煉獄さんに首を絞められる話
*死、グロ表現有り
*夢主が鬼設定
周りからパチパチと木々が燃え弾ける音が絶えず鳴っている。体力も尽き、傷付いた身体を再生する事すら出来ない私は、先の鬼殺隊達との戦闘で抉られた地面に寝転びながら黒々とした煙を眺めることしかできない。間も無く陽が昇る。私は、この人生で何をしたかったんだろうな。
カチャカチャと刀の音を鳴らしながら誰かが近付いてくる。ああ、煙の中でも私には分かる。この匂いはきっと。
「……ナナシ」
「ふふ。……ご機嫌いかがですか、煉獄さん」
視線だけを動かし、炎に照らされた炎柱様を見る。あーあ、あんまり今の私を見て欲しくないんだけどな。髪は勿論ぐちゃぐちゃだし、顔だって、血と土と煤で汚い事だろう。首から下はもう感覚が無いから分からない。手足の一本二本は無いんじゃないかな。
どうして彼がここに、なんて。
私を殺しに来たのだ。それが彼の責務に繋がる。
彼の右手に持たれている赫い刀は他の鬼達の血で赤黒く汚れている。もうすぐそこに私の血も追加される事だろう。ふふ、彼の刀を汚す事が出来るなんて、案外悪くないかも。
煉獄さんが私の身体を跨ぎカチャリと刀を首元に充てがう。炎を背負い佇む彼は本当にかっこいい。何を考えているのか、何処を見ているのか分からない日輪の様な瞳が炎に照らされ煌めいている。綺麗な瞳、羨ましいな。
抵抗する力などとっくに無い私は、ただただ彼を見つめ微笑む。早く私の首を切り落として。早く目障りな鬼を殺して。彼に手を掛けてもらえるなんて、最期の最期まで彼を見れるなんて、私は幸せ者だ。
「煉獄さん?」
「……」
待てども引かれない首元の刀。名前を呼んでも彼は無言のまま。少しずつ空が明るくなって来た。あと少しだというのに、彼は私を殺してくれないのか。せめて腕を動かせたら、自分で刀を押し付けるのに。
「……殺してくれないんですか?」
「……」
「わたし、煉獄さんに、ころされたい」
ああ、話すのもしんどくなって来た。太陽なんか昇るまでもなく消えてしまうかも。もしかしてもう消えてるのかな。何も分からないや。
首元から刀が離れる。ああやっと。自然と閉じてしまう瞼。やだな、最期まで彼を見ていたいのに。
彼が刀を振りかぶる気配。空気が動いたのと同時に刀がすぐ側の地面に突き刺さる音。……どうして。
そっと瞼を開くと地面に膝をついて屈み、こちらに両の手を伸ばす煉獄さん。一体どうしたのかとほぼ働かない頭で考えていると彼の大きい手が、節くれだった太い指が、私の首に巻きついて来る。
「ナナシ」
「……ぅ、」
ゆっくりと力が入っていく。徐々に塞がれる気道。ああ、息ができなくなる。苦しい。いつかの記憶がフラッシュバックする。そういえば、刀なんかで一瞬で切り落とすのではなく貴方の手でゆっくりと殺して欲しいと言ったことがあったっけ。
ずっと前の、戦闘中のただの戯言を覚えているなんて、それを叶えてくれるなんて。本当に貴方は。
「……っ、ふふ……っ、ぐぅ」
思わず溢れてしまった笑みすら許さないとばかりに力が強くなっていく。ああ、もう、ほんとうに。かれが、ぼやけて。あなたは、どんなかおをしているの。もう、なにも。
「ナナシ」
「来世では」
ふふ、れんごくさん、なんていってるの。
れんごくさん、だいすきよ。
ころしてくれて、ありがとう。
****
刀ではなく、自分の手で彼女を、鬼を殺した。態々とどめを刺さなくても、あのまま彼女は息絶えていたのだろう。それでも、俺がやらなければならないと思った。
いつかの戦闘で彼女が楽しそうに話していた理想の死に際。それを叶えてやりたかった。
未だに彼女の首元から離すことの出来ないでいる俺の手。元々既に低くなっていた体温が段々と無くなっていく。脈が止まっている。俺が殺したんだ。
涙を流し、ただ眠っているかの様なその顔をじっと見つめる。鬼のくせに、何度も俺に好いていると、鬼になり一生を共に過ごそうと告げてきた彼女。鬼殺隊員として間違っていたのかもしれないが、そんなくだらないやり取りが楽しく感じることもあった。
俺も君のことを、と言えればどんなに良かっただろう。
彼女の顔に流れている涙を指で拭い、瞼に口付ける。どうして俺達は鬼と人間として出会ってしまったのだろうか。せめて君が鬼になる前であれば。そんな考えるだけ無駄なたらればを考えながら身体を起こし立ち上がる。
地面に突き刺していた日輪刀を手に取り彼女の首に充てがう。鬼は、首を落とさなければならない。
両手で刀を持ち、体重を乗せて動かす。ザシュと肉を切る音、感覚と同時に彼女の首がゴトリと転がる。これで完全に、彼女はこの世から居なくなった。鬼が一人居なくなったのだ。
顔を上げ、燃え盛る炎よりも強く辺りを照らし始めた太陽を見上げる。まるで彼女が、元々存在などしていなかったかの様に消えていくのは、今の俺には見る事はできない。
ナナシ。俺も君のことを好いていた。
来世では、一緒になろう。
(来世はキメ学世界線でハッピーエンドです!🔥さんだけが記憶有りだったりしても楽しいね!お付き合いありがとうございました!)