やっぱ夢って最高だわ!

「え」
「よかった!やっと人と会えたぜ!」

 何も無い真っ白な世界をダラダラ歩いていたら、突然視界に現れた人物が声を上げこちらに駆け寄って来た。
 日本人離れした鮮やかな青紫色の長い髪と褐色の肌、タンポポの様な黄色い瞳。そして特徴的なユニフォーム。重そうなマントは無いようだ。
 やば、ダンデじゃん。あのポケモンの登場人物と会えるなんて夢みたいだ。いや夢なんだけど。

 そう、これは夢なのだ。残業が続いて疲れきった身体は睡眠を求め、ベッドに倒れ込んだ瞬間泥の様に眠りについた……訳ではなく。仕事は毎日元気に定時で上がっているし健康体。私はただ、元々寝れる場所だと頭が判断すると三秒で寝れるだけなのだ。そんな話は置いておいて。
 つまり今居る世界は夢の世界。ゲームのキャラクターまで登場させて、私の頭はちゃっかりしている。

「すまない、気付いたらここに居て。シュートシティまで案内してもらえないだろうか」
「ここでも迷子なの面白すぎるんだけど」
「す、すまない……」

 ちょっと男子ぃ!ダンデちゃん落ち込んじゃったじゃ〜ん!謝りなさいよぉ!
 頭の中で臨時学級会を開きながら、ダンデも人並みに落ち込んだりするんだなと失礼なことを考える。快活で悩みなんか無さそうとか思っていた。落ち込ませたのは私だけど。

「冗談ですよ、ごめんなさい」
「いや、本当の事だ。いつもこうなんだ。気が付けば全く違う所に居て、そこが何処かもわからない」

 生憎リザードンのボールを置いてきてしまったみたいで、とベルト、ポケットを探り何も無いという様に両手を上にあげる。すごい、動きが外国人ぽい。
 折角ならリザードン見てみたかったな。他のポケモンも。ドラパルトってやっぱり透けているのだろうか、どれくらい透けているのか、そもそも触れるのか。気になる。次の夢ではドラパルトを出演させようね、私。

「ここは何処もかしこも真っ白だが、何かの施設なのか?」
「夢ですよ」
「は?」
「夢。私の夢の世界です」

 元々大きい目が驚きでさらに大きく見開かれる。でかーい!二次元特有の大きい瞳とガッツリハイライト凄い。逆に私はどう見えているんだろうか。コイツ目ちっさ、ブサイクだなとか思われてるのかな。辛いね。
 ダンデが出てくる夢なんて滅多に無いんだし、折角なら何かして欲しいな。握手とか、リザードンポーズとか。あ、でも筋肉触ってみたいかも!それだ!

「……キミの夢だとしたらなんでオレは此処に、」
「ねえダンデ!筋肉触らせて!」
「はっ!?キミは突然何を言ってるんだ!」

 初対面だぜと信じられないという顔をされる。夢のくせに貞操観念しっかりしてるの何。夢なんだからいいじゃんか。
 一歩距離を縮めると一歩後ずさられる。もう一歩進むとさらにまた一歩後ずさる。楽しい、漫画とかアニメとかでよく見るやつじゃん。

 少し強張った顔をしたダンデが逃げる様に走り出す。ので私は後を追いかける。自然の摂理だね。
 夢の中だから余裕で追いついたるわと意気込んでいたが、なんとも現実思考な夢なのか。すぐに息切れを起こし日頃の運動不足を思い知らされることになる。夢の中くらいいいじゃんか私のバカ!

 立ち止まり膝に手を着いてゼーゼー呼吸を整えていると、視界に特徴的な白と黒にバッテンの金具のついたスニーカーが映る。
 足もゴツいなと眺めているとそのスニーカーが太腿によって隠され、少し頭を上げるとダンデの顔が見えた。
 やば、ダンデが私に跪いてるじゃん。正確には膝ついてしゃがんで、子供相手みたいな対応されてるだけだけど。

「大丈夫か?」
「はぁっ、大丈夫……」
「すまなかった、こんなに全力で追いかけてくるとは」
「じゃないです」
「は?」

 ぽかんとした顔のダンデに抱き付く。しゃがんでくれたから丁度そのまま手を伸ばせば首に手を回せる高さな訳で。
 これは抱き付くしか選択肢が存在しなかった。こうしないと次に進む方法がなかっただけだもん。あれ、いつの間にか乙女ゲームに切り替わったのかな?
 パンパンに張った筋肉が程よい弾力で気持ちいい。一家に一台必須だよこれは。調子に乗って背中もお触りしちゃおっと。

「き、キミは一体なんなんだ!?」
「私は私だよ、ダンデ♡」
「ひっ」

 何故怯えた声を出しているのか。お前はガラルのチャンピオンだろう。まあ私が勝ちましたけどね。レベル差で殴ってゴメンね、怒らないで。
 というか私は未だに息が整っていないというのに、ダンデはしゃがんだ時から一切乱れが無かったな。ムカつく。

「そんなダンデには……チュウしてやる!」
「は!?ちょっと待っ、んぅ〜〜っ!?」

 あっひゃー!ダンデの唇奪っちゃったー!ちゃんと人間らしく柔いし生暖かい。ダンデの体温は私よりほんのり高く触り心地が最高だ。流石私の夢の世界。私に都合が良い!
 それにしても、無理矢理突き放そうとはしないなんて、唇を奪われているというのに随分紳士的だな。まあ態々夢に出演させて拒否されるとかちょっとね。
 え、もしかして私はダンデとキスがしたかったの?そんなつもりは無かったけど、なんだか恥ずかしくなって来たな。

 ちゅ、と可愛い音を立てゆっくりと唇を離すと、肩に手を置かれガバリと距離を取られる。尻餅ついちゃって可愛い〜。
 ダンデの口がパクパクと動くが声は耳に届かなくて。同時にうっすらと意識を引っ張られる感覚。どうやらもう目が覚めるみたいだ。
 残念だなと思いつつもダンデにバイバイと手を振る。

 なんだか久々に楽しい夢だった。また続きとか見れるといいな!


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「な、何だったんだ、あの子は……」




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