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「え、大阪出張?」
急遽決まったんだ、と電話口で名前ちゃんの声が弾けた。回線越しの名前ちゃんの声が、実際よりも少し高く聞こえるのは気のせいだろうか。1週間に1回位、オフやその前日に名前ちゃんの声を聞くのが定番になっていた。
「3日間だけなんだけどね。水木金って行くから、金曜ご飯行かない?」
「行く」
食い気味に返事をした自覚はある。次に会えるのはまだ目処も立っていない東京遠征が決まった時だと思っていたので、こんなに早く会えるなんて思わなかったのだ。
「良かったー。ちなみに、行ってみたいお店があるんだけど、決めちゃってもいいかな?」
「うん。名前ちゃんに任せる」
「ありがとう!後でお店のURL送るね」
名前ちゃんは何時もいろんな話を聞かせてくれる。決して話すのが得意ではない自分にとってはそれが有難かったし、心地良かった。また名前ちゃんに会えるまで、あと少し。
「今日臣くん機嫌良いなぁ。何かあるん?」
「別に何もない」
「へへ!俺は知ってるぞ!」
「まって木兎くん言わないで」
「名前ちゃんに会うんだろ!」
「何やと!?」
「おおー!臣さんいつの間に!!」
どうして言ってしまうのか。宮に追求されることが目に見えているから黙っていたのに。やはりこの手の話、まして名前ちゃん絡みではいつにも増して喧しくなるので、適当なことを言って追いやると、いそいそと木兎くんが寄ってくる。
「なぁオミオミ、名前ちゃんのこと、本気?」
「.........」
「ごめんな!変なこと聞いて。俺がどうこう言うことじゃねぇのは分かってんだけど...大丈夫な従姉妹だから、ホラ、気になるというか」
「......うん」
「本気なら、手伝えることもあるかもだしな!」
「...ありがと。うん、好き、なんだと思う」
「...そっか。変なヤツには絶対渡せないけど、オミオミなら安心だなー!」
がんばれよー!と嵐のように木兎くんは去っていく。うん。時が来たら、ちゃんと伝えたい。名前ちゃんにも、知って欲しい。
「聖臣くん、こっちこっち」
「名前ちゃん」
久しぶりの名前ちゃん。
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