お疲れさま〜甘い独占欲〜


「うわーん!シュウくーん!この哀れな社畜を慰めておくれぇぇえ!」


「…ん。」




勢いよく彼の部屋の扉を開くとシュウ君はベッドで眠っていたみたいで、もぞもぞとシーツの間から顔を出してゆっくり両手を広げて私を受け入れる体制を取ってくれた。
なので私は遠慮なく彼の腕の中にダイブするのだ。




「うええんシュウ君シュウ君しゅーくーん!」


「あーはいはい、ちょっと待って…」




彼の胸にぐりぐりと顔を埋めてぎゅうっと抱き締めると小さく息をついた彼が爆音で聴いていたプレイヤーのイヤホンを外してくれる。
これは私のこれから口走るであろう愚痴の数々を聞いてくれる合図。私限定でシュウ君はとても甘い。




「今日はどうした…?」


「う…っ、あの、あのね…」




今日あった嫌な事や傷付いたことをたらたら独り言のように語り始めると優しく背中を撫でてくれて一つ一つに相槌を打ってくれる。
私の前ではこんなに馬鹿みたいに優しいシュウ君だけど、どうやら私以外にはとんでもなく性格が悪いみたい。以前にどうしてかって聞いたら「お前の事愛してるから」なんて恥ずかしい答えが返って来たのを覚えてる。



「…気が済んだ?」



「ぅん…毎度ごめんね、シュウ君」



「別に…溜め込んで俺の知らないところで泣かれるよりマシ…」




一通り愚痴って落ち着いた私をぎゅっと抱きしめてそう言ってくれるシュウ君が私は本当にだいすき。
私が嬉しい事も悲しい事も楽しい事も怒った事も全部全部知っておきたいんだって。
そんなちょっと過保護というよりは独占欲に近い彼の気持ちも嬉しい。
ぼんやりと物思いにふけっていると、シュウ君は少し涙目になっていた私の瞳にチュっとキスをしてくれてぽんぽんと優しく頭を撫でてくれる。



「今日はこのまま寝る?」


「ううん、お風呂入る…」


「じゃぁ離れないと」


「…うん、」



彼の言葉を肯定はするけれど
私は一向に抱き付いた腕を離そうとはしない。
どうしてか、今日は片時もシュウ君と離れたくない気分なのだ。



これも全部私をドロドロに甘やかしてしまったシュウ君が悪いんだきっと。ぎゅうぎゅうと抱き付く腕に力を込めると少し困ったような笑いが頭から降ってきてゆっくりと顔を上げるとそこにいたシュウ君はとっても意地悪な顔をして笑ってた。



「一緒に入る?花子。」


「!うん!」


ああ、本当にシュウ君は何でもお見通しなんだなぁ
なんて、そんな事がとても嬉しくて私は思わず彼の唇にキスをしてしまった。すると少しだけ驚いた顔をしたシュウ君はそのまま私をしっかりと抱き抱えて足早にバスルームへ向かった。



「あ、あれ…?シュウ君?怒っちゃった…?」



「いや?どっちかって言うと…」



にっこり。
とても綺麗な笑顔なのにとんでもなく黒い。
あ、これがみんなの言う性格悪いシュウ君なのか!私はぞわりと背中に悪寒を感じながら彼の言葉を続きを待つ。



「もう我慢できないって感じ?」



「ぇ…ま、まさか…!わ、私明日もお仕事あるから!ダメだよ!?」



「のぼせないように精々頑張れよ?」




嗚呼、これは私明日使い物にならないパターンじゃないか。
今更考えなしに自分のしでかしてしまった過ちに大後悔してしまう。けれど私もなんだかんだ言ってこんな意地悪で楽しそうなシュウ君は嫌いじゃないのでちょっと恥ずかしいけれど精一杯の気持ちを彼に伝える。



「えっと、大好きだから…その、お手柔らかにお願いします。」



「…もうホント、覚悟しとけよ。」



「えぇ!?なんで!?」



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