は先週のヌメヌメおでこキッス事件を二度と引き起こさない様に早くジム内の構造を覚えようと一人で歩いていたのだ。そして丁度バトルコート近くの通路を歩いていた時。
バトルコートに面している両開きのドアが突然開き大量の水を被ってしまったのだ。
普通なら客席まで技が届かないのと同じ技術で、バトルコートと通路を繋ぐドアも電気で制御されている筈なのだ。だが丁度その直前に、キバナさまのフライゴンによる砂嵐で壊れてしまっていたらしい。
バトルコートを使用していたキバナさまとレナさんが慌ててこっちに駆け寄ってきてくださったが、服は勿論下着までびちょびちょ、手に持っていたジャケットも鞄もその中身までも全部濡れてしまった私は訳もわからず泣いてしまった。
レナさんが控室にタオルを取りに行き、キバナさまが私を落ち着かせる様に慰めるという、ただの新人事務員如きがジムリーダーとトレーナーをこき使わせる事態になり、情け無さからますます涙を止める事が出来ない。
蹲ったまま動けない私をそれでもキバナさまは根気強く頭を撫でたり、背中を摩ったりしてくださった。そのお陰で徐々に落ち着き顔を上げる。
「ありがとうございます」と伝えるとホッとした表情をされたキバナさま。でもその視線が僅かに私の顔よりも下に動いたのが分かった。
そこで私は気付いてしまったのだ。事務員は基本スーツを着用し、業務にあたる。ジャケットを脱いだ私は白いワイシャツ姿で、しかもびっしょり濡れてしまっていて。恐る恐る視線を胸元に下げる。
ばっちりと透けていた。私のささやかな胸を守る下着が。
慌てて胸を腕で隠しキバナさまを見上げる。そこには顔を赤くして、あからさまに視線を逸らした姿が。私は羞恥により思わず叫んでしまいタオルを掻き集めてきたレナさんによってシャワー室へ連れていかれることになる。
この日はこれでは終わらない。
レナさんによって案内されたシャワー室で軽く身体を温め、用意してもらったレンタル用のユニフォームを着る。下着は水が滴る程濡れてしまっていてもう一度身につけるのは戸惑われたので、帰るまでの間だけだと我慢する事にした。どうせ胸も大きく無いしね、ハハ。
憧れのジムトレーナーのユニフォームをこんな形で、しかもノーブラノーパンで着る事になると誰が予想できただろうか。嬉しいが全く嬉しく無い。
濡れた服を抱えてシャワー室を出る。ドアを開けると対面の廊下の壁にキバナさまがもたれ掛かって立っていた。シャワーの順番を待っていたのかと譲ろうとするとバツが悪そうに話しかけられる。
「さっきは悪かった。申し訳ない」
「い、いえ!そんな!頭を上げてください」
「オマエ、この間もヌメルゴンにやられた奴だよな」
本当に悪い、と頭を上げようとしないので渋々肩に手をやり上げてくださいと促す。緊張で手が震えたのは気づかれていません様に。
ゆっくりと顔を上げたキバナさまが少し驚いた顔をして、何故かパーカーを脱ぎ、私の肩に掛けてくださった。
「これ、貸すから着てなよ。……あー、本当に悪りぃ、何から何まで」
「……?ありがとう、ございます?」
レナさんが荷物見てくれているとのことなので控室へ向かう。片手で濡れた服を抱え、もう片方の手で肩にかかったキバナさまのパーカーが落ちない様に掴む。そう、このパーカーの所為で濡れた服を持つ手がいっぱいいっぱいになっていたのだ。
「あ、おい!何か落ちた、ぞ……!?」
「はい?……っ!!!!!」
キバナさまが拾って手に持っていたのは、つい先程まで私の大事な大事な場所を守ってくれていた、おパンツで。
声にならない悲鳴を上げながらキバナさまの手からパンツを奪い取り控室に駆け込む。驚いているレナさんから荷物を受け取って鞄の中に服を突っ込み、そのまま半泣きになりながら飛ぶように家に帰ったのだ。
結果的にこの日、私はキバナさまにブラジャーもパンツも知られることとなった。
そして今日。借りていたパーカーを洗濯し終えたのでキバナさまに返さなければならない。
今日は何も起こりません様にと願いながらキバナさまの執務室まで一歩一歩気をつけて歩く。時間をかけてやっと辿り着き、ドアをノックするが反応は無い。おかしいな、今特訓は入っていない筈だったんだけど。
扉の前で待とうかと考えていると、丁度通りがかったヒトミさんが話しかけてきてくれた。
「キバナさまに御用ですか?」
「あっはい!えっと、パーカーを」
「ああ、あの!キバナさまは書庫に居られると思いますよ」
「ありがとうございます」
ヒトミさんにペコリとお辞儀をして書庫へ向かう。確かここから二階下だった筈だ。大分覚えた地図を脳内で開きながら階段を下る。と、踊り場に本を数冊抱えたキバナさまを見つけた。
「あの!キバナさま、パーカーをっ、きゃあ!」
「うわっ!」
足を滑らせ階段を滑り落ちる。下でキバナさまが支えようとしてくださったが本を抱えておられた事もありぐるりと回転し二人して踊り場に倒れ込む。
どうしてこうなるのと半泣きで顔を上げる。キバナ様が下敷きになってくださったお陰で身体は痛くないがキバナさまは大丈夫だろう、か。
「へ?」
目の前にあるのはキバナさまの顔、ではなく紺色の布地が二つの方向に分かれているもの。つまり、足の付け根の部分で。
いまわたしはどこにかおをうめていた?
頭がパニックを起こすが何故か冷静な私が問いかけてくる。「今キバナさまの視界に入っているものは?ヒントはピンク色だよ」。ピンクは今日の下着の色だ。心なしか、足の間になんだか生暖かい風を感じる。
ゆっくりと身体を起こす。振り返り、お尻越しに見えたのは、顔を赤くし鼻血を出しているキバナさまのお顔。
「よ、ヨォ!……今日はピンクなんだな!」
「き」
「き?」
「きゃああああああああああああ!!!!!!!」
私の絶叫がジム内に響き渡り、キバナさまはリョウタさんに、私はレナさんとヒトミさんに引き取られるのであった。
キバナさまの所為で私もうお嫁に行けません!(泣)
(シャワーの後パーカーを貸してくれたのはポッチが見えていたからです!)