なまぬるい嘘の行方

 


 ※裏、女審神者×長谷部





剥き出しになった太腿を撫でれば長谷部の身体がびくりと跳ねた。
彼が私の執務室を訪れたのは丁度半刻前。曰く「今日の出陣で怪我をしたと思うが気のせいかもしれない、手入れ部屋は他の男士で一杯であるしもし思い違いであれば資材が無駄になる。一度診ては貰えないだろうか」と。
それだけなら良いだろう。問題はその箇所だった。彼が負傷したのは、臀部…正確には脚の付け根だという。
それはまあ、他の男士にも見せ辛いだろう。というか女の私が見てもいいのだろうか。そう問えばいたく生真面目な様子で「主になら構いません」等とのたまった。いや、私が構うんだけれど。

「ここが痛むの?」
「わ、わかりません」
「ううん…そう言われるとねえ」
「ですからっ、主に診てもらおうと」

ここは私の寝室兼私室。長谷部には、布団の上に座って膝を曲げ、両脚を開いた――所謂M字開脚の様なポーズを取ってもらっている。
部屋に入った途端に内番服を脱ぎ始めた彼。細身だとは思っていたが、流石は刀剣男士。筋肉はしっかりと付いていた。しかし全裸とは、些か目のやり場に困る光景だ。
対するこちらは夜着のシャツパジャマ姿だ。流石に無防備すぎたかとも思ったけれど、まあ構わないだろう。
しかし、彼が訪ねてきたのが近侍の鶴丸を下がらせた後で良かった。いや、偶然ではないのか。機を伺っていたのだろう。全く用意周到だわ。
長谷部の申し出が嘘であることは勿論分かっていた。分かりきっていた。
だけれど、それに乗ったのは。

「この辺?」
「っ…」

つう、と指先で睾丸近くの肌をなぞる。すると彼は面白いぐらい全身を震わせた。
顔を見てみれば朱に染まっており、思わず笑いそうになる。
ああ、そんな可愛い顔をされては。もっと遊びたくなってしまう。

「どうかした? 言ってもらわないと分からないわよ」
「そ、そこは…っあ」

触れるか触れないか。ギリギリのラインを攻めれば切なそうな声が降る。

「しかしお前も嘘が下手ね」
「う――、そとは」

言葉に詰まり、視線を落とす長谷部。私は殊更笑みを深くする。

「惚けるの? 同衾の誘いならもっと上手いやり方があるでしょうに…」
「ち、違いま――っ、あぁ!」

先程から勃起し続けている陰茎。形も大きさも申し分ないが、持ち主が女を抱いたことがないからか。随分と可愛らしい色をしている。
その赤く熟れた亀頭を指で弾けば、それは蜜を散らして揺れた。痛みに悶える長谷部をよそに小首を傾げてみせる。

「まあ、違うと言うならそれでいいわ。でもこれじゃあ"診察"ができないわね…腰を上げて?」
「は、はい…っ申し訳ありません、とんだお目汚しを…」

脚を開いたままおずおずと腰を持ち上げる長谷部。その下に分厚い座布団を二枚敷くことで、程よい高さを保っていられるようになった。
しかしこれでは良く見えないので、私が尻たぶを掴み左右に割り広げて。なだらかな蟻の戸渡から窄まった菊座が丸見えになったところで顔を近づける。
彼が動揺するのが分かったが、それは黙殺した。

「ああ、やっとお尻の穴まで見えたわ。どうしたの? ひくついているけれど、もしかしてここが痛いの?」
「い、いえ…そこではな、っ!?」

れろ、と。長谷部のアヌスに舌を這わせる。
咄嗟に彼は脚を閉じようとするが、それは膝裏を持ち太腿を彼の腹へと倒して恥骨を持ち上げる事で阻止する。この体位はちんぐり返し、と言うのだったか。改めて見ると屈辱的で、煽情的なポーズだ。笑えば長谷部の表情が羞恥に歪む。

「あ、あるじ…っ! お、や…めくださ」
「やっぱり痛いのね。それなら――舐めて治してあげないと」

必死に首を振る彼を無視し、皺のひとつひとつを伸ばすように丹念に舐め上げていく。
見る間に目を潤ませ、悶える長谷部に加虐心を煽られた私は。

「そんなとこ、っきた、な…ぁ」
「そうね。風呂もまだなの? それともきちんと洗えていないのかしら。いやらしい臭いがするわ」

わざと鼻を鳴らして臭いを嗅ぐ素振りを見せる。すれば彼は、身体をよじって逃げようとする。
勿論嘘だ。部屋へ来る前に念入りに洗って来たのだろうそこからは石鹸の匂いしかしなかった。
それに、指摘され嫌がっている様に見えるが、違う。その証拠に。

「ふふ、また大きくなったわ。主にお尻の穴を舐めさせて興奮するなんて…」
「ちが…っ、やめ、ァあ」
「違わないでしょう? 悪い子ね」

碌に触れられていないのに、形を保ちどくりどくりと律動する陰茎。それは遠慮と慙愧、また情欲の狭間で揺れ動く長谷部そのもののようだ。
そんな彼を。年端もいかない子供を叱るように、やさしく窘めた。

