謙也がクラスメイトからの告白を聞かされたのはおよそ五分程前のことだった。これが可愛い女子だったらよかったのになぁ、と相手の話を聞き流しながら謙也は目の前のクラスメイトを見る。男だ。どう見ても男。それも、かなり顔がよくて身長もあって、なおかつ性格もいいだとかで女子によくおモテになる、謙也にしてみれば面白くないタイプの男だった。
悠樹はどこか泣きそうな顔をして謙也に思いの丈を伝えている。一年生の頃から好きだった、三年に上がって同じクラスになれて本当に嬉しかった、元気がなかった時に声をかけてくれたのが嬉しかった、お昼に誘ってくれて嬉しかった、etc……。悠樹の話は止まらなかったが、そのほとんどが謙也の耳には入っていなかった。せっかちな謙也はじっと待って人の話を聞いている時間に限界を感じ、そのうち髪をいじって暇を持て余しだす。
「だから、俺、本当に謙也のことが好きで」
謙也は話のほとんどを聞いていなかったが、目の前の男が自分を好いていることだけはよくわかった。目が潤んでいるのは緊張のせいか。イケメンのこんな情けない姿を見たら、クラスの女子共はがっかりするかもしれないと思った。
「俺のこと好きなんはわかるんやけどさぁ、ほんなら悠樹お前脱げんの?ここで」
さっさと幻滅してくれればいいと思って、わざと困るようなことを言った。悠樹の中で自分がどんな人間として描かれているのか知らないが、俺はこういう人間だ、と謙也は思う。それで嫌だったら仕方ない。告白は無しになって、お互い早いところ帰れて、なんだかんだハッピーだ。
「できる、よ」
だから謙也は悠樹の発した言葉を聞いたとき耳を疑った。空耳かと思って聞き返したら、悠樹は赤かった顔を更に赤くして再び「できるよ、脱げる」と言った。
「……お前さ、わかっとんの?脱ぐって、シャツだけちゃうぞ。下に履いてるもんも全部脱ぐんやぞ」
「うん。わかってる」
「はあ?ここ学校やのに?」
驚きのあまり謙也が少し怒気を含んだ声を出すと、悠樹は眉を寄せ泣きそうに顔を歪ませた。
「謙也が好きだから。謙也がやれって言うなら……やる」
ついに謙也は呆れて物が言えなくなる。こいつ、こんな奴だったのか、と予想外に驚くばかりで次に言うべき言葉がすぐに出てこない。謙也の知っている悠樹は人望が厚くて、勉強もスポーツもよくできて、いつも誰かに頼りにされて優しくしてるような、文句の付け所のないような男だった。
それが、こんな風に顔を真っ赤にして、泣きそうになりながら従順に言うことを聞こうとする奴だったなんて。
悠樹はもう制服の上着のボタンに手をかけている。一つずつ丁寧にボタンが外され、すぐにワイシャツだけになった。ワイシャツの第二ボタンと第三ボタンが外れ、少しずつ悠樹の胸板が顕になってくる。それを見て謙也はボソっと呟いた。
「誰か来たらどうすんねん」
「そ、れは……」
「俺、知らん振りするからな。今鉢合わせましたーってリアクションして、お前が一人で変態なことやってたことにすんで」
「……わか、った」
わかったぁ!?謙也は驚きすぎて、声も出なかった。なに了承してんねん、意味わからんなコイツ、ああ俺のことが好きやから言うこと聞いてるんやっけ。
やがて悠樹の着ていたワイシャツは教室の床に落とされた。カチャカチャとベルトの金具がぶつかる音がして、悠樹の手の動きがスラックスを脱ぐために動いていることがわかる。
それを見て、謙也の口角が歪に上がった。
(……あーなんか、ゾクゾクするわ、これ)
コイツ、ほんまに俺の言うこと全部聞く気や。謙也の中の加虐心がふつふつと込み上げてくるのが分かる。この男は何を言ったって拒否しない、それなら、好きなように言ってやれ。謙也は一歩前に出る。
「はよ脱げや」
「……っ、う、ん」
「はは、うん、やて。おもしろ。ほんまに言いなりやん」
悠樹は手の動きを早めて、すぐにスラックスを脱いだ。上履きがひっかかって脱ぎにくかったので上履きももう履いていない。教室の床には、さっきまで悠樹が着ていた衣服のほとんどが散らばっていた。
謙也の目の前に立つ悠樹は、靴下と下着だけの格好だった。普段クラスメイト達が過ごしている教室で、信じられないような格好をしている悠樹の存在がまるでAVの設定か何かのようで謙也は興奮した。
「下、はよ脱げ」
「っ……」
「あ、靴下はそのまんまでええわ。その方がクるから」
謙也の言葉に悠樹は耳を赤くした。クる、と言われて嬉しかった。謙也の視線に刺されながら悠樹は下着に手をかける。
「うわ、勃っとるやん」
「ご、め……っ」
「誰か来るかもしれへんのに、俺に見られて喜んどるんや。変態やな」
好きな人に脱ぐところを見られて、悠樹の身体が反応していない訳がなかった。下着の中で僅かに勃っていた性器は、外気に晒され謙也の視線を浴びた時に更に大きな反応を見せた。
「悠樹ん席、今どこやっけ」
「……窓際の、一番、後ろ」
「あーあの席今お前やったん?羨まし、副業しまくりやん」
謙也は悠樹の腕を掴み、窓際にある悠樹の席へ向かった。
「机の上座って」
「っ、わ、わかった……」
「ほな、オナって」
「え……っ?」
「二度も言わすなや。オナれ、俺のほう向いて」
万一、精液がかかってはたまらないと思って、謙也は悠樹の席から前に二つ離れた席の机の上に座った。
謙也の視線が早くしろと急かす。好きな人のせっかちな性格を知っていた悠樹は、恐る恐る性器に手を伸ばして自慰を始めた。羞恥心で、顔だけでなく身体中が赤く火照っているような気がする。
「ぁ、あ……っ、ん」
しゅ、しゅ、と乾いた音を立てて性器に刺激を与え、抗えず声が洩れる。謙也が見ている、それだけで全身が性感帯になったようだった。
性器を擦る手は緩やかだが、着実に絶頂へと近付いているのが分かる。いつもより随分早かったが、それも全て謙也の存在があるからだった。
「そんなんでイケんの?」
「、んん、はっ、ぁ、も、もう」
「は?はっや、嘘やろ」
「ぁ、ぁ、ッあ、っ」
悠樹の性器から白濁の液が吐き出される。教室で謙也に見られながら自慰をしている、その全てが悠樹の神経を昂ぶらせて、欲を吐いて果てるまであっという間だった。
はぁはぁと息を荒げて視線を床に落としている悠樹を、謙也は黙って見つめている。歪に口角を上げて、悠樹の痴態を心の中で嘲った。