ライオンのキバ

「痛っ!」

 今私は彼氏とまったりとした団欒時間を彼の部屋で過ごしている。
 ガラル地方の元チャンピオンにして現在はバトルタワーのオーナーを務める彼はほとんど休みが無く、今日は久しぶりの一日オフとのことで部屋にお呼ばれした次第だ。

 ここだけの話だが、彼には噛み癖がある。
 外で会う時は二人きりになってもスキャンダルを避けるためもあり、触れ合うこと自体が無い(そもそも外で会う事もあまり無いのだ)。家に入った途端、電気コードにまとわりつくバチュルの如く必ず私の半径五十センチ以内には居るようになり、隙をついては私の身体のどこかを噛んでくるのだ。

 付き合い始めはそれこそ驚いたものの、案外人間慣れるもので。
 今もダンデに抱えられ彼の膝の上でまったりと雑誌を読み、首筋を噛まれている。もう日常茶飯事だ。

「あぁ、すまない。強くしすぎた」
「も〜また?たまには首周りが開いた服も着たいんだけどなぁ」
「オレ以外の前で露出するつもりか?」
「露出って……。季節相応の露出だよ〜」
「ダメだぞ」
「はーい」

 彼の鋭い歯によって血が出たのだろう。ペロリと舐められる。ダンデは結構束縛が強い男で私が他の男性と関わるのを良しとしないのだ。

「私キルクス出身だし今年の暑さは結構堪えるんだけどなあ」
「キミのバイバニラのバニちゃんがいるだろう」
「私のバニちゃんも暑いのは苦手なんです〜」
「ははっ、そうだったな」
「も〜」

 以前噛むのをやめて欲しいとお願いした所、キミを見ていると歯が疼くんだ等とよく分からないことを言われた事もあるが、彼が気付いてないだけで実際は独占欲から来る自分のものだというマーキングなんだろうなと思う。
 今回も丁度見てたページが彼のライバルのインタビュー記事だったし。

 ま、そう思わないとこっちがやってらんないって話なんですけどね。でも血が滲むくらい強く噛むのはやめてほし〜よ、ダンデさ〜ん。




改稿:2021/08/18




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