模様替えタイム

『次のお休みって会えたりしないかな?』
「!」

 昼休憩に食堂でサンドイッチ片手にスマホをチェックしているとナナシからメッセージが来ているのに気付く。
 お互いスマホを放置していることが多くあまり頻繁に連絡を取り合うというわけでもない。そんな彼女から誘われるというのは初めてだ。
 これは喜んでいいのだろうか、それとも想像したくないがよくない話でもされるのだろうか。今自分でも体温が上がったり下がったりしているのが分かる。

『何も予定は無いから大丈夫だ。オレもキミに会いたい』
『本当に?嬉しい!じゃあ私の家に来てもらえる?』
「家だと!?」

 思わず叫んでしまった。周りの視線が自分に集まる。
 何でもないんだと愛想笑いをしながら謝る。いくつか生暖かい視線が混ざっているのには気にしない。
 オレの家に来てもらうことはあるが彼女の家に呼ばれるのは初めてだ。これは……。

『キミの家に行くのは初めてだな!楽しみだ!』
『えへへ。じゃあ朝の十時にダンデくんの家までお迎えに行くね!』
『ありがとう!』

 リザードンが喜んでいるスタンプも送る。
 自分は方向音痴が人より少し酷いので彼女と会う時は必ず迎えに来てくれる。毎回申し訳ない事なのだが迷子になられて辺境の地に迎えに行くよりマシだと怒られた事がある。
 なので方向音痴が治るまでは言葉にはせずちょっとしたお菓子を差し入れすることにしている。

 それはともかく、週末は彼女の家にお呼ばれだ。文章を見る限り最悪なパターンは無いだろう、よかった。
これは色々と準備をしておかないとだな、リザードン!


****


「この為だったんだな……」
「ん?ダンデくん何か言った?」
「いや、何でもないぜ!次はどれを運べばいいんだ?」
「ありがとう〜次はね……」

 ついにナナシの家へ行く日が来た訳だが、招かれた部屋は驚くことに物が散乱し、足を踏み入れるのがやっとの悲惨な状態だった。

「えへへ、数年に一度の部屋を一新したい欲が出ちゃって……いつもはこんなんじゃ無いんだよ!本当だよ!」
「そ、そうか……」
「めっちゃ引いてるじゃん!違うの!今回は大規模な模様替えもしたくって。一人じゃ限界があるから手伝ってほしくって」
「なるほどな、分かったぜ!お安い御用だ!」
「やった!じゃあ模様替えタイムスタート!」

 という訳でオレはせっせと彼女の言う様に棚やテーブル、ベッドなどの移動を手伝っている。のだが。

「う〜〜ん、やっぱりベッドはあっちの方がよかったかな……じゃあ机はこっちにして〜……」

 普段から性格的にも行き当たりばったりなナナシは家具の配置もかなりソレで。いくら鍛えているとはいえ家具を動かすのは結構な重労働だ。まあナナシのためならいくらでも運べるんだがな。だがちょっと疲れてきた。

「ダンデくん疲れちゃったよね、休憩しよっか!」
「あぁ、すまない。助かる」
「こっちこそ優柔不断でごめんね。次の移動を最後にします……!」
「ふふ、いいんだ。納得できるまでやろう」
「うぅ。……でも、今度は二人で家具を選んだり、配置考えたりするのも楽し、そ……」
「え」
「……っ、お茶冷やしてたの!持ってくるね!」

 真っ赤な顔でキッチンまで駆けていくナナシ。途中で切られてしまったが、今の言葉はかなりキた。近いうちにそれらを現実にできる様、明日から物件探しを行うことをオレは心に決めた。




改稿:2021/08/18




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