やっぱ夢って最高だわ!2

「……」
「……」
「ど、どうも〜!お久しぶりです〜」
「……」

 あれれ、おかしいな。目の前に居るのに声が届いていない様だ。う〜ん、でも表情的には聞こえてるけど無視してる感じがする。私の勘がそう言ってる。
 もう一度声を掛けようと息を思い切り吸ったところで溜息が聞こえる。この空間には私ともう一人しか居ない。つまりその溜息を吐いたのは目の前のもう一人という訳で。

「またキミか……」
「なんだ、聞こえてるんじゃん」
「……」

 何故だか右手を口に当てたままそろりと距離を取る目の前の人物、ダンデ。私はどうやらこの前の夢の続きを見ているらしい。
 離れたらまた近付く、前もやったのに懲りない男だな、ダンデって。

「なんで離れるの?」
「いや、……気のせいじゃ無いか?」
「そんな事ないと思う」

 大股で一歩近付くと仰け反りながら素早く倍の距離を取られる。面白いけどもう良いよ、飽きた。
 さては、この前キッスしてしまったのを怒っているのか?私の夢なんだから好きにさせてよ〜!

「照れてるの?」
「は?」
「すいません……」

 すんごい低い声で返される。咄嗟に謝罪が出てしまうほど怖い。
 あれれ、おかしいな。この間より距離が空いてる気がする。物理的にゼロ距離になった仲なのに。

「キミは一体何者なんだ」
「え?私ですか?」

 神妙な顔付きで質問される。こんな顔もするんだな。ダンデの顔を中々自由に動かすじゃないの、私。やるわね、私。
 何も答えないで居ると段々とダンデの太い眉が寄っていく。

「答えられないのか」
「ん〜。そういう訳じゃ無いけど」

 前の時言った気がする。あれ、言ったよね?いくら続きの夢だとはいっても記憶はそこまで鮮明では無い。続きなんだ〜、と認識できるくらいだ。

「キミはオレの事を知っているみたいだな」
「まあ」
「だがキミはガラル人では無い」

 そうだなと怖い顔をして問われる。いや全く語尾は上がっていないので私には聞いていないのかも。自分の中で整理している、それが正しい気がする。
 ダンデは顔が濃いから眉を顰めただけで迫力がすごい。おまけに体格も良いし。
 やっぱり見ただけでガラル人では無いと分かるってことは私はいつもの私なんだろう。ブスに見えてるかどうかは知らん。

「そうですね」
「何故オレのことを知っている」
「ご自分がどの様な立場に居るのか分かられていないという事ですかね?」
「……」
「それに、私は私です。前にも言いましたよね、多分」

 あ〜、めんどくさ〜い。なんで夢の中で折角会えたダンデと喧嘩みたいな雰囲気なってんの?キスした仲じゃんか私達。私の頭は馬鹿なのか?楽しい夢にしろよ。
 小さく溜息を吐いて視線を横に向ける。と、あそこに居るのは……。

「ドラパルト!?」
「何?」
「ドラパルトだ!!!!!!」

 やっぱ私は優秀だった!ここでドラパルトを登場させるとは粋なことするじゃん!
 走って近づく私に首を傾げながらドラパルトがふよふよ近づいて来てくれる。かんわいいー!!
 後ちょっと、と言うところでタイミング悪く私の長い御御足が縺れてしまう。ああ、長くて美しいばかりに……冗談です。
 走っていた感じ地面は硬かった。顎かち割れる。さよなら世界と目を瞑り覚悟を決めたところで、下からお腹をグイッと持ち上げられる感覚。

「わわわっ」
「っキミ、大丈夫か!?」

 な、なんとドラパルトが私の下に入り込み持ち上げてくれました。す、すごい!ていうか触れてる!?!?
 すぐに追いついてきたダンデが何か言ってるけど、念願のドラパルトに触れられた事に感動している私には届かない。もっと触っても、いいよね……。

 ソロリと両手を伸ばすと私の触りたいという気持ちを汲み取ったのかするりと擦り寄ってくる。かわいい。
 頭を撫でると目細め気持ち良さそうに声を上げる。筒って言うのかな、そこから様子を伺うようにこちらを見てくるドラメシヤも可愛い。

「かわいい……」
「当たり前だ。オレのポケモンだからな」
「え」

 触っていたドラパルトがみるみる赤い光に包まれたかと思うと何処かに吸い込まれて行く。横を見ると黒と黄色と白のボールを手にしているダンデ。

「す、すごい!!」
「何がだ?」
「それがハイパーボールなの!?」
「は?」

 よく見せてとボールに触れようとすると肩をぐいと押され思わずよろけてしまう。ひ、酷い。

「もう!何するの!」
「ハイパーボールも見たことがないのか?」

 基本的なボールである筈のハイパーボールを、まるで初めて見たかの様な私の反応に訝しげな顔をされる。しまった、ついついね。
 いくらゲームやアニメで理解してるとは言っても実際見るのとでは全然違うもん。仕方ないことだ。

「初めてです〜」
「何故だ、子供ですら使うこともある。ボールは世界共通だろう」
「そうですか〜」

 は〜、さっきから何故何故ばっかりうざったいなあ。お前はなぜなぜ期が来た幼稚園児か。もう目が覚めないかなあ。これじゃ夢なのにストレスが溜まる一方だ。

「キミは、」
「は〜〜〜〜」
「な、なんだ」

 ダンデにも聞こえるように一際大きい溜息を吐く。と、少しビクついて思い出したように口元を抑える。もうキスはしないわよ、失礼な奴ね。
 ……え、私の口が臭いとかじゃ無いよね?もう何も分からない。まあもうなんでも良い、私は今心底ご機嫌斜めなのだ。

「もうウザいから話さないで」
「は?」
「もう貴方と話すことはありませ〜ん」
「おい!ちょっと待ってくれ!」

 あ、なんだか今なら起きれそう。前みたいに意識が引っ張られてる、気がする。
 ダンデに向かってべーと舌を出し、おまけに指をひらひらさせておく。カチンと来てそうな顔を最後に見れて少しだけ晴れやかな気持ちで夢を終える。

 はーあ。ドラパルトの尻尾、触りたかったなあ。


****


「次こそは、絶対に……」




back
トップページへ