あなたと共に地獄まで
最近の柳先輩は変だ。
すぐ謝る。でも誰に対してもというわけではない。俺だけに、本当に些細なことでもすぐ謝る。
今日も柳先輩が打ち返したボールが変なところに行っちゃって、俺が取りに行っただけなのに謝られた。
「なんで謝るんすか?」
そう聞いても、柳先輩ははぐらかす。ボールをぶっ飛ばしたことに対しての謝罪ではないことは、俺にもわかっていた。
全国大会決勝のときの試合――きっと柳先輩は優しいから、気にしているのだろうと思う。かつてダブルスを組むほどの仲だった幼馴染を傷つけたこと、勝つためだけに俺のことを利用したこと。そんなこと気にしなくていいのに、と俺は思うけれど、言葉にはできなかった。言葉にしてしまったら、柳先輩のやったことは良くなかったと認めてしまうことになるから。俺に許されたとて、柳先輩が自分を責めなくていいことにはならないだろうから。
勝つためには手段を選ばないことの何が悪い。ひじんどうてき? と知ったこっちゃない。勝つためのテニスを――俺たちのテニスを、誰かが否定することなんて俺が許さない。
柳先輩と一緒なら地獄も悪くない。むしろ喜んで一緒に落ちるところまで落ちてやる。
「柳先輩。これからもずっと一緒にテニス、しましょうね」
だから今日も俺は馬鹿で、単純で、何も知らないフリをする。今までのやり方を否定しないために。これからの日々を続けるために。
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