結婚してください!

「結婚してください!」
「いいぜ」
「エ°ッッッ!?!?」

 いつもの軽い調子で求婚すると帰って来たのはまさかのイエスで。いや、私の耳が都合よくノーをイエスに変換してしまっただけかもしれない。そうだ、そうに違いない。

「はは!なんだその声」
「すいません!地声です!聴き取れなかったのでもう一度お願いできますか!?」

 私の裏返った声に大声を上げて笑うダンデさんに、どうかもう一度だけと懇願をする。きっといつもの様にノーが帰って来るはず、帰って来るよね……?
 肝心なダンデさんはまだジワジワと笑いが治らない様子で、目尻にうっすら涙を溜めてこちらを見る。流し目かっこいい……。

「結婚したいんだろう?いいぜって言ったんだ」
「ッ、ゲホッ!ゴホッ!!!」

 今度は驚きで変な声が出る前に唾を飲み込むのに失敗して咽せてしまった。
 え、何。何が起こっているんだ。ダンデさん私と結婚してくれるってこと?あってる?突然どんな心境の変化があったんだ。
 激しく咳をする私にちょっと嫌そうに書類で顔を隠すダンデさん。ああ、私めの汚い細菌を飛ばしてしまい大変申し訳ございません!

「っ、ほ、本当ですか!?」
「ああ」
「私と、けけけ結婚してくれるんですか!?」

 私の問いかけにダンデさんがふふと目を細めて微笑む。この微笑みも私のものになるってこと!?死んじゃう!興奮が止まらない!
 今日ノーと言われたら提出しようとしていた書類をビリビリに破く。色々と手続きキャンセルしなきゃだけど、ダンデさんと結婚するんだもん仕方ない!

「それ、破ってよかったのか?」
「はい!ダンデさんと結婚する方が大事ですので」
「そうか」

 細かくただの紙切れと化したものにドラメシヤくん達が新しい遊びかと寄って来る。中でも大きめの一枚だけ渡してやると二匹で楽しそうに引っ張り始めた。可愛い。
 ほのぼのと眺めているといつの間にか近づいて来ていたダンデさんがその紙を奪い取る。

「変な遊びは教えないでくれ。今後に支障が出る」
「アッハイ!申し訳ございませんっ」

 返してとダンデさんに訴えるドラメシヤくんと他の紙頂戴と私にたかりに来るドラメシヤくん。二人でドラメシヤくん達にダメだと教えると詰まらなそうにドラパルトさんの所へ戻って行く。可愛い。
 でも今のってなんだか……。

「家族みたい、ですね……♡」
「かもな」
「ホァ°ッッッッ!?!?」

 だから何なんだその声はと再び笑われてしまう。だって今のはバカかとか何言ってるんだって返して貰うためにちょっとふざけて言ったことで。そりゃちょっとは本当にそう思ったけど。
 ダンデさんの笑い声と私の心臓の音だけの空間に終業一時間前のチャイムが鳴る。やばい、上司にまたサボってると怒られてしまう。

「だだだダンデさん!」
「ダが多いぜ」
「ハイ!あの、け、結婚の事についてはまた改めて話しましょう!とりあえず業務に戻ります!」
「ああ」

 ビシと何かのドラマで見た敬礼をし、出口へ向かう。
 ウフフ、ダンデさんと結婚できるなんて夢みたいだ!何を言われても求婚し続けてよかった。やっぱ数打ちゃ当たるのよ、人生ってヤツは!
 ルンルンと部屋を出ていこうとすると後ろから名前を呼ばれたので振り返る。

「なんでしょうか!」
「いや、急な予定変更だろう。親御さんにはくれぐれもよろしく伝えてくれ」
「はい!承知しました!失礼します!」

 ちゃんと私の家族へのケアまで忘れないダンデさんって本当に素敵。こんな人が私の旦那様になるだなんて……フフフ!



(もしもし、お母さん?実はね、結婚することになったの!私が!そうなの!だからそっちには帰んない!急でゴメンね、また近々顔出すからさ!お相手さんにも謝っといて〜)
(ふぅ。それにしても、全然知らない相手と結婚なんかしたく無かったし本当によかった!しかもダンデさんと……嬉しすぎる〜!)
(アレ、そういえば。なんでダンデさん態々親によろしくって言ったんだろう。……ま、結婚するんだったら当たり前か!ハッ、私もダンデさんのご実家に挨拶へ行かなくては……!?やばい!清楚なワンピースとか買わなきゃ!)



(『退職届』、か。今更ガラルを離れてもらっては困るからな。な、ドラメシヤ)
(メシ〜!)(メシャ〜!)
(ふふ)




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