「長谷部のような悪い子には、お仕置きをしなくちゃいけないわね」

ぬぷり。収縮を繰り返していたアヌスに舌を差し込む。
同時に彼が大きく目を見開いた。

「なに、を…!? やめ、やめてくださ、あ!」
「んん?」
「した、舌ぁ…いれちゃ、だめ」

自慢じゃないが舌は長い方だ。それを挿入できる限界まで挿れ、抜き差ししたり壁に這わせたりと内壁を蹂躙する。

「ああ、流石にここは…苦いわね」
「っ…ひぐ、ぅ」

一旦引き抜き、味の感想を述べれば。余程衝撃的だったのか遂に涙まで流す始末。
流石にやりすぎたか、と少し反省する。端正なその顔が涙を流して羞恥に耐えるさまはどうにも加虐心を刺激するけれど、これ以上は勘弁してやろう。座布団を取り払って足を元に戻し、長谷部を抱き起こした。

「泣かないで長谷部、そんなに嫌がるとは思わなかったの」
「うぅー…っ、あるじの、ばか」
「だから――っん」

涙を拭って顔を覗き込んでやれば、言葉を遮って口を吸われた。そのまま彼の舌が遠慮がちに侵入する。

「ん、あるじのおくち…はせべが、きれいにします…」

吸ったり舐めたり、辿々しいキスの合間に紡がれた言葉に目を細める。
煽られている。無自覚だろうが、そう見なしていいでしょう、これは。

「愛いわ」
「ンっ!? んん、ぁ」

手で頭を固定し、咥内を好き勝手に弄ぶ。舌を吸って歯列をなぞれば、一生懸命それに応えるようにする彼が可愛くて仕方ない。

「さて、少し待ってね」

名残惜しそうな長谷部の頭を撫で、立ち上がった。
ついでに彼の腹に垂れたカウパーを指で掬い上げ、そのまま吸って見せる。長谷部の喉が鳴り、物欲しそうな双眸がより熱を籠らせた。
それでもきちんと"待て"が出来ているのは偉い。私に力で抗わず、身を任せているのもまた然り。これは褒美をあげなければ。
ストリップでもするように、一つ一つボタンを外し緩やかに寝衣を脱ぎ去る。
予想通り、長谷部はこちらを注視していた。

「ある、じ…それは」
「女体を見るのは初めてだったかしら?」
「そうでは、なく…」

彼は恐る恐る手を伸ばし私の肌と下着をそっと撫でる。
上下揃いのそれは秘部を隠すどころか強調していて。もはや本来の役目を果たしていなかった。
ブラジャーなのだろう紐は下乳や谷間への食い込みで乳房を目立たせ、Tバックは形こそ保っているもののクロッチ部分の布が取り払われている。僅かばかりのレースがそれらを彩っていた。
何よりもその色は。長谷部の瞳と同じ、藤色をしていて。

「嬉しい、ですっ…!」
「こら、先走らない」

秘部に顔を埋めようとする彼を制し、上に跨る。胸を身体に押し当て、局部がぎりぎり触れ合わない程度に腰を落とす。対面座位という体位だが、果たして彼は知っているだろうか。
わかりやすく固まった長谷部の背に、腕を回した。

「ふふ…分かる? お前の痴態を見ていたら、こんなに濡れてしまったの」
「は、い…っ」

クリトリスと亀頭が僅かに触れ、長谷部が吐息を漏らす。
どんどん腰を降ろし、ついに粘膜同士が完全に触れ合って。前後にゆっくりと動かせば、先走りと蜜が混ざるぬちゃぬちゃという音が部屋に響いた。

「あ、ある…っじ、あっ」
「駄目よ」

切っ先を進め、蜜壷に侵入しようとする彼を止める。
どうして、と問う目に薄らと微笑んだ。

「抱いてくれ、とは頼まれていないわ」
「や、そんっ…あ!」

焦らすように秘裂を擦り付ける。喘ぎながら眉を下げてこちらを窺う彼に、普段の厳格な佇まいは欠片も感じられない。乱れた髪を梳いてやれば、熱の篭った目が懇願するようにこちらを見る。

