いち

 


ドアの壊された民家が怪しい、とジジイと共に踏み入ってみれば。ベッドの前で仁王立ちしているDIOと、その寝台で体を起こした俺と同じぐらいの歳であろう少女がいた。
こちらを振り返るDIOに構えるが、なんだか様子がおかしい。

「っな、んなんですかこれ!?」

身を震わせ涙を零すDIOにぎょっとした。今までに味わったことのないような恐怖を感じる。何が起きているんだ。
そうだ、と少女に視線を走らせる。どこにでもいそうな普通のアジア人。
彼女は心底厭なものを見るような目で動転しているDIOを眺めていた。冷たすぎるその視線に違和を感じる。

「やめろ、私の姿でそのように振る舞うな。虫唾が走る」

口を開けばあの吸血鬼のように辛辣な言葉。
なんだ…? 何かがおかしい。

「い、一体何をしたんですか!?」

そして同様しっぱなしのDIOはまるで――普通の少女のよう。
これは、まさか。いいや、そんなわけがない。でも。
嘘だろ、そう呟けば隣のジジイも力なくオーノーと呻く。

「テメーらまさか、入れ替わってんのか……」

絶望感溢れる表情のDIOと、口角を上げた少女に、疑問が確信へ変わった。




 

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