謙也は教室に残っていた。部活が休みの日はいつも友人らと寄り道しながら帰るのに、今日は急遽その誘いを断った。
教卓に腰掛けて、待っているのだ。
悠樹のことを。
謙也は手の中のスマホをじっと見つめ、大事そうに軽く力を込めた。このスマホは謙也のではなく、悠樹のものだ。帰り際、女子達が少しばかり興奮した様子でこのスマホを手にしているのを見かけ、「これ悠樹くんのや、どうしよう」と誰かが口にしたのを耳ざとく聞いた謙也は、悩む暇もなく俺が渡すと彼女達に申し出ていた。
(今日は……今日こそは)
伝えたい、彼に。
本当は、もう自分は悠樹に近付くべきではないのかもしれないと思った。