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儚いっていう話

最近流行りの儚いだろってやつ
幸村くんは自認儚いだと思うんですけど……っていう話です
何でも許せる人向け 書きたいところだけ書きました
* * *


※幸村くんは自分から「儚いだろ?」とは言わないけど、周りの人から「幸村くんって儚いよね」と言われて、だんだんその気になり、自認儚いになってしまってる(という設定です)


・真田
「ねえ、真田」
 幸村が俺の名前を呼ぶ。なんだ、と聞き返すと、幸村はなんだか愁いを帯びた目で遠くを見ながら言った。
「俺ってさ……けっこう儚い、よね?」
「は、儚い……?」
 突然の発言に、意味を理解するまで時間がかかった。また誰かに適当なことを言われたのか。
「いや、儚い、とは思わんが……」
「ええ? そうかなあ。ほら、俺入院とかしてたじゃん。そのときはけっこう、儚いキャラだったと思うけど」
「む……そう言われると確かに……」
「だろ? 目を離したすきに消えてしまいそう、だったりするだろ?」
 そう言って幸村は薄く笑った。
「しかもさ、俺って顔も悪くないと思うんだよね。あと花の世話してるときなんか、だいぶ儚いポイント高いと思うんだけど」
 自覚がある――こやつ、自認が儚いキャラになっている。
「真田って夢小説読んだことある?」
「夢……小説? それは普通の小説とは違うのか?」
「うん、なんか既存キャラと疑似恋愛? できる小説のことなんだけど……俺の夢小説って、俺の儚さに恋をする主人公が多くてさあ……」
「……はあ」
 幸村の言っていることが微塵も理解できなかった。

・柳
「蓮二、ちょっと聞いてほしいんだけどさ……」
 精市がいつにも増して真剣な表情で俺を呼び止めた。練習メニューのことか、次の大会のオーダーのことか。何にしろ重要な話であることは間違いないだろう。
「どうした、精市」
「俺ってさ……儚い、だろ?」
 てっきりテニスのことを話題に出されると思っていたので、予想もしない話に面食らう。だが、精市のクラスの女子が『幸村くんって儚いキャラだよね』と話していたことも同時に思い出す。さてはその話を真に受けてしまったのだな。
「ふむ、儚い……か。確かに、精市の容姿や性格、これまでのことを鑑みると『儚い』という言葉は精市にふさわしいもの、だと俺は思う」
「だよね。やっぱり蓮二はわかってるなあ。真田は全然わかってくれなかったよ」
 この話、すでに弦一郎にもしていたのか。精市の話を受けて戸惑う様子の弦一郎が目に浮かんだ。

・丸井くん
「やあ、丸井」
「幸村くん?」
 突然、幸村くんに呼び止められて驚いた。普段、幸村くんの方から話しかけてくれることはめったにないから、少しわくわくする。
「俺って儚いだろ、ってのをいろんな人に聞いてるんだけどさ……」
「……は?」
「いやだから、俺って儚いキャラ代表、みたいなところあるだろう?」
 何を突然、と思ったけれど、確かに幸村くんは儚げな雰囲気をまとう人だと思う。俺のクラスの女子も同じようなことを言っていたし。まあ、儚いだろ。入院とかしてたし。
「おう、幸村くんは儚いぜ。なんか消えちゃいそうな雰囲気とかあるよな、なあジャッカル!」
 俺は幸村くんのはるか後ろで柱に身を隠していたジャッカルに声を掛けた。小さな声で「俺かよ!」という突っ込みが聞こえる。
「やっぱり丸井は物分かりがいいね。さすが天才だ」
「へへっ褒めてくれてサンキューな! 嬉しいからガムやるよ」
「ありがとう、嬉しいな」
 幸村くんがニコニコ顔で戻っていく。よーし、俺も部活行くかー。

・仁王
「仁王」
「……幸村」
 突然物影から幸村が顔を出す。薄い笑みを浮かべて。
「なんじゃ、俺は何も言われるようなことはしとらんぜ」
「いやいや、そんなことを言いに来たわけじゃないよ」
 幸村は笑って「突然なんだけど」と切り出した。
「俺って儚い……よね?」
「はあ? 何を言い出すのかと思えば……」
 そう返事しながら、そういえばクラスの女子が幸村の話で盛り上がっていたことを思い出す。『儚い』みたいなワードも聞こえた、ような。
「仁王はどう思う? 俺のこと、儚いなーとか思ったこと、ない?」
「いや、ないな」
 あえてきっぱり否定する。まあ、本当のことじゃから。
「え、そんなばっさり言われると思わなかった。でも俺、入院とかしてただろ……?」
「幸村、儚いってのはな……俺みたいなやつのことを言うんじゃ」
「はあ? 仁王が儚い? それはないだろ?」
「いや、俺は儚いぞ。目を離したら今にも消えてしまいそうじゃろ。イリュージョンで」
 そう言って、俺は幸村の目の前に鳩を出した。幸村の視界が鳩で覆われているうちに、すばやく他生徒になりすます。俺がいた場所にはバラの花びらを散らしておく。これでまるで、俺がバラの花になってしまったかのような演出になる。
 案の定、幸村は俺を見失って戸惑っていた。これが本当の『儚い』キャラじゃ。

・赤也
「ねえ赤也。俺って儚い……だろ?」
 目の前のこの人は何を突然言い出すんだ? 俺の頭は「?」でいっぱいになる。履かない? 何を? 思わず口に出していた。
「え……幸村部長って……履かない……んすか?」
「そうかもしれない。最近、よく言われるんだ。幸村くんって儚いよねって……」
「それって、誰から……?」
「え? クラスの女子から、が一番多いかな」
 なんでクラスの女子が幸村部長の「履かない」事情を知っているんだ? ますます俺の頭には「?」でいっぱいになった。
 幸村部長は澄ました顔をしている。そんな顔して言うことではないだろ……。

* * *

実際、関東大会までの幸村くんは儚かったね……



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