愛してるゲームしましょ!

「ダンデさん、愛してるゲームしましょ!」
「愛してるゲーム?なんだそれは」
「え〜?知らないんですか〜?」

 仕方ないなあと私もつい先日仕入れたばかりの知識を披露してあげる。お互い順番に愛してると言い合って、照れてしまった方の負け。単純明快、そして堂々とダンデさんに愛してると言ってもらえる、とても素晴らしいゲームなのだ!考えた人サンキュー!

「なるほど。だが、キミとオレは愛してると言い合うような仲ではないと思うが」
「甘いですよ!これは実際の関係はどうでもいいんです!ゲームなんですから!友達、同僚、はたまた初対面、どんな関係でもいいんです!!」
「へえ」

 あれれ、なんだかダンデさんと私の間の温度差が酷い気がする。手元の資料読み出しちゃったし。まだお昼休憩は終わっていないのに。

「ダンデさん!愛してるゲームは!?」
「オレはやるとは一言も言ってないぜ」
「えぇ〜っ!?」

 確かにそれはそうだ。でも私は秘書さんにしっかり休憩を取らせるように言われている。方法は任せるからとにかく時間までは仕事をさせないようにって。
 つまりこの愛してるゲームの提案はダンデさんの為なのだ。別に私が愛してると言われたい訳なんかじゃないし!本当だもん!

「やりましょうよ〜!暇でしょ〜!」
「オレが暇そうに見えるか?」
「うぅ……」

 暇そうには見えない。でも今は暇でなきゃいけないのだ。本来なら仕事以外のことをする自由時間なのだから。
 どうしようかと顎に手を当て考えていると、ダンデさんが資料から顔を上げる。

「大体、キミとは勝負にならないだろう。キミはすぐに負ける」
「そっ、そんな事無いです〜!昨日色んなパターンのシミュレーションしましたからね!」
「へえ」

 片肘をついて楽しそうな顔で見上げられる。よし、資料は手放させることに成功した。そしてゲームもして貰えそうな雰囲気。私は天才なのかもしれない。

「いいですか、私から始めますからね!……コホン。ダンデさん、愛してます!」
「…………」
「……次はダンデさんの番ですね」

 く、くそ。ダンデさんの表情は全く変わらない。分かっていたけど!分かっていたけどなんだか悔しい。しかも言ったこっちが恥ずかしくなってきた。危うく愛してるすら聞けずに終わってしまうところだ。そもそも自分が言う側のシミュレーションはしていなかった。私はバカか?
 でも次はダンデさんの番だ。さあどんな愛してるが来るのか。無感情に?楽しそうに?案外愛おしそうに言われちゃったりして?きゃーーっ!
 一人で胸を高鳴らせ待っているとダンデさんが立ち上がりこちらに近付いてくる。そんな!初っ端から近距離攻撃はまずい。でも勿論そのパターンもシミュレーション済みだ!だから大丈夫、落ち着いて。落ち着くのよ私!
 すぐ目の前まで距離を縮めてきたダンデさんの右手が私の顎を掬う。ひえっこれは俗に言う顎クイってヤツでは。

「ナナシ」
「ひゃっひゃいっ」

 身長差のせいで見下ろしてくるダンデさんの長い青紫の髪が私の頬を掠める。男性にしては長い睫毛に囲まれた力強い大きい瞳から目を逸らすことが出来ない。
 その瞳がニッと細められ、眼光の鋭さが増す。

「愛してる」
「アっ、あっあっ……」

 シミュレーションなんか所詮想像でしかなく、結局は何の意味もないのだ。
 顔を真っ赤にして崩れ落ちた私。それをオレの勝ちだなと大声で笑いながら仕事机に戻っていくダンデさん。再び資料を手に取り仕事を再開するのを私は咎められなかったし、暫くの間まともに目を合わせることすら出来なかった。
 そして私は秘書さんに怒られた。





2021/08/06




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