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街並みの美しいワルシャワの街。分かりやすいだろうからと指定された場所は、旧市街はロイヤルキャッスルの広場だった。マップで調べながら歩いていると開けた広場に辿り着き、そこで成程これは良い待ち合わせ場所になる訳だと思う。広場にはかなり高さのある柱があり、上部にはローマ皇帝の像。とても分かりやすいランドマークだ。茶色い建物と夕陽が溶け合い、境目がわからなくなってしまいそう。待ち合わせにはまだ少し時間があったので、スマホを取り出し写真におさめる。あとで天童くんに送ってあげよう。

久しぶりに会うのに心象が悪くなってしまっても嫌なので余裕を持ってきたつもりだったが、待ち合わせの柱に目を向けると、脚元には遠目でもわかる牛島くんの姿。大きい身体は海外だからかそこまで浮いていない。少し高校の時より大きくなったのだろうか。縦にというより、更に逞しくなっているように思う。表情は当時と相変わらず、あまり感情を読み取らせてくれないそれだが、幾分か当時より柔らかい気がする。いけない、待たせてしまっては。緊張をほぐすように、すう、と一呼吸置いて。

「牛島、くん」
「...!名字。久しぶりだな」
「久しぶり。ごめんね、待たせた?」
「いや、早く着きすぎた。待っていない」

そうやって言葉を交わすと、やはり少し高校の頃よりも纏っているオーラが気持ち柔らかくなり、話しやすくなったなと感じる。彼も大人になったし、私も、大人になった。

「天童に美味い飯に連れてってやれと言われたが、俺もあまり出れていなくてな。知り合いに店を勧めてもらった」
「そうなんだ!ありがとう。ごめんね、嫌じゃなかった?こうやって会うの」
「?何故だ」
「だって、高校のときそこまで沢山話した訳じゃないし。面倒じゃなかったかなって」

そう言うと「そんなことはない」と、心底そう思っていないであろう声が聞こえた。牛島くんの言葉には嘘や秘密がないな、と思う。

「こういう時でないと、なかなか外食や観光もしなくてな。良い機会だ」
「そう?それなら良かった」
「それに、慣れない土地では不安だろう。俺もまだまだ知らないことも多いが、滞在中何かあれば言ってくれ」
「...うん。ありがとう」

彼に連れられるままに目的地へ向かうと、そこは雰囲気の良いレストランだった。ご当地料理が食べられるらしい。牛島くんが店員に声を掛けてくれて、当たり前だけど、外国語を話している牛島くんが新鮮で耳を澄ませてしまった。通されたのはテラス席で、今の季節では、気温もちょうど良く気持ちよさそうだ。

「あ、英語メニューあるね。助かる」
「そうだな。名字は英語が使えるのか?」
「多少は...ちょっとビジネスで使うってなると心配なレベルだから、出張もなかなか大変だよ」
「それでも任されているのだから、名字なら大丈夫だと判断されたんだろう。俺はまだまだだ。試合中などに話し掛けられると、まだ咄嗟に理解は出来ない」
「そっか、試合中じゃ時間も掛けられないしね...大変だ」

思ったより普通に話せていることに安心して、胸を撫で下ろす。会うのも6、7年ぶり位であるし、自分だって当時の気持ちを引きずって抱えている訳ではない。大学では人並みに恋愛もしたし、人生経験的なものも積んだと思う。けれど何故か彼を前にしてしまうと、私のこころは急に高校3年のあの頃に戻ってしまったようだった。私は今、牛島くんと話している。ポーランドの滞在はあと1週間。その間に、どれだけわたしは、いまの牛島くんを知れるんだろう。







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