ぬいぐるみ
「で、出来た……」
やばい、私は天才かもしれない。今私の手元にはユニフォームではない服を着たダンデのぬいぐるみがある。
スクールを卒業してから一切触れることが無かった裁縫セットを態々実家から持ち出し、指に穴を開けること何十、いや何百回。何週間と格闘した服がついに縫い上がった。
「雑誌、雑誌……」
参考資料として手元に置いておいた雑誌を手に取り見比べる。多少の差異はあるものの、ほぼ一緒だ。可愛い。可愛いよ、ダンデ……!
なるべく布も似た様な柄を選んだおかげで縫い目が粗くても許されるレベルだ。完璧だ。色んなお店をはしごした甲斐があった。
雑誌を開いてその上にぬいぐるみを乗せる。ふふ、可愛い。ちっちゃくなって出てきたみたい。
「もうキミは私の子供同然だよ……可愛い……っ」
ギュッと抱きしめてちゅっちゅとキスを送る。あ〜、可愛い。写真をパシャパシャと撮り、何枚か気に入ったものをSNSに上げる。深夜だというのに何人かがすぐに反応をくれた。ふふ、可愛いでしょ!私のダンデ!
「今度はお揃いのパジャマ作ってあげるからね〜♡」
今日はこの服のまま一緒に寝ようねとベッドに入り、抱きしめる。抱き枕、には少し小さいけど、そんなの関係ないくらい愛しい。手放したくない。
は〜、次はパジャマで、その次はあの時の衣装、あの雑誌のも捨てがたいなと考えている内に疲れから解放された私はぐっすり夢の中へと落ちて行った。
****
やあ、オレはダンデ!ガラル地方、無敵のチャンピオンだ!
突然だが、オレはここ何週間か不思議な夢を見ている。オレを掌に乗せられる程大きい女性が何か作業をしている夢。
その間オレは身動きを取ることが出来ない。おそらく人形かその類のものになっているのだろう。そして女性は間違いなくオレの服を作っている。
何度も身体中にメジャーが充てがわれ、巻かれを繰り返した。とても擽ったかった。
身体を無理に動かされながら着せられた試作品であろうものは布の端や縫い目がチクチクしてむず痒かったものだ。
『で、出来た……』
女性がオレを持ち上げながら呟く。先程着せられたこの服が完成品だった様だ。初めに比べるとオレの身体にピッタリとフィットし、見守るだけだったが彼女の成長を感じる。
雑誌をペラペラ捲り、開かれたページの上に乗せられる。ん?このページ、なんだか見覚えがあるな……。確か数ヶ月前の取材の時の。
『もうキミは私の子供同然だよ……可愛い……っ』
子供発言に衝撃を受けていると、再び持ち上げられる。かと思うとギュッと抱きしめられ、頭におそらくキスをされた。締め上げられ苦しい……が、顔に柔らかいものは当たるし唇の感触はするし、正直とてもそれどころじゃ無い。
頭がグルグルしたまま写真を撮られる。普段はあまり得意ではない撮影だが、そもそも動けないし表情も変わらない状態だ。よかった、本当によかった。
『今度はお揃いのパジャマ作ってあげるからね〜♡』
パ、パジャマをお揃いに……?よくキバナが言っている『オレさまのマホイップちゃんとオソロ♡』をキミはこのオレとしようとしているのか?
当然話すことなど出来ないオレは彼女に問うことも出来ず、抱かれながら場所を移動させられる。ここは……。
『今日はこの服のまま一緒に寝ようね』
は?待ってくれ、まさかキミ……!
拒否権など存在しないオレは彼女の腕の中に包まれたまま布団を掛けられる。モゾモゾと動いた彼女が調整した位置は、オレの顔に女性特有の柔らかいものが顔に押しつけられるもので。
──オレは翌朝、目が覚めるとパンツを洗った。