夜に電話する話

*夢主≠ゲーム主人公
*5章時空





「えぇ!?朔夜くん遊園地に行ってるの!?」
『行ってるというか、そこのステージで演奏する事になったんだ。今はそれに向けての練習中』

 よく話を聞いてくれ、と呆れた溜息が電話の向こうから聞こえる。だって、宮崎に行くとは聞いていたけどまさか遊園地に行っているだなんて。そんなの聞いていない。
「あれ、でもホテルのオープニングセレモニーでも演奏するんじゃなかったの?大忙し?」
『……いや、まあ。色々あったんだ。演奏はそのステージだけになった』
 色々、ねえ。話に聞くコンミスちゃんがまた何かやらかしたのかもしれない。そういう破天荒な所本当におもしろい。好きだ。いつか会ってみたいな。
 それにしても、遊園地。いいな、何年くらい行っていないだろう。……そうだ!

「ねえ、ステージがあるのはいつなの?」
『……まさか君』
「え〜?ちょっと聞いただけだもん」
 また溜息。まったく朔夜くんは。そんなに溜息ばっか吐いてると幸せが逃げちゃうよ。
 なんだかんだ言いながら紙を捲る音の後に朔夜くんが日程を教えてくれる。その前後は丁度バイトも何も入っていない。これは、行くしかない。
「宮崎って暑い?」
『そりゃまあ、そっちよりは大分暑い。……本当に来るつもりなのか?』
「ふふーん、どうでしょう!」
 通話は繋いだまま飛行機の値段を調べる。うーん、夏休みだから結構するなあ。あ、夜行バスもありかも。予約サイトを見に行くが残念ながら今からだと帰りの分しか取れなさそうだ。
『君が思っている様な遊園地では無いと思うぞ』
「そうなの?でも観覧車はあるよね」
 ホームページに載ってるよと伝えると、濁った返事を返される。朔夜くん、そんなに私に来てほしく無いのか……。まあ、行きますけどね。
 それに、演奏も遊園地も勿論楽しみだけど。
「朔夜くんに会いたいから行くんだよ?」
「は……、」
 沈黙の後に、溜息。でもこれは照れ隠しの溜息だ、私には分かる。喜んで貰えてるみたいで嬉しい。
 ニヤニヤ笑いながらスマホをタップする。よし。
「予約できた!」
「え」
「飛行機!あとは帰りの夜行バス!」
 価格比較サイトを見て、慎重に選ぶ。やっぱり、少し高くなるけど女性専用車がいいかな。前に友達が、近くのおじさんのイビキが煩くて地獄だったと言っていた。
 まずは会員登録をしようとメールアドレスを入力していると朔夜くんが話し出す。
『……帰りはバスに乗って行くか?』
「え、バスって……スタオケの?」
『ああ。先生に聞いてみないと分からないけど、多分大丈夫だろう』
 頑なにスタオケに関わるなと言っていた朔夜くんがまさかこんな提案してくれるだなんて。嬉しい提案だが、流石に朔夜くんと関係があるだけの部外者が同乗するのは不味いだろう。
「ううん。嬉しいけど、流石に自分でお金出すよ。ありがとう」
『……違う』
「え?」
『君が、心配だから。だから、その』
 お願いだからスタオケのバスに乗ってほしい、と朔夜くんの少し照れた声がスピーカー越しに耳に届く。
 きゅん。まさにそんな効果音と共に、ジワジワと顔が熱くなる。ほ、本当に通話相手は朔夜くんだよね……?久しぶりのデレに動揺して何も話せなくなる。
『良いって』
「へ……?」
『先生、許可してくれた』
 そんな、あっさり。器が大きすぎるだろう。事前に挨拶に……いや、もう宮崎に居るんだった。
 でも、本当にいいのだろうか。
『そんなに気にしなくて良い。一人や二人増えるくらいなんとも無いさ。メンバーも大丈夫だろう』
「……じゃあ、お言葉に甘えよっかな」
『ああ』
 そうと決まれば、差し入れもより良いものを渡さなければ。横浜の名物、と言っても星奏学院に練習に来てるならそんなに珍しくも無いか。

『君、くれぐれも変なことは言わないでくれよ?』
「変なこと?」
『……俺との関係とか』
 朔夜くんと私の関係?そんなの。
「妻です……♡」
『やめてくれ』
「ふふ、ごめんなさ〜い。幼馴染だってちゃんと言います〜!」
 でもいつかは……なんてね、えへへ。
 あ。時計を見るとすっかり十二時を過ぎてしまっている。名残惜しいがもう切らなくてはいけない。
「じゃあ朔夜くん、そろそろ」
『……でもいい』
「え?なんて、」
『だから!』

『……恋人、くらいは言ってもいい』

「っ!」
 おやすみ、と一方的に勢いよく通話を切られた。私は朔夜くんとのトーク画面に戻ったスマホを呆然と見つめることしか出来ない。え、い、今……。朔夜くん……!
『私は!!朔夜くんの彼女として!!!ご挨拶させて頂くね!!!!』
『早く寝てくれ』
『おやすみなさい!!!!!!』
 既読がすぐに付いたが返事は無い。おやすみと文字の入ったウサギのスタンプを送り、スマホを枕元に放る。

 ふふ、宮アに行くのが楽しみだ!




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