「さて、どうするの? 上手くお強請りが出来れば、望み通りにしてあげるわよ」

耳朶を食んで囁く。その間も腰の律動は止めない。止めてやらない。
彼が唾を飲む音が、やけに大きく聞こえた。

「そん、な…でも、ァ」
「出来なければここで終わりよ。残念だったわね?」

うろうろと視線を迷わせる長谷部。だが羞恥も快楽には勝てなかったようで。私の腰に腕を回し、恐る恐る口を開けた。

「抱いて…っ、はせべのことを、だいてください…!」
「っ、良いわ…っ」
「あ、あ、あぁっ!」

男根を肉壺へ埋める。蜜で溢れるそこは迎合するかのように纏わりつき、私も長谷部も漸く訪れた快楽に熱い息を吐いた。

「っく…童貞卒業ね? おめでとう、長谷部」
「あ、ありがとう…ございま、っうごかないでぇ」

ぎゅっと眉根を寄せて耐える長谷部。自慰すらした事があるか怪しい男に、生の膣内の刺激はさぞ辛いだろう。
暫く中に慣らしてやるのがいいか、と動きを止めた。

「いま、うごいたら…っ気をやってしま、います」

息も絶え絶えにそう告げる彼の目元には、今度は生理的な涙が浮かんでいて。瞳の藤色が滲み、陶器のような白い肌は上気して染まっている。
おまけに、幸せそうな笑顔を私に向けるものだからたちが悪い。
ああ、そのような可愛い姿を見せられて――誰が我慢なんてできるだろうか?

「ふ、本当に…かわいらしいわね、っ」
「やっ…! だめ、だめです…っああ!」

律動を再開させた。肉襞が陰茎を擦る感覚に背を反らせる彼。
手加減せず、今度は奥まで深く抉るように腰を動かす。子宮口に亀頭を何度も押し当てれば、堪らないと言わんばかりにしがみつかれた。
下半身が溶けそうなひど気持ちいい。それは長谷部も同じで、彼の限界はもうすぐそこだろう。

「だめぇ…あるじ、っほんとに、ぅ」
「いいわよ…っ、イきなさい」

囁き、意識して膣を締める。同時に大きく腰を振れば、長谷部の全身に力が籠るのがわかった。

「あ、っ出ます、でる…っでちゃう、ァあ!」
「っあ、ぁ…」

私にしがみついた彼の熱。どくりどくりと脈打つ長谷部の肉茎。精液で満たされる蜜壺の感覚。どれもが愛おしくて。脱力する長谷部を抱き、うっそりと笑った。


 ▽


あれから。疲労困憊で動けぬ長谷部を尻目に、後処理を済ませ寝床を整え。主に始末させるなんて云々俺がやりますので休んでいてください云々とうるさい彼は布団にくるんで黙らせておいた。
全てを終わらせ、休んでいる彼の隣に滑り込む。非難するような目を向けられるが全て無視だ。

「ううん…失敗したわね」

つい口から出た言葉。およそピロートークには似つかわしくないような。
長谷部の身体が微かに震える。

「っ、やはり主は…」
「もっと焦らして虐めるつもりだったんだけれど。逸りすぎてしまったわ」

指先で彼の頬の輪郭をなぞる。呆けたような顔が無防備で、思わず笑ってしまう。

「なあに、どうしたの?」
「俺との睦事を…後悔しておられる、のかと」
「まさか」

一刀両断する。というかそんな下らないことを不安に思っていたのか。
こちらはずっと我慢していたんだ。仮にも上司が部下に夜伽を強制は出来ない。そんな事をすればセクハラになってしまう。それを知ってか知らずかあんな誘い方をして――等々。説明してやっても、彼の顔は晴れない。

「主は、もし他の奴が同じように迫ってきたら、」
「断ったわ」

遮って述べる。そのまま二の句を告げようとした長谷部の唇を塞いだ。

「何をそんなに不安になっているのかは知らないけれど、私はお前だから乗ってあげたのよ」
「…っ!」

抱き寄せてその胸元に頭を付ける。すればどくどくと速い鼓動が聞こえた。
下着を着けただけの身体を擦り寄せれば、肌と肌が再び触れ合う。

「それとも嫌だった?」
「いいえ…っ! とても、ぁ」

戯れに胸の飾りを咥えて舌で転がす。いきなりの事に嬌声を漏らした長谷部。

「ん? なあに?」
「っ、…」

口を噤んでしまった。つまらないわね、面白くない。
促すように、もう一方の乳首を指で捏ねながら、口での愛撫を続ける。

「言えない?」
「っあ…! き、もちよかった…です…」

恥ずかしそうに言いながら背中に腕を回されるものだから。
堪らずにもう一度抱き返す。

「全くお前は……それに、ね」
「な、んでしょ…ぅ、は」
「あのように熱い視線を向けられて、気付かないわけがないでしょう」

日常生活でもなんでも、休日さえ私に付き従おうとし、近侍が自分でなければ酷く不機嫌になる。今日は鶴丸が軽く八つ当たりを受けていた。気遣えば反対に「きみも大変だなあ」等と苦笑されたけれど。
そうして私に近づいた彼はしかし、特別何かをしてくる様子はなかった。ただ、目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。長谷部の視線は恋焦がれる少女の様に純粋だったが、同時に執着の色も濃く。だからこそ手を出してしまった。そんなところも可愛くて、堪らなかったから。

「ふふ、また大きくなった」
「あるじ、ぃ…」

先程から太腿に押し付けられている熱量。焦れるように動いている腰。
貪欲ねえと笑えば、今度は長谷部から唇を奪われた。




 

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