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光太郎とチームメイトの皆さんは近くに宿を取っていたので、少し歩いた大通りのところで彼らとは別れた。佐久早くんがぺこり、と軽く会釈をしたのが見えて、後でスマホに届くであろうメッセージに期待する。彼らに背を向けたところで、香里が口を開いた。
「時に名前サン、佐久早くんとどこに行ってたんですかねぇ」
「何その言い方!外で話しただけだよ」
「連絡先くらいは交換した?」
「した......っていうか、聞かれたから」
おお〜!と香里のテンションは当の本人よりも高い。自分だってしっかり侑くんと連絡先くらい交換して来たんだろうに。
「意外だね、佐久早くん。自分でそういうこと言うタイプなんだ」
「ね、意外だった。やらなそうな人がやると変に期待しちゃうな」
「しといたらいいじゃん、期待!26歳女子、そんな深く考えてもしょーがないよ。楽しむべし!」
侑くんに連絡しよっと、と香里はスマホをいじり始めた。香里のこの調子の良さには幾度となく救われてきたところがあるし、自分としても佐久早くんと少なからず繋がりが持てたことは嬉しいことだった。
話し足りないということで例の如く香里と2軒目に入って暫くした頃、スマホの画面が通知で明るく光った。
ーー今日はありがとうございました。
一文のみ。このシンプルさが潔いし、佐久早くんらしいなと思う。
ーーこちらこそありがとう。試合で疲れてるだろうしゆっくり休んでね!
返事はすぐにしちゃダメだって、なんてメロディーと歌詞が頭に浮かんだ。自分自身元々連絡を早く返すタイプではなかったが、佐久早くんが早々に連絡をくれた事が嬉しくて自然と手が動いてしまった。
ーーありがとうございます。明日休みですか?
直ぐに既読がついて、そう返事がくる。佐久早くんは意外とマメなのだろうか。あまりそういうタイプには思えなかったけれど。
ーーうん、休み。だから今2軒目に来てる!
要らない情報かなと思ったが、回ってきたアルコールが内容を精査する余裕をなくしていた。
ーー名前さんの良いタイミングでいいので、後で電話くれませんか?
「えっ?」
「えっ、何、なんて来た?」
届いたメッセージに思わず声が出てしまい、ほろ酔い気味の香里に詮索される。
「あとで、電話、ほしいって.....」
「ほおおお。佐久早くんやるねえ」
「もしもし」
「もしもし、佐久早くん?」
「お疲れ様です。楽しんでるところすいません」
「全然!香里も酔っ払って眠そうだし、丁度良かったよ」
「...それなら、良かった。明日の夜、なんですけど」
「明日?うん」
「食事、行きませんか」
「大丈夫...だけど、佐久早くん忙しくない?明日大阪戻るんだよね?」
「はい。新幹線の時間は融通利くんで、東京駅の近くで良ければ」
「うん、場所は大丈夫」
「店は調べておきます。食べたいものとか、食べられないものとか、ありますか」
今日は洋食だったので和食を提案し、食べられないものは特にないから大丈夫と伝えると、調べて送りますね。おやすみなさい。とさっぱりと電話は切れた。こちらは突然のことで胸を熱くして戸惑っているというのに。電話の向こうも、同じだったらいいのに。
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