きっと何度も夢見た綺羅星
悪いことは何故か立て続けに起こるもので、上手くいくと読んでいた案件は先方の都合であえなく散り、直帰しようと思っていたのに明日必要な資料を忘れて会社に戻る羽目になり、思うように進められていなかった仕事を上司から指摘されて憤りと自己嫌悪を抱え、会社にいると続々とやることを思い出してしまい、その結果オフィスを出るのも21時を過ぎてしまった。ああ、生ビール飲みたい。ハンバーガーとポテト食べたい。身体に悪いもの摂取したい。とびっきり甘いコンビニスイーツ買いたい。光太郎に、あいたい。
どこを見ていいか分からないくらい煌めいているネオンをぼーっと見つめながら、ふらふらと駅に歩いていると、コートの左ポケットに入れていたスマホが電話が掛かってきたことを知らせた。画面に通知される、正にいま会いたくて、触れたくて、話したかったひとの名前。
「もしもーし!名前!お疲れ!」
「こ、光太郎〜〜」
「なになに!どした!元気ないなー」
「タイミング良すぎる。声聞けて元気でた...」
何があったか分かんないけどそれなら良かった!と電話口から聞こえる光太郎の声が、鼓膜を心地よく揺らす。
「仕事大変なのか?」
「うーん...そういう時期というか、色々重なった感じ、かな」
「そっかー...頑張ってるんだな!えらい!よしよーし!毎日頑張ってる名前はえらい!」
「うう、ありがと.....」
でもアスリートの光太郎と比べたら、と溢しそうになったが、前にそう言って無理をしてしまったとき「名前めっちゃ頑張ってるじゃん」とアッサリ言われて拍子抜けしたのを思い出す。自分を認めること、労わることが不得手だったわたしの代わりに光太郎がそれをしてくれるから、わたしも学習したのだ。疲れたら休む、寝る、食べる、甘える。そしてそれが、近い距離で、ふれる距離でできたなら。
「光太郎の声聞いたら元気出た、けど...会いたくなっちゃった」
「おれも!声聞きたくて電話したけど会いたすぎてやばい!どうしよ!どうする?」
「はは、どうするって」
「...次連日オフ取れたら会い行くわ。そうだな、あと、もしどうしても仕事しんどくなったら」
俺んとこ来ていーからな。準備はできてる!
と、光太郎の声が耳元ではじけた。きっと電話の向こうでは、何時もの眩しい笑顔を浮かべているのだろう。想像して胸がぎゅっとなる。
「ぐっ......ありがと、うれしい、です」
「はは!まあかっこいー感じに言ったけど、結構おれも限界なんだよ。名前とこの距離でいるの」
「光太郎も?」
「当たり前じゃん!家に帰って名前がいるなんてサイコーすぎない!?」
「それは...最高だね」
「だろ?」
炭酸のようにはじける声に優しさと温度を孕んで、言葉が降ってくる。そうやって飛び込める場所を作っておいてくれる彼に、きっとこれからもわたしは何度でも、好きだなと思うのだ。
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