あの朝日をおぼえていますか

 

身体が浮いている、と感じた時にはもう遅かった。
スローモーション。ゆっくりと宙を舞う。
承太郎と目がかち合った。見開かれたエメラルドの瞳。相変わらずきれいだな、と微笑んだ。
この異国の地で彼と見た朝日も、綺麗だったな。場違いにそんなことを考える。
きらきらと海面がたゆたい、希望だと言わんばかりに昇る太陽は眩しく。息を呑んだ私を強く抱いた身体の熱は、まだ肌に残っている。
壮絶な数ヶ月だった。息付く間もなく襲い来る刺客に緊張の日々。だけど、この旅は楽しかった。
花京院、ポルナレフ、ジョースターさん、アヴドゥルさん、イギー。みんないい仲間だ。
そして、最愛のひと。どうか幸せになって、でも私のことは忘れないで。なんて、わがままかな?
ああ、これが走馬燈か。たった十数年の人生。呆気ないものだったな。
赤く染まった拳を揺らしながら口角を上げるDIO。ああそうだ、頭を殴られたんだ。改めて事実を再確認する。
恐らくは致命傷。髪と血がはらはらと踊っているのを視界に捉える。
だけど不思議と痛みはない。つまりそういう事なのだろう、とふわふわした思考。どこまでも他人事だった。
――承太郎、ごめんね。もうだめみたい。
DIOを、世界の敵を、そして私の仇を倒して。
最後にもういちど、と彼の姿を眼に収めようとするもそれは叶わず。
意識は泥のような闇に沈んでいった。




 